2015.6.15

腸内細菌「サイコバイオティクス」がうつ病や気分障害を治す!?

うつ病が治療できる「サイコバイオティクス」って何?

腸内細菌うつ病や気分障害を治療できる可能性のある腸内細菌「サイコバイオティクス」の研究が進んでいる。ヨーグルトなどに入っており、腸内フローラのバランスを改善し、カラダによい作用をもたらす生きた微生物である「プロバイオティクス」の仲間で、十分な量を摂取すると、うつ病や不安といった精神疾患の治療になったことがマウスでの研究で明らかになっている。腸内細菌は、神経伝達や代謝に関わる化合物を作って脳に働きかけ、脳は、微生物の構成を助ける胃腸や免疫機能に作用するという。この相互作用を利用して、腸内細菌「サイコバイオティクス」が、うつ病などの治療に役立つかもしれないということなのだ。

じつはすごかった! 腸内細菌の働き

腸の働きや状態が精神状態を支配するという認識は、なんと100年以上前からあった。19~20世紀の初頭、科学者たちの間では、腸にたまった老廃物が毒素となり、うつ病や不安につながると考えられていたのだ。そして現在、この考え方が再び浮上し研究が進められている。

たとえば、九州大学の研究グループは、無菌状態で成育したマウスを使った実験で、腸内細菌がストレス反応に影響することを初めて実証。また、カナダの研究グループは、無菌のマウスの腸に他のマウスの腸から取った微生物を植えつけると、ドナーの性格を受け継ぐことを明らかにした。臆病なマウスが活発で冒険的になったり、逆に大胆だったマウスが内気になったりしたというから驚きだ。

ヨーグルトを食べれば憂いなし!?

これまでの脳と腸の関係を調べる研究では、ビフィズス菌が最も成果をあげている。カナダの研究グループが、健康な女性に1か月間ヨーグルトを食べてもらい、恐怖や怒りの画像を見せた時の脳の動きをMRIで見る実験を行った。通常、不安になると感情を処理する領域が増大するが、対象の女性たちは、反応が少なったという。

また、マウス実験では、2種類のビフィズス菌がうつ病の治療薬よりも効果的だったことがわかっている。ただ、これまでの実験はマウスを使ったものが大半で、ヒトでのデータは少ない。ヒトへの有用性への期待はますます高まるばかりだ。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部