2019.8.22

人間ドックの糖尿病検査とは? なにがわかる?

糖尿病検査の目的とは?


糖尿病検査は、糖尿病であるかどうかを調べる検査だ。糖尿病は、「インスリン」という血液中の糖分を下げるホルモンが不足したり、作用が低下したりすることで起こる病気である。人間ドックの糖尿病検査では、インスリンに関連する血中や尿中の糖分を調べる。

糖尿病検査の方法と基準値の見方

糖尿病を調べるためには血液検査や尿検査が行われる。糖尿病を調べるために行われる検査には、次のようなものがある。

グルコース

「グルコース」は血液中のブドウ糖の量を調べる検査だ。糖尿病を調べるためには、おもに「空腹時血糖値」を調べる。空腹時血糖値は、インスリンの作用を受けていない空腹時の血糖値をみるための検査で、最後の食事から10時間以上後に調べる。通常は前日の夕食以降、朝食を抜いた状態で採血した値を示す。

空腹時血糖値の基準値は、110mg/dlであり、126mg/dlよりも数値が高くなると、糖尿病の可能性がある。また、空腹時の血糖値ではない「随時血糖値」が200mg/dlを超える場合も、糖尿病の可能性がある。

HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)

「HbA1c」は、血液中のブドウ糖と結びついたヘモグロビンの割合を調べる検査だ。ヘモグロビンは血液中の赤血球のたんぱく質で、血糖値が高い状態が続くと、ブドウ糖と結合したヘモグロビンが増える。

HbA1cは、過去1~2ヶ月くらいの血糖値の平均の状態をみるのに役立つ検査だ。これは、ヘモグロビンを含む赤血球の寿命は3ヶ月ほどで、血液中の赤血球のうち10%程度は、3ヶ月前に作られた赤血球になるためだ。

HbA1cの基準値は、6.2%未満で、6.5%を超えると糖尿病の可能性がある。なお、HbA1cの基準値は2010年より国際標準に変更されている。

ブドウ糖負荷試験

「ブドウ糖負荷試験」は、糖尿病が疑われる方におこなう検査だ。一般に、空腹状態で75gブドウ糖液を飲んで、その後の血糖値の推移を調べる。ブドウ糖負荷試験で2時間後の血糖値が200㎎/dl以上の場合は、糖尿病の可能性がある。

尿糖定性検査

「尿糖定性検査」は、尿中のブドウ糖の有無を調べる尿検査だ。腎臓は、血液をろ過し、不要な老廃物や水分を尿として排出すると同時に、たんぱく質など身体に必要な成分を取り込む働き(再吸収)を持つ。通常、ブドウ糖は腎臓でろ過されたあと、血液中に再吸収されるため尿中にはほとんど含まれない。しかし、腎臓での処理を上回り、血液中のブドウ糖値が160~180mg/dL以上になるとすべて再吸収されず、尿中に排出されるようになる。

尿糖定性検査の基準値は陰性(-)だ。健康な人でも1日10~30㎎/dLのブドウ糖が尿に排出されているため、検査値の判断のおおよその目安は、49㎎/dL以下で(-)、50~99㎎/dLで(±)、100㎎/dL以上で(+)とされている。ただし数値は、試験紙により感度が異なる。

検査結果が陽性(+)の場合は、糖尿病の可能性や腎機能の低下が考えられる。そのため、追加検査としてブドウ糖負荷試験が行われる。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部