2019.11.21

人間ドック前日の食事制限はなぜ必要? 本質を理解してきちんと守ろう

人間ドック前日の食事制限のおもな理由は、消化器の検査のため


人間ドックを受ける際、多くの場合に前日夜からの食事制限が指定される。一般的には、21時までに夕食を摂り、以降は禁食を指示されることが多い。なぜ、食事制限が必要なのだろうか? 食事制限をしないとどうなるのだろうか?

その理由は、胃に食事の内容物が残らないようにするためだ。人間ドックで行われる胃透視や内視鏡検査は、消化器の粘膜の状態をみる検査だ。食事の残りカスがあると検査の妨げになってしまう。また、夜遅すぎる食事は、糖分や脂質が代謝しきれずに、翌日の血液検査や尿検査にも影響を与えることがあるので、人間ドック前日の夜は、食事制限を行わなければならないのだ。

食事制限が必要になる、おもな検査

人間ドック前日の食事制限と関係のある検査にはおもに次ものがある。これから人間ドックを受ける予定のある人は、食事制限の理由を知って、指示をきちんと守っていこう。

胃透視検査

バリウムを飲んで、胃をレントゲン撮影する検査。胃内に食べ物が残っていると、病変にように写ってしまうことがあり、正確な診断の妨げとなる。

胃内視鏡検査

口や鼻から内視鏡と呼ばれるカメラを挿入して、胃の粘膜を直接観察する検査。胃のなかに食べ物が残っていると、その部分の粘膜を観察することができない。とくに、胃がんなどで胃の一部を切除している場合は、食べ物が残りやすいので、前日は消化のよい食事がすすめられる。

腹部エコー検査

超音波の跳ね返しを画像化し、お腹の内部を確認する検査。食事をすると消化のために胆汁が分泌されて、一時的に胆のうが縮まるため、胆のうの異常を確認しづらくなる。また食事を取ると、腸からのガスの発生が活発になり、超音波が通りにくくなるので、十分な検査が難しくなる。

大腸内視鏡

肛門から内視鏡を挿入して、大腸の粘膜の状態を観察する検査。胃内視鏡検査と同様に、腸のなかを空の状態にする必要がある。食事が遅くなると、食事の内容物が腸内に残り、その部分の粘膜をきちんと観察することができない。食事が消化されて便になるまで時間を要するため、検査前日は消化のよい食べ物を摂るのがよい。

大腸内視鏡検査を行う場合は、多くの場合、数日前から消化のよい食事をするように指定される。また当日は、下剤を飲み、腸のなかの宿便を排除してから検査が行われる。

一部の血液検査と尿検査

前日の食事が遅くなると、血糖値や血液中の脂質を調べる検査に影響を与えることがある。また、尿検査で注意したいのが、大量のビタミンCだ。尿検査のなかには酸化反応を利用して測定しているものがある。ビタミンCは大量に摂取すると尿中に排泄されるが、還元反応によって、尿検査の結果に影響を与えることがある。人間ドック前日は、ビタミンCの豊富な食品やサプリメントの摂取にも注意が必要だ。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部