2017.10.5
肝細胞がんを調べるオプション

人間ドックのオプション、肝細胞がんを調べる血液検査「肝線維化マーカーM2BPGi」

慢性肝疾患から移行する肝細胞がん

人間ドックを受診する際は、受診者それぞれが気になる部位や病気リスクをより詳細に調べることができるオプション検査をぜひ活用してほしい。血液検査や、MRI、CT、マンモグラフィーやエコー、内視鏡などの画像診断など、医療施設によってさまざまな種類がある。今回は、肝細胞がんを調べる血液検査「肝線維化マーカーM2BPGi」を紹介する。

肝細胞がんとは、転移ではなく肝臓自体に発生する「原発性肝がん」の約9割を占めているがんだ。原発性肝がんには、ほかに、胆管という胆汁を十二指腸に流す部分ががん化する胆管細胞がんや、小児がんである肝細胞芽腫(かんさいぼうがしゅ)などがある。肝細胞がんの主な要因は、肝炎ウイルスの持続感染だ。国立がん研究センター「がん情報サービス」によると、肝細胞がんの約60%がC型肝炎ウイルス(HCV)の持続感染、約15%がB型肝炎ウイルス(HBV)の持続感染に起因すると試算されている。

肝臓は沈黙の臓器とも呼ばれ、肝細胞がんは初期症状がないことが多い。とくに肝炎ウイルスにかかったことがある人などは、早期発見のため、定期的に検査してほしい。

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肝細胞がんを見つける検査

肝細胞がんを発見するために、CT検査やMRI検査といった画像診断が有効だ。肝細胞がんがあった場合、特異的な画像所見が得られるため、診断を下す上では欠かせない検査といえる。また、腫瘍マーカーと呼ばれる血液検査も役立つ。具体的には「AFP」や「PIVKA-Ⅱ」の数値を調べていく。このふたつは、がんが疑われた場合、保険適用もされるため、肝細胞がんの検査としては一般的に活用されている。

それに加えて最近では、肝線維化マーカーとして「M2BPGi」が用いられるようになってきた。

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肝臓の線維化から肝細胞がんの進行度を推測する

肝細胞がんを発症すると、肝臓の組織が線維化していく。線維化が進むほど、肝細胞がんの重症度も高まっていると評価できる。線維化というのは、組織自体が硬くなることであり、本来、肝臓が担っている機能を十分に果たせなくなること、肝機能が低下していることを意味する。

「M2BPGi」は、この肝臓の線維化を調べる肝線維化マーカーの一種で、血液検査によってその値を調べることができる。

その他の線維化マーカーとの違い

肝線維化マーカーというのは、「M2BPGi」以外にも、「ヒアルロン酸」や「IV型コラーゲン」、「P-III-P」といったものが臨床の現場で活用されている。しかし、これらのマーカーは、関節リウマチや腎不全、自己免疫疾患などの病気でも高い値を示すことがあるため、肝臓以外の影響も受けやすいという欠点がある。

一方、「M2BPGi」は、おもに肝臓の線維化で異常値を示すため、肝細胞がんにおいて非常に特異性の高い物質といえるのだ。ただし、肝硬変や慢性肝炎でも高値を示すため、これだけでは肝細胞がんの確定診断を下すことはできない。

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上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部