2017.8.21

バーベキューやピクニックを楽しむために! 覚えておきたい食中毒予防

食中毒の原因となる細菌と食品は?

バーベキューやピクニックなど、野外で調理や飲食をすることは、楽しい反面、食中毒の危険が潜んでいる。とくに夏は、気温や湿度が高く、食材が傷みやすいというリスクがあるが、食中毒の原因となるのは食品だけではない。ヒトの手や調理器具、井戸水などが原因になることもある。今回は、アウトドアイベントをより安全に楽しむため、覚えておくべきことを紹介しよう。

食中毒の発生原因は、大きく三つに分けられる。
一つ目は、細菌性食中毒。食中毒の約60%を占めており、食中毒の原因となる細菌が食品の中に混入することで生じる。主な細菌に、サルモネラ属菌、病原性大腸菌、カンピロバクター、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌、セレウス菌などがある。

サルモネラ属菌

原因となる食品は、十分に加熱されていない、肉、魚、卵料理。例えば、牛肉のたたき、洋生菓子、たまごかけご飯などだ。生肉を切ったあとの包丁を別の食品に使った場合やペットや害虫が原因で細菌がついてしまうこともある。     

腸管出血性大腸菌(O157、O111)

原因となる食品は、十分に加熱されていない肉、生野菜。殺菌されていない井戸水や湧き水も原因となる場合や生肉を切った包丁から細菌がつくこともある。

カンピロバクター

原因となる食品は、十分に加熱されていない肉、そのなかでも、とくに鶏肉、牛レバー。殺菌されていない井戸水や湧き水が原因となるほか、抵抗力があまりない子どもはペットから感染する場合もある。また、生肉を切った包丁から細菌がつく場合も。

腸炎ビブリオ

夏に発生することが多く、原因となる食材は、魚介類の刺身、寿司。生の魚介類に使った包丁から細菌がつく場合もある。とくに生の魚介類に使ったあと、傷みやすい生野菜や漬物を切る場合には注意が必要だ。

黄色ブドウ球菌

ヒトの皮膚、髪の毛、鼻や口のなか、傷口にいる細菌であるため、素手で調理した食べ物が原因となる。例えば、おにぎり、手巻き寿司、調理パン、弁当などだ。菌から出た毒素は熱に強いため加熱しても死なず、食中毒を引き起こしてしまう。

二つ目は、ウイルス性食中毒。食中毒の約30%を占める。ウイルスが蓄積している食品の飲食や、人の手を介して発生する。主なウイルスに、ノロウイルスがある。

三つ目は、自然毒食中毒だ。フグや毒キノコ、トリカブトなどの動物性・植物性の毒によって発生する。

食中毒予防の三原則を知ろう!

食中毒の予防に三原則があるのは、ご存知だろうか。内閣府の食品安全委員会が挙げている食中毒予防の3原則は、病原菌を食べ物に「つけない」、食べ物に付着した病原菌を「増やさない」、食べ物や調理器具に付着した病原菌を「やっつける」。これらを徹底することで、食中毒から身を守ることができる。では、この三原則を守るためには、どうすればよいのだろうか。

「つけない」

食べ物に食中毒の原因菌やウイルスがつかなければ、食中毒を防ぐことができる。そのためには、食品を扱う前と扱ったあとには必ず手を洗うことだ。野外では気持ちが解放的になり、自宅と勝手が違うこともあって面倒に感じてしまうが、こまめに手を洗おう。石鹸をつけて15秒洗うことが食品安全委員会より推奨されており、レジャーの際にも石鹸類を持参するのが望ましい。また、手指のアルコール消毒液や使い捨てビニール手袋などを活用するとより安心だ。

「増やさない」

できる限り食品に病原菌をつけないようにしなくてはならないが、無菌状態にすることは不可能である。よって、ついてしまった病原菌を増やさないことが重要となる。そのためには、10℃以下に保冷をすること。バーベキューの食材は、氷や保冷剤を入れたクーラーボックスで保管し、調理をする直前に出すようにする。生の肉と焼けた肉で掴む箸を別のものにすることも大切だ。また、お弁当は保冷剤と保冷バッグを使い、炎天下や車中には置かないように気をつけよう。

「やっつける」

つけない、増やさないように努めたあとの3つ目の手段は、殺菌だ。多くの病原菌は熱に弱いため、十分な熱を加えると死んでしまう。では、十分な加熱とはどういったものなのか。

食品安全委員会によると、腸管出血性大腸菌O-157やサルモネラ属菌などによる細菌性食中毒を防ぐためには、75℃で1分以上の加熱が必要だとしている。ただ、十分な加熱したとしても、加熱後に生ものを扱ったトングや箸を使用すれば意味がないので注意したい。また、調理後、気温が高い野外に放置しておくと細菌が繁殖してしまう。調理用のトングや箸は別に用意し、調理後はすぐ食べるようにしよう。そして、ジビエに関しては、肉の内部に寄生虫やE型肝炎ウィルスが繁殖している場合があるので、より十分な加熱を心がけることが必要だ。

要注意! ヒトが引き起こす食中毒

ヒトや多くの動物が持っている黄色ブドウ球菌は、少々厄介者である。黄色ブドウ球菌そのものは、熱に強いわけではないが、菌から排出される「エンテロトキシン」という毒素は、通常の加熱処理では死なないのだ。ヒトの皮膚にもいる細菌なので、食べ物を直接触ることで菌がついてしまい、高い気温下で繁殖をする。おにぎりは、ラップや調理用のビニール手袋を使って握るようにし、ほかにも自宅から調理して持って行くものは素手で触ることは避け、とにかく黄色ブドウ球菌が食べ物につかないようにしよう。とくに気をつけたいのは、菌がより高い確率で潜んでいる傷口。絆創膏を張っていても菌を封印できるわけではなく、注意が必要なことは変わりがない。

水にも潜む食中毒の危険

2015年7月、山形県東根市で開かれたイベントで、参加者が腹痛や下痢を訴える食中毒が発生。原因は、イベント内で行われた流しそうめんだった。食中毒を引き起こしたのは、そうめんを流すために使った沢水で、同県食品安全衛生課の調べによると、沢水と症状を訴えた者の便から病原性大腸菌が検出されたという。普段私たちが飲んだり調理に使ったりしている水道水は、人工的にきれいにした水であることから、自然の沢水や湧き水のほうが身体によいのではないかと思いがちだが、そうではない。水道水は水質検査をクリアしたものであるのに対し、何も手を加えていない沢水や湧き水は見た目がきれいでも、細菌やウイルスに汚染されている可能性がある。流しそうめんのように直接飲まなくても、沢水に野菜や果物を浸して冷たくして食べるのもリスクが伴う。

野外でのレジャー中は、普段はできている手洗いや食品保管を怠ってしまいがちだが、面倒がらずに徹底することで食中毒を防ぐ確率が上がる。「これくらい大丈夫だろう」と過信せず、念には念を入れた行動が大切だ。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部