2017.2.20

栄養強化剤は身体に害? 食品添加物の真実

栄養強化剤の目的と役割

「栄養強化剤」とは、その名のとおり、栄養成分を強化するために使用される食品添加物で、単に「強化剤」と呼ばれることもある。ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類は私たちの身体が健康を維持するために欠かせない栄養素であり、日々の食事から摂るのが理想だが、常に必要量を摂取するのは難しく不足してしまうことがある。そこで不足分を補うべく、栄養強化剤を使用した加工食品が作られている。これらは、製造および貯蔵の段階で栄養分が補てんされ、本来その食品にはない栄養素が加えられている。

食品によく使われている栄養強化剤

食品に使われている栄養強化剤は、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸類の3つ。

ビタミン類

L-アスコルビン酸、エルゴカルシフェロール、リボフラビン、β-カロテンなど。水溶性と油脂性がある。

ミネラル類

亜鉛塩類、塩化カルシウム、水酸化マグネシウム、硫酸カルシウム、塩化第二鉄など。ミネラルは、人の身体のなかでは作ることができないため食品から摂る必要があるが、亜鉛塩類や塩化カルシウムなどは塩分のため、摂り過ぎると高血圧などの生活習慣病を引き起こす場合がある。

アミノ酸

L-アスパラギン酸ナトリウム、DL-アラニン、グリシン、L-イソロイシなど。調味料として使われているL-グルタミン酸ナトリウムなどは塩分であるため、過剰摂取による塩分の摂りすぎが懸念されている。

厚生労働省では、『食品衛生法施行規則別表第1』に記載されているものと、『既存添加物名簿収載品目リスト』および『一般飲食物添加物リスト』の用途欄に「強化剤」と記載されている物質を、栄養強化の目的の添加物と定めている。

食品に入っている栄養強化剤の見分け方

栄養強化剤は、栄養強化を目的として使用した場合、食品パッケージに記載をしなくてもよいというルールがある。そのため私たち消費者には、栄養強化剤が入っているのかわからないことが多い。では、どのように識別すればよいのだろうか。

「牛乳3本分のカルシウム配合」「レモン5個分のビタミンC」などという表示がある食品は、栄養強化剤を使用していると考えてよい。ほかには、栄養を摂ることを目的としている食品、たとえば青汁などは、栄養強化剤が入っているものが多いことを認識しておこう。

健康志向が高まる現代では、栄養素の高さで食品イメージをよくしたり、ほかの商品との差別化をはかったりするために、積極的に栄養強化剤を使用する傾向にある。多量に摂取すると塩分の取りすぎなどを招く可能性もあるが、一般的な量を摂取する分には、栄養強化剤が身体の負担になることは少ない。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部