2017.8.17
睡眠時無呼吸症候群を調べるオプション

人間ドックのオプション、睡眠時無呼吸症候群を調べる検査「パルスオキシメトリー」

40代、50代から増える、睡眠時無呼吸症候群

人間ドックを受診する際は、受診者それぞれが気になる部位や病気リスクをより詳細に調べることができるオプション検査をぜひ活用してほしい。医療施設によって種類に差はあるが、血液検査や、MRI、CT、マンモグラフィーやエコー、内視鏡などの画像診断などがある。今回は、睡眠時無呼吸症候群を調べる検査を紹介する。

睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome:SAS)とは、睡眠中の激しいいびきや10秒以上の呼吸停止(1時間に5回以上、もしくは一晩の睡眠中に30回以上)を伴う病態で、成人男性の3〜7%、成人女性の2〜5%にみられる(※1)。また、男性では40〜50歳代が半数以上を占めるのに対して、女性は閉経後に増加する傾向がある。
閉塞性、中枢性、混合性の3型に分類することができ、最も一般的なものは閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea: OSA)だ。睡眠中に空気の通り道である上気道が閉塞することで呼吸停止が生じる、物理的な要因のタイプである。中枢性睡眠時無呼吸(central sleep apnea:CSA)は、脳にある呼吸中枢の異常によって生じるタイプである。

睡眠時無呼吸症候群の患者は、朝方に強い頭痛が現れたり、日中に傾眠傾向が見られたりすることがある。また、高血圧や脳卒中、心筋梗塞などのリスクが約3〜4倍高まるので、治療が必要な疾患である(※2)。

睡眠時無呼吸症候群と確定診断するうえでは、まず自宅でできる携帯型装置による簡易検査、次に入院を伴う精密検査のふたつを実施することが多い。1時間あたりの無呼吸と低呼吸を合わせた回数を表す「無呼吸・低呼吸指数(Apnea Hypopnea Index:AHI)」が5以上の場合、精密検査に進む。「閉塞性」の場合、AHIが、5以上15未満が軽症、15以上30未満が中等症、30以上が重症と判定される。

・睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査可能な施設をお探しの方はこちら>

在宅で行う簡易検査「パルスオキシメトリー」

まずはじめは、簡易検査である「パルスオキシメトリー」によって、睡眠時無呼吸症候群の可能性があるかどうかを検査する。パルスオキシメトリーは、在宅で行うことのできる検査で、一晩、睡眠時に小型の計測器を用い手の指を装置で挟むだけで、睡眠時無呼吸症候群の検査を行うことが可能だ。具体的には、パルスオキシメトリーによって、血液中のヘモグロビンうち酸素と結びついているヘモグロビンの割合を指す動脈血酸素飽和度(SpO2)を計測し、全身の酸素量の不足がないかを調べる。動脈血酸素飽和度の低下が検出されれば、睡眠中の無呼吸が疑われる。

人間ドックのオプションで実施されるのは、パルスオキシメトリーが多く、医療機関から計測器が貸し出される。女性はネイルアートやマニキュアは外す必要がある。

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入院が必要な検査「ポリソムノグラフィ」で確定診断

パルスオキシメトリーで睡眠中の動脈血酸素飽和度の低下が見られたら、確定診断のために「ポリソムノグラフィ検査(PSG)」を受けることになる。ポリソムノグラフィは病院で受ける検査であるため、基本的に一晩の入院を必要とする。ポリソムノグラフィでは、心電図や脳波、呼吸運動や酸素飽和度などを調べるセンサーを身体に取り付けたうえで、一晩、病院のベッドで眠る。そうして得られたデータから、睡眠の深度や無呼吸の有無などを評価し、睡眠時無呼吸症候群の診断材料にする。

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激しいいびきや日中の傾眠があれば検査を

睡眠時無呼吸症候群は、患者自身ではその発症に気づかないことが多い。そのため、パートナーや家族による激しいいびきの指摘は、重要な情報となる。ただ、日中の傾眠傾向などは患者自身でも気づけるポイントではある。これらの症状が現れている場合は、人間ドックのオプションを利用して検査するか、医療機関を受診して、睡眠時無呼吸症候群の検査を受けることを推奨したい。

※1、※2 一般社団法人日本呼吸器学会

・日中の眠気は要注意!
睡眠時無呼吸症候群の検査可能な医療施設一覧はこちら>

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部