2019.12.5

「細胞診」は、どう判断しているのか?

人間ドックの「細胞診」とはどんな検査か?


人間ドックの細胞診は、おもにがん細胞の有無を確認するために行われる。細胞診は痰や腹水や胸水、細胞の一部などを検体として、異常な細胞やウイルス感染や炎症状態を調べる。人間ドックで行われるおもな細胞診は、肺がんを調べる喀痰検査や、婦人科系のがん検査の子宮頸部細胞診・子宮体部細胞診がある。

細胞診で異常な細胞を見つける仕組み

細胞診では、採取した検体をスライドガラスに塗布して、細胞の質が変化しないように処置をしたのち(専門用語で固定という)、顕微鏡で確認する。検体によっては、検体を染色して行うこともある。たとえば、人間ドックで子宮がんや肺がんを調べる際に行われるがん細胞の細胞診では、検体細胞の「パパニコロウ染色」が行われる。パパニコロウ染色をすると、細胞の分子量ごとにオレンジ色から青色に染まるため、重なり合った細胞や細胞の核の観察がしやすくなるのだ。

がん細胞は顕微鏡でどのように見える?

ここでは、人間ドックで行われる「子宮頸部細胞診」「子宮体部細胞診」「喀痰検査」の細胞診の見え方を説明する。

子宮頸部細胞診・子宮体部細胞診

子宮頸部や子宮内膜の細胞を綿棒などでこすり取って、がん細胞や異常な細胞が確認する検査である。子宮頸部細胞診は子宮頸がん、子宮体部細胞診は子宮体がんの診断に役立つ。

子宮の細胞診では、正常な細胞は核も形も整然とした状態でみえる。一方、がん細胞は細胞の核が大きくなり、不揃いの細胞が密集しているのが確認できる。また、一部の細胞層の重なりが異常に厚くなったり、そこにあるべきでない異常な細胞がみられたりするのも特徴だ。

喀痰検査

喀痰の細胞診は、ウイルスや結核菌の感染がないかを調べるために行われるのが一般的だ。一方で、人間ドックでは肺がんを調べるために、痰のなかにがん細胞が含まれていないかを確認する。喀痰検査は1回で判定できるとは限らないため、2〜3日に分けて行われることもある。

肺のがん細胞には、組織の型ごとにいくつかの種類があり、発生しやすい部位も異なる。喀痰検査の細胞診では、次のようながん細胞を確認できる。

・腺がん
女性やタバコを吸わない人にみられる肺がん。肺の末梢部分に発生することが多い。ドーナツ状の乳頭型などがある。

・扁平上皮がん
気管支より発生しやすい肺がん。扁平上皮がん細胞は、オレンジ色に染まる。皮膚や食道にある扁平上皮細胞に似た構造をしており、角があるのが特徴。

・大細胞がん
肺の末梢に好発するがん、がん細胞が大きく、扁平上皮がんや腺がんに分化していない細胞が該当する。

・小細胞がん
喫煙との関連が深い肺がんで、肺の中心部に発生しやすい。喀痰検査の細胞診では、小さながん細胞が連なってみえる。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部