2017.1.16

大人こそ要注意!? ある日突然起こる食物アレルギー

大人が発症すると完治しない可能性が高い、食物アレルギー

S_shutterstock_553804063食物アレルギーは、食べ物に含まれるタンパク質を、身体が何らかの理由で異物だと認識し、かゆみ、蕁麻疹、咳、嘔吐、下痢、呼吸困難などを引き起こす疾患。発症は6歳以下が80%を占め、最も患者数が多いのは0〜1歳。多くは年齢が上がるとともに治っていくが、大人でも突然発症するケースがある。乳児は10人に1人、3歳児は20人に1人、成人では100人に1〜2人の割合といわれている(※1)。子どもの場合、3大アレルゲンと呼ばれる鶏卵、乳、小麦で起こることが多いが、大人は野菜や果物、小麦や蕎麦、甲殻類などで起こることもある。発症する年齢が遅いほど治りにくく、大人の食品アレルギーは一度かかると完治しない可能性が高い。

アレルギーのタイプは4つ

食物アレルギーはおもに、乳児や子どもが発症するケースが多く、そのタイプはさまざまで、それぞれ特徴が異なる。例えば、

新生児・乳児消化管アレルギー

新生児期もしくは乳児期にミルクまたは母乳を開始した後に発症する。症状は嘔吐、下痢、血便などの消化器症状を呈することが多いが、哺乳力の減少や不活発、体重の増加不良などが見られることもある。

乳児アトピー性皮膚炎

湿疹が顔や頭だけでなく、首や体にも見られるようになり、皮膚がカサカサしてくる。乳児のアトピー性皮膚炎は食物アレルギーが関係することが多い。治療しても完治しない湿疹が出るが、成長すると治まる傾向にある。

即時型食物アレルギー

原因となる食べ物を食べた直後(主に2時間以内)に皮膚のかゆみ、蕁麻疹、目のかゆみ、咳、下痢、腹痛、嘔吐などが起こる。最悪の場合、アナフィラキシーにより呼吸困難や血圧低下が生じ、死に至るケースもある。食べてから数時間、数日後に症状が出る遅延型アレルギーもあるが、重篤な症状が出にくく、単なる体調不良して誤診されることもしばしば。また症状が遅れて発症するため、本人も気がつきにくい。

特殊型食物アレルギー

ひとつは「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」で、特定の食べ物を食べた後、運動するとアレルギーが出る。原因となる食品を摂取した後、4時間程度は運動を避けることが必要となる。もうひとつは「口腔アレルギー症候群」で、花粉症の大人に多い。果物や野菜を食べた後に口のなかがかゆくなったり、腫れたりする。原因である野菜、果物と関係する花粉に反応して起こる。原因となる食品を摂取しないことが治療となるが、多くの場合は、原因食品を加熱処理すれば経口摂取が可能となる。

治療法と予防法は?

血液検査、皮膚テスト、問診などを行う。最近では、原因の食べ物を1~2週間除去し、症状が治まるのを確認したのち、またその原因である食べ物を食べることを一定期間繰り返す食物除去試験および食物負荷試験がなされることもある。この試験結果をもとに、アレルギーを起こす食べ物の摂取量を徐々に増やし、耐性を作る経口免疫療法へと進む。患者のストレスや生死にかかわる治療となるため、専門医師の適正な判断が必要だ。

日常では、原因になる食べ物の排除が原則であり、突然の症状に対応する目的で、自己注射薬が処方される場合もある。食品表示には、「マヨネーズ」とだけ書かれていても、その材料である卵や乳製品などにも気を付けなくてはならない。食品表示法で表示が義務づけられている「特定原材料」は、卵、乳、小麦、エビ、カニ、そば、落花生の7品目。表示が奨励されている「特定原材料に準じるもの」はあわび、いか、いくら、オレンジ、カシューナッツ、キウイフルーツ、牛肉、くるみ、ごま、さけ、さば、大豆、鶏肉、バナナ、豚肉、まつたけka、もも、やまいも、りんご、ゼラチン の20品目だ。

食後のかゆみや下痢など、ちょっとした症状を見過ごさず、早めに専門医を訪ねること。また、花粉症の人は食品アレルギーも起こしやすい傾向が分かってきているので、花粉だけでなく、食べ物への注意も必要だ。

※1 『食物アレルギーを知っておいしく食べよう』日本アレルギー協会

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部