2017.5.1

化粧品添加物「pH調整剤」の危険性・安全性とは?

pHと肌の関係

pHとは、「ピーエイチ」または「ペーハー」と呼ばれる、物質の酸性からアルカリ性までの度合いを示す0〜14の数値で、0に近づくほど酸性が強く、14に近づくほどアルカリ性が強く、中間は7だ。ヒトの肌は、生まれたての赤ちゃんは中性だが、成長するにつれph4.5~6の間の弱酸性を保っている。この数値が、健康な肌の基準だ。これは肌を覆っている皮脂膜の影響で、弱酸性を保つことで外的刺激や菌をバリアしている。つまり、この数値から離れている物質は肌にとって刺激が強いことになる。

化粧品にpH調整剤が使われるわけ

洗顔料や石鹸は、皮脂汚れを落とすためにもともとpH10程度のアルカリ性のものが多い。となると、洗顔後は肌がアルカリ性に傾き、自然な状態の弱酸性に戻るまでに、数時間を要する。敏感肌や乾燥肌などの肌質によっては何倍もかかると言われている。肌は弱アルカリ性に傾いているとき、外的刺激や菌に弱い状態。なるべく、アルカリ性に傾く時間を少なくすることが大切だ。

そこでpH調整剤が使われる。洗顔料や化粧水などのpHを弱酸性に調整するのだ。このように、皮脂膜を正常な状態に近づけるために使われているほか、化粧品の酸度を保つことで、製品そのものの分離や劣化を防ぐ目的もある。

代表的なpH調整剤6つ

pHを、酸性またはアルカリ性に傾けるために、pH調整剤は「アルカリ性」のものと、「酸性」のものとの2種類がある。

アルカリ性のもの

トリエタノールアミン(TEA) pH調整剤のほかに、乳化、分散、湿潤、希釈剤として使われる、弱アルカリ性の成分。亜硝酸と反応して発がん物質を生成することや、湿疹や皮膚炎になる可能性が指摘されている。
水酸化ナトリウム 石鹸の素材などになるもの。酸性が高くなる場合に使用される。
水酸化カリウム 石鹸や乳液、クリームなどの、乳化剤やゲル化剤としても使われる。

酸性のもの

アスコルビン酸 ビタミンCのことで、美白の作用が期待されている。敏感肌にも使える傾向にあるが、人によってはピリピリとした刺激を感じる場合がある。
グリコール酸 ピーリング剤などによく使われる成分で、サトウキビや甜菜など、天然材料から作られている。
クエン酸 食べ物に含まれる酸としてもよく知られ、角質除去などに使われる。濃度が高いと刺激になることがある。

pH調整剤の、安全性と危険性

現在、化粧品などに使用されている成分は、クエン酸やアスコルビン酸など比較的安全性の高いものが多く、また配合量も制限されているので、すぐに人体に影響があるとは考えづらい。ただ酸性のものは、濃度が高いと刺激や肌のほてりが起きることがあるので注意したい。

肌質にあえば、酸性のpH調整剤はピーリング剤などに多く使われていて、タンパク質を溶かして角質を落とし、正常なターンオーバーを助ける作用がある。

乾燥肌と感じている人は、弱酸性の化粧品を選ぼう。皮脂膜が正常に保たれる時間を増やしていくことが大切だ。弱酸性は害になる細菌類が住みにくい環境であり、健康な肌を保つためには必要な条件だ。逆に長時間、肌がアルカリ性になったままだと、アクネ菌や黄色ブドウ球菌が繁殖しやすくなってしまう。化粧品を選ぶときは、pHに注目して、基本は、弱酸性に近い化粧品を選ぶのがよいだろう。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部