2017.8.10
骨粗しょう症を調べるオプション

人間ドックのオプション、骨粗しょう症を調べる検査「骨密度測定」

骨粗しょう症の患者数は、推計1280万人

せっかく人間ドックで身体の状態をチェックするのであれば、気になる疾患や臓器の状態を一度に詳しく調べたいところだ。人間ドックを受診する際は、受診者それぞれが気になる部位や病気リスクをより詳細に調べることができるオプション検査をぜひ活用してほしい。医療施設によって種類に差はあるが、血液検査や、MRI、CT、マンモグラフィーやエコー、内視鏡などの画像診断などがある。今回は、骨粗しょう症のリスクを調べる「骨密度測定」を紹介する。

骨粗しょう症とは、骨密度の低下により、骨が脆く骨折しやすくなった骨格疾患である。日本の骨粗しょう症の患者数は推計1280万人で、女性980万人、男性300万人(※)。年代別の有病率は、女性は40代から、男性は50代から年齢とともに上昇傾向だ。高齢で骨折すると、歩行困難、筋肉量の低下などを連鎖的に引き起こし、寝たきりになるなど、生活の質が著しく低下する恐れがあるため注意が必要だ。

・骨密度低下による骨折などのリスクを知るためにも定期的な検査をしましょう!
お近くの検査施設ならこちら>

骨の吸収と形成のサイクルが乱れる病気

ヒトの骨は、吸収と形成を繰り返している。これを骨代謝、あるいは骨のリモデリングという。つまり、骨は、劣化の修復を繰り返して強度を保ち続けている。その理由はふたつある。ひとつは、骨が身体にかかる荷重を支える機能を維持するためだ。古い骨は脆く、身体を支えるには強度が足りなくなってしまうからだ。

ふたつ目は、電解質のバランス調節である。骨はカルシウムやリンといった電解質を貯蔵する機能も備えている。全身の細胞がこれら電解質を必要とするとき、その一部は骨から供給される。

骨代謝が正常であれば、骨の組織内には、骨質がしっかり詰まっているが、加齢やホルモンバランスの変化など、さまざまな要因で骨代謝のバランスが崩れ、骨粗しょう症を発症すると、骨密度が低くなり、組織内に空洞が目立つようになる。そして骨の強度も下がってしまうのだ。

骨粗しょう症のメカニズムについては、「患者数は推計1280万人。骨粗しょう症を予防するには?」でも紹介している。

たった5秒で骨密度を測定できる検査

骨粗しょう症を調べる検査はいくつかある。もっとも標準的な検査は、「DXA(Dual Energy X-Ray Absorptiometry)法」または「DEXA法」と呼ばれるX線を用いた検査である。骨と軟部組織のX線の吸収率の差を活用した検査法で、骨量と骨密度を調べることができる。全身、または骨折を起こしやすい腰椎や大腿骨の骨密度を専用の検査機を使って測定する。検査方法は簡単で、10分程度寝ているだけだ。DXAは、骨量測定を行ううえで非常に有用であるが、多少の放射線被曝のリスクがあるというデメリットもある。

一方、被曝リスクがない超音波を用いた「QUS(quantitative ultrasound)法」という骨密度検査もある。検査方法は、超音波骨密度測定装置に足を乗せるだけだ。これは踵骨(しょうこつ)と呼ばれる踵の骨の密度を計測する検査法で、検査時間も5秒と短く、比較的高い精度の骨密度検査を行うことが可能だ。

そのほか、CTを用いて3次元画像で骨の状態を確認することができる「QCT(quantitated computed tomography)法」という検査があるが、被曝線量が大きいことや、測定スライスの再現性が十分でないことから、使用頻度はあまり高くない。また、「MD(Microdensitometry)法」という手の人指し指の根元の骨をアルミニウム板と一緒にX線で撮影し、その画像の影の濃淡で骨密度を測る方法もあるが、微量な骨量の増減を測定することはできず、若い人や症状が軽微な場合には有効な診断結果が得られない。

骨粗しょう症リスクが高まる40代や、目前の30代は一度、骨粗しょう症のリスクを調べるために、簡便な検査でよいので骨密度を測定してほしい。

※日本骨粗鬆症学会、日本骨代謝学会、骨粗鬆症財団 「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015年版」

・骨密度低下による骨折などのリスクを知るためにも定期的な検査をしましょう!
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上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部