2017.3.9
乳腺超音波検査(エコー検査)

乳がんを調べるエコー検査とは?【初めての乳がん検査 Vol.3】

超音波で腫瘤の有無や良性・悪性の診断を行う検査

「エコー」とは超音波を用いた検査法で、乳がん検診では「乳腺超音波検査」と呼ばれている。ゼリーを塗った乳房に直接「プローブ」という器具を接触させ、超音波の反射の具合によって、乳腺内の腫瘤(しゅりゅう)の有無、形状が映像化される検査だ。良性と悪性の腫瘤とでは、全体的な形状や境界面の状態などが異なるため、映像を通して乳がんを発見することが可能なのだ。初めての乳がん検査シリーズ第3回は、女性の部位別がん罹患数ナンバー1の乳がんを早期発見するために受診したい乳腺超音波検査(エコー検査)について詳しく解説する。

乳腺超音波検査の手順とは?

乳腺超音波検査は、上半身裸の状態で行われる。診察台の上に横たわり、仰向けになって検査を受ける。検査時には、超音波の伝導率を高めるためのゼリーを検査部位に塗布する。そこにプローブを当て、映像化したい場所へと移動していく。映像はリアルタイムで表示されるため、気になる部位をさまざまな角度から観察し、腫瘤を調べることが可能だ。検査に要する時間は15分程度である。

乳腺超音波検査で、乳がんを見分ける方法とは?

超音波は、生体内の組織の性質が変わるところで反射される性質がある。その強さと時間を測定することで腫瘍の有無や大きさ、深度を調べることができるのだ。超音波の反射が強いものほど検査では白く映し出される。一般的に、乳腺は白く、脂肪や水分の多い組織は黒く映し出される。そのなかに腫瘤がある場合、その形状が黒く描出される。これはしこりの反射がほかの組織と異なるために黒く映し出されるのだ。

良性と悪性は、映し出された腫瘤像の見え方で判断する。たとえば、乳腺に分泌物が溜まることでできるしこりである嚢胞(のうほう)は、良性の場合、多くはきれいな黒い丸として映像に映る。良性の場合は、白く映る乳腺と、黒く映る腫瘤の境界線が滑らかではっきりしているため、黒い球状に映るのだ。一方、悪性の腫瘤は、形が球状ではなく辺縁が不整で、内容物も線維性の組織が散在しているため、全体的に不明瞭な形状に見える。このような見え方の違いで、良性と悪性を判断する。

被曝がなく若年者に有効な乳がん検査

乳腺超音波検査は超音波を利用した検査で、被曝を伴わない。そのため、妊娠中でも受けることができるのが特徴だ。また、若年者の乳がん発見に適しているという特徴もある。というのも、30歳以下の若年者は、乳腺組織が発達しているため、乳がんの代表的な検査である「マンモグラフィー」の場合、乳腺が白く映りこみ、乳がん組織による石灰化と判別がしづらいが、超音波の場合は、乳腺は白く映るが、腫瘤は黒く描出されるため問題ないからだ。しかし、年齢が上がるにつれ、女性の乳房は乳腺組織が脂肪へと置換されてしまうため、乳腺超音波検査では、脂肪は腫瘤と同じく黒く映し出されてしまい、逆に今度は描画しにくくなってしまう。

乳がんを調べる検査は、触診、乳腺超音波検査、マンモグラフィー、血液検査があるが、どれかひとつで乳がんの確定診断を下すのは難しいため、定期的に複数の検査を組み合わせて調べることが望ましい。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部