2016.9.26

Vol.3 更年期障害に治療法はあるのか?【更年期障害ノート】

更年期障害と判断されるには…

Tablets, capsules更年期障害とは、年齢45~55歳ごろの、閉経を迎えちょうど生殖機能が低下しはじめるころに起こる、日常生活に支障が出るほどの不調のこと。ほてりなど自律神経系の症状と、イライラ、うつ病などの精神的な症状とが複合して発症する場合が多い。更年期障害は、女性の病気だと思われがちだが、男女ともに起こりうる疾患だ。

今回は更年期障害の検査方法と治療方法に迫る。

女性の更年期障害の検査方法

女性の場合は、血液ホルモン検査を実施する。FSH検査、E2検査、LH検査の3つがあり、女性ホルモンについて調べることができる。FSHは卵胞刺激ホルモン濃度、E2は女性ホルモンのエストロゲンの主要成分であるエストラジオール濃度、LHは黄体形成ホルモン濃度を測定する。

とくにFSHが基準値より高い場合は、年齢とともに機能低下している卵巣を刺激する性腺刺激ホルモン量が多いことを示し、更年期であると診断される。ただ、卵巣機能が完全に低下していない過渡期には、正常値を示す場合もあり、一度だけの検査では判断できないこともある。

ほかに、のぼせ、ほてり、憂うつなど、17種類にわたる症状に対し、クッパーマン更年期指数と呼ばれる質問用紙に0~3の度数で答える方法がある。合計の指数が16~20であれば軽度、21~34であれば中程度、35以上は重症となる。

男性の更年期障害の検査方法

血液検査で男性ホルモンである「テストステロン」の濃度が基準値より低いかを調べる。テストステロン濃度の低さは、内臓脂肪が多い、うつがあるといった症状との関連性が指摘されている。更年期障害の専門外来では、検尿、腹部CTあるいは超音波検査、内分泌検査などがあり、総合的に更年期障害の判断をする。

また、女性のクッパーマン更年期指数同様、代表的なハイネマンの質問票があり、無気力や精力の減退など17の症状について1〜5点で採点し、合計点が27~36点であれば軽度、37~49点であれば中程度、50点以上だと重症と判定される。

中高年の6人に1人がその可能性があるといわれている男性の更年期障害は、身体、心、性の症状が出るのだが、女性よりも気づきにくい。「元気がなくなった」「笑わなくなった」「よく眠れない」「イライラしている」「物事をおっくうがるようになった」などの変化から、家族や周囲が先に気づくこともある。

治療方法は何があるのか?

女性、男性ともにホルモン補充療法が主だ。女性の場合、注射、パッチ剤、飲み薬で減少している卵胞ホルモンのエストロゲンを増やすという方法がとられる。1ヶ月ほどで症状の改善がみられるが、医師の判断によって数ヶ月から数年行われる。ほかには、漢方、自律神経調整薬、精神症状には抗うつ剤、抗不安薬などが処方される。

男性の治療は、ホルモンの補充を注射やゲル、塗り薬で行う。1回の注射で数値を上げることができるが、持続期間は1週間程度。患者の改善状況に合わせて、数ヶ月に1度の頻度での治療が必要となる。長期間にわたるホルモン治療をすると、自分の身体でテストステロンを生成する力が落ちてしまうので、適正な治療を受けることが必要だ。

更年期障害は、ホルモン補充によってつらかった症状が改善され、楽になったという声も多い。セルフケアではどうにもならないときには、無理をせず、診察やホルモン補充治療を受けるのも選択肢のひとつだ。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部