2016.7.21

第7回 自分を軸に、人生を楽しむ/松葉洋弥さん(ビーチバレーボール選手)

ビーチバレーボール選手/ビズシード株式会社 チーフプロデューサー 松葉 洋弥さん

ビーチバレーボール選手/ビズシード株式会社 チーフプロデューサー 松葉 洋弥さん

ビーチバレーボール選手/ビズシード株式会社 チーフプロデューサー
松葉 洋弥さん

まつば・ひろひこ●1983年千葉県木更津市生まれ。中学、高校、大学と続けてきたバレーボールの道をケガで絶たれるも、縁あって24歳でビーチバレーに出合い復活。プロ選手として、国内トップクラスにまで上り詰める。現在は、ウィークデーは企業戦士、ウィークエンドはビーチバレーボール選手、町おこしプロデューサーと、多彩な顔で活躍中。

ビーチバレーで培われた、松葉式勝ちの法則

――松葉さんがプロのビーチバレーボール選手に上り詰めるまでには、どんな道のりがあったのですか? またプロの厳しさとは?

ビーチバレーボール選手/ビズシード株式会社 チーフプロデューサー 松葉 洋弥さんビーチバレーボールの世界でプロとして食べていける人は一握り。国内で20人もいません。僕も仕事を辞めてビーチバレーに専念したものの、結局お金が続かずまた就職した経験があります。

インドアバレーをケガで引退し、2年のブランクを経て、ビーチバレーに転向して1年で国体選手に選ばれました。再びバレーボールができるうれしさで、勤めていた会社を辞め、貯金と失業保険で生活したんですが、長くは続きませんでしたね。

その後、大会で実績を積み、オリンピック選手の最終選考に残ったり、企業からスポンサードの声がかかったりするようになりました。そこで今度は、自らスポンサーを取りに行くようにしたんです。「僕の夢を買ってください!」って。それが26歳のとき。それから3年間は、仕事を辞め、完全にプロとして活動しました。そのころは、人に仕事を聞かれたときに「賞金稼ぎ」と答えるのが僕のステイタス。地元、木更津では、海賊王と呼ばれていました(笑)。

――わずか数年でビーチバレー界の上位に上りつめるには、練習にも人一倍の努力を注いでいたのでしょうね。

ビーチバレーボール選手/ビズシード株式会社 チーフプロデューサー 松葉 洋弥さん僕は練習しないことで有名なんですよ。とくに、反復練習は無意味だと思っています。

もちろん僕も、かつては反復練習をやっていました。飛んでくるボールをひたすらレシーブしたりみたいな。ただ数をこなす練習には勝つための理論は何もなく、ただ疲れるだけなんですよね。疲れ=練習の達成感。これに陥るとただの自己満足で、結果は何も得られないことが多いです。

ビーチバレーって、実は、すごく戦略的なスポーツなんです。ボールを取りに行くにも、砂のうえで闇雲に走り回っては、無駄に体力を消耗してしまう。だから、コートの大きさやネットの高さに対し、自分の手足がどこまで届くか、さらに一歩踏み出して倒れたら、届く距離がどこまで伸びるのかなどを把握し、コートのなかで常に変わらないものを最大限に利用する。そうやって頭を使い、最小限の動きでプレーをすることが、強くなるため、勝ち続けるための極意なんです。反復練習を重ねるよりも、日々自分のコンディションをチェックし、それに合わせた戦い方を考えるほうがよっぽど大事。それは、反復練習をしていた当時と今を比べ、練習量は減っているのに戦績があまり変わっていないことが証明しています。

負けるシミュレーションを、勝てるまでやりつくす

――練習以外に、試合に勝ち続けるために必要なことはありますか?
ビーチバレーボール選手/ビズシード株式会社 チーフプロデューサー 松葉 洋弥さん僕は常に、「失敗するイメージ」を持つようにしています。試合前は必ず21対0で負ける想定からイメトレする。そうやって逆算で考えていくと、今自分には何が足りなくて、何を恐れているのか、何をやったら勝てるのかが見えてくるんです。

スポーツは勝つイメージが大事だと思われがちですが、僕は絶対にそこからは入りません。「勝てる!これだけ練習したんだ!」と思って負けると、やれ練習時間を増やすためにプライベートの時間を削るだ、次は酒をやめるだ、間食をやめるだと、本質でないところに焦点が行きがち。ストイックになりすぎて燃え尽きてしまうアスリートは、ここに陥りがちですよね。本質は違う。大切なのは根拠ある強さです。自分で自分の鼻をとことんへし折る。負けのシミュレーションは、自分を俯瞰で理解し、制御するための策。僕は決してネガティブなのではなく、ネガポジティブですね(笑)。

――松葉さんは、現在はお仕事もされていますが、こういったビーチバレーでの経験は、ビジネスにも活きていますか。

はい。ビジネスにおいても常に負けのイメージを持っています。だから、事前に考えられるあらゆる負けのケースを想定して、戦略を練り提案を用意する。ときには、自社のサービスではなく、他社のサービスを提案のひとつとして持って行くこともあるほどです。

スポーツでもビジネスでも、勝つためにまず必要なのは、自分を知ることだと思います。それには、ときどき自分に矢印を向け、ダメ出しをしてみる。自分でできなかったら、誰かほかの人にしてもらったっていい。僕は、自分のプレゼンの仕方について、部下や後輩からも意見をもらっています。そうやって、自分のしたこと言ったことを客観的に見てみると、自分の強みや弱みが見えてきて、必要なもの、不要なものがわかってくる。物事に対する目の向け方、自分との向き合い方が、勝ちにつながる重要なポイントだと思います。

――ところで、松葉さんはご自身の健康とはどう向き合われていますか。

プラマイゼロ理論で考えています。今日は身体にあまりよくないことをしたなと思ったら、次の日はそれをフォローする。たとえば、思いっきり肉を食べたら、野菜をたっぷり食べる。糖質を抑えるべく、お酒はハイボールのみにするなど。健康も大事ですが、人生も楽しみたいですからね。

身体のメンテナンスはしていますが、日常的にはストレッチ程度です。仕事で肩がこってしまったときなどは、ゴメンねと謝りながらセルフマッサージしたり。あまりやりすぎるとかえって気になっちゃいますからね。

とはいえ、身体のなかのことは自分ではわかりませんから、健康診断は定期的に受けていますよ。

身近なところから広げる、影響の範囲

――松葉さんは今、ビジネスの世界でも活躍の場を広げているそうですね。

ビーチバレーボール選手/ビズシード株式会社 チーフプロデューサー 松葉 洋弥さん今僕は、ベンチャー企業の創業支援を行う会社に勤めています。起業家の方々が抱える課題や悩みを解決するために、情報提供や他企業とのマッチングを行うのが僕の仕事。自社で解決できないことも、得意な会社をつなげることで、シナジーが生まれるのです。そこには、出会いから始まる人とのつながり、またそのつながりから幾重にも広がる人々の大きな輪があります。そういったものを目の当たりにしているうちに、自分自身でもやれることが広がっていて、喜びを感じています。

そのひとつが、地元、木更津の町おこしへの参加です。最近よく耳にする地方創生。僕も地元で何かできないかと考えていたところ、たまたま木更津市が道の駅の事業者募集を行っているのを知り、建築家の父親と一緒に企画書や設計図を作って、市にプレゼンしました。結局ダメだったんですが、それを仲間や周りの人に見せたことで、最近では、農業や町づくりに関する相談などで、いろいろなところから声をかけていただけるように。自分が思っていた以上に話が大きくなってきているというのが正直なところではありますが、期待してもらえているようでうれしいです。

――いろいろな顔を持ち、さまざまな可能性を秘めた松葉さん。今後はどこに向かって行くのでしょうか。

僕の軸は常に日常なんです。ビーチバレー、ビジネス、町おこし、どれがメインとかっていうのはありません。

自分の周りにいる人々の幸せに関わっていきたい。あの人とあの人が関われば何ができるとか、すぐに考えてしまうんですよね。そうやって人と人をマッチングさせて、その人たちが喜んでいる姿を見るのが好きなんです。

それを続けていると、いつの間にかすごいところまで手が届いていたりします。自分が影響できる範囲がどんどん広がっていくんです。最後は、天気まで変えられるくらいになりたいですね(笑)。


Colorda編集部