鳥取県米子市上福原2-17-15
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鳥取砂丘があることで知られる鳥取市は鳥取県の県庁所在地です。2004年に国府町、福部村、河原町、用瀬町、佐治村、気高町、鹿野町、青谷町との9市町村合併によって、現在の鳥取市になりました。2018年には中核市に移行しています。中核市とは政令指定都市と並ぶ日本の大都市制度の一つであり、地方自治法にもとづき定める政令によって指定される人口20万人以上の市を示します。2021年4月1日現在、62市が指定されています。
2021年9月現在の人口は約18.5万人(住民基本台帳による)です。国勢調査によれば、鳥取市の人口は2005年をピークに減少に転じています。なお、日本全体のピークは2008年、鳥取県全体のピークは1988年です(いずれも国勢調査をもとにした推計人口)。国立社会保障・人口問題研究所によれば、現状のままでは2045年には約15.7万人に減少すると推計されています。
鳥取市の2021年9月現在における65歳以上の高齢者人口は約5.5万人で、高齢化率は29.9%です。2020年10月の日本全体の高齢化率は28.8%であることから、鳥取市の高齢化は全国よりも進んでいると言えます。多くの地方自治体同様、人口が減少しているのに対して、高齢者の人口は増加しています。
健康寿命とは、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間を指します。日常生活に制限のない、自立した状態で過ごせる期間と言えます。平均寿命と健康寿命との差(不健康である期間)が長くなるほど医療費や介護費がふくらみ、公費負担が増大する要因になります。
鳥取市では、「日常生活動作が自立している期間の平均」を健康寿命の指標としています。介護保険制度の要介護2~5を不健康(要介護)な状態とし、それ以外を日常生活が自立していると定義し、算出されています。下記は、鳥取市の健康寿命です。
2010年 | 2017年 | 増減 | |
---|---|---|---|
男性 | 77.76歳 | 82.55歳 | +4.79 |
女性 | 82.85歳 | 85.76歳 | +2.91 |
鳥取市の2017年現在の健康寿命は、男性82.55歳、女性85.76歳です。2010年と比較し、男性4.79歳、女性2.91歳、健康寿命が伸長しています。
鳥取市は2021年3月に「とっとり元気プラン2021」を策定し、2025年度までの5年間を計画期間としながら、さらなる健康寿命の延伸と健康格差の縮小、生活習慣病の発症と重症化予防に重点を置いた対策を推進していくとしています。
1981年以降、日本人の死因の第1位はがんです。以降、生活習慣病を主因とする疾患が上位を占めています。生活習慣病とは、生活習慣(食、運動、喫煙、飲酒等)が影響する一部のがんや心臓病(心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)、糖尿病などを指します。人口動態調査によると、鳥取市と日本全体の死因とその割合は下記のようになっています。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
---|---|---|---|---|---|
鳥取市※2019年 | 悪性新生物(がん)29.1% | 心疾患13.5% | 老衰11.1% | 脳血管疾患9.3% | 肺炎4.0% |
日本全体※2019年 | 悪性新生物(がん)27.3% | 心疾患15.0% | 老衰8.8% | 脳血管疾患7.7% | 肺炎6.9% |
鳥取市の死因上位5位は日本全体と同じですが、生活習慣病のうち、がんと脳血管疾患の割合が比較的大きく、心疾患の割合は比較的小さいです。また、鳥取市の高齢化率が日本全体を上回っているなか、老衰の割合が比較的大きく、肺炎の割合は小さいことから、鳥取市の高齢者の健康レベルは日本全体と比べて高い水準にあることがうかがえます。
日本では、厚生労働省の指針に基づき、自治体主導で実施されている「5大がん検診」と呼ばれるがん検診があり、全国各自治体とも受診率の向上を目指しています。5大がん検診は、胃がん、子宮がん(子宮頸がん)、肺がん、乳がん、大腸がんの5つの検診を指します。
5大がん検診は、加入している健康保険の種類に関係なく住民票のある自治体で受診することができます。検診の種類によって対象年齢や頻度は異なりますが、受診費の一部もしくは全額が公費で負担されます。ただし、企業に勤めている方などは、企業による健康診断にがん検診が含まれていることが多いため、自治体主導のがん検診受診者は国民健康保険加入者や後期高齢者医療保険加入者を含む、「勤務先などでの受診機会のない人」が中心です。
鳥取市が実施しているがん検診の種類と費用は下記の通りです。
種類 | 検査項目 | 対象者 | 受診間隔 | 費用 |
---|---|---|---|---|
胃がん | 胃部X線検査(バリウム)または内視鏡検査(胃カメラ)※集団検診はX線のみ | 40歳以上 | 年1回 | 個別:2,000円集団:500円 |
子宮頸がん | 子宮頸部細胞診※医師の判断によって子宮体部検査も実施(個別検診のみ) | 20歳以上女性 | 年1回 | 個別:1,500円集団:500円※子宮体部検査は別途2,800円(個別のみ) |
肺がん | 胸部X線、喀痰検査※喀痰検査は50歳以上かつ喫煙指数600以上※結核検診も同時実施 | 40歳以上 | 年1回 | ●胸部X線・個別:1,000円・集団:無料●喀痰検査・個別:2,000円・集団:300円 |
乳がん | マンモグラフィ | 40歳以上女性 | 2年に1回 | 個別:1,300円集団:500円 |
大腸がん | 便潜血検査 | 40歳以上 | 年1回 | 個別:500円集団:200円 |
鳥取市のがん検診は、基本的に厚生労働省の指針に沿っています。
鳥取市のがん検診の無料クーポンは下記の通りです。41歳から61歳まで、5歳刻みで各種がん検診の無料クーポンが発行されます。また、子宮頸がん検診は21歳から5歳刻みで無料クーポンが発行され、全般的にがん検診受診への後押しが手厚い自治体と言えます。
種類 | 対象者 |
---|---|
胃がん | 41・46・51・56・61歳 |
肺がん | 41・46・51・56・61歳 |
大腸がん | 41・46・51・56・61歳 |
子宮頸がん | 21・26・31・36・41・46・51・56・61歳の女性(31、36歳はHPV検査を同時実施) |
乳がん | 41・46・51・56・61歳の女性 |
次の方は無料でがん検診を受診することができます。 ・生活保護受給世帯 ・市民税非課税世帯
下記は、鳥取市が実施した2015年度から2019年度の各がん検診の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
---|---|---|---|---|---|
2015年度 | 3.6% | 20.9% | 13.7% | 22.8% | 14.3% |
2016年度 | 17.6% | 21.5% | 13.6% | 23.6% | 14.2% |
2017年度 | 22.2% | 21.4% | 13.0% | 22.7% | 13.5% |
2018年度 | 21.7% | 22.0% | 12.4% | 22.7% | 13.3% |
2019年度 | 21.2% | 22.5% | 12.2% | 22.8% | 13.1% |
下記は、自治体主導のがん検診における2015年度から2019年度の日本全体の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
---|---|---|---|---|---|
2015年度 | 6.3% | 23.3% | 11.2% | 20.0% | 13.8% |
2016年度 | 8.6% | 16.4% | 7.7% | 18.2% | 8.8% |
2017年度 | 8.4% | 16.3% | 7.4% | 17.4% | 8.4% |
2018年度 | 8.1% | 16.0% | 7.1% | 17.2% | 8.1% |
2019年度 | 7.8% | 15.7% | 6.8% | 17.0% | 7.7% |
鳥取市のがん検診受診率は、すべての検診で日本全体を上回っています。とくに胃がん検診は日本全体に比べ2倍以上の受診率となっています。背景には、5歳ごとに無料クーポンが利用できるという事情が考えられます。
2016年度から一部の受診率が増減しており、これは地域保健・健康増進事業報告における受診率の算定法の対象者が変更されたことが考えられます。また、過去に国のがん検診推進事業として、大腸がん検診、乳がん検診では40~60歳の間で5歳おき、子宮頸がん検診では20~40歳の間で5歳おきに無料クーポンが配布されていました。しかし、2016年から大腸がん検診は事業の対象外になり、2017年から子宮頸がん検診と乳がん検診の無料クーポンは検診開始年齢(子宮頸がん検診20歳、乳がん検診40歳)のみになりました。これら無料クーポン対象外の影響が多くの自治体では受診率低下につながっていると考えられています。このため、自治体によっては独自の無料クーポンを配布したり、キャンペーンを実施したりして、受診率向上に努めており、鳥取市は独自に5歳刻みのクーポンを発行していることで高い受診率を維持していると言えます。
がん検診の受診率向上やがん予防のために、鳥取市では次のような取り組みも行っています。
・肝炎ウイルス検査 肝炎ウイルスの感染による慢性肝炎や肝硬変は、肝臓がんの主要な原因となっている。ウイルスに感染していても数年は無症状のため、肝炎ウイルスの血液検査(B型・C型)の実施は、肝臓がんの予防につながる。鳥取市では40~74歳で過去に検査歴のない人を対象に、肝炎ウイルス(B型・C型)検査を実施している。医療機関で個別に受ける場合は800円、集団検診では300円。40・41・45・46・50・51・55・56・60・61・65歳と70~74歳は無料。
・休日検診 仕事などで平日に検診を受診できない人を対象に、予約制で休日検診を実施している。
・出張がん予防教室 小・中・高等学校等の児童・生徒・保護者等に対し、がん予防教室を実施する教育機関や、 従業員等にがんに関する研修等を実施する企業にがん予防教育の講師派遣や教材提供などを行っている。
鳥取市では、鳥取市在住の国民健康保険被保険者を対象に、人間ドック・脳ドックの費用の一部が助成されます。
鳥取市の人間ドックの助成内容は下記の通りです。
【助成対象者】 40~74歳の鳥取市国民健康保険被保険者
【自己負担額】
検診項目 | 市民税課税世帯 | 市民非課税世帯 |
---|---|---|
喀痰検査あり | 11,300円 | 3,800円 |
喀痰検査なし | 11,900円 | 4,000円 |
助成対象となるには、いくつかの条件があります。 ・受診は市内の契約医療施設のみ ・前年度分までの保険料を完納していること
がん検診の無料クーポン券対象者でも、人間ドックを受ける場合は別途費用がかかります。募集時期や詳細は鳥取市サイトで確認してください。
鳥取市の脳ドックの助成内容は下記の通りです。
【対象者】 40~70歳の5歳刻み年齢で下記に該当する人
・ 鳥取市国民健康保険被保険者(手続時に納期到来までの保険料を完納していること) ・健康保険・共済保険等の被扶養者、任意継続者 ・生活保護世帯
【自己負担額】
区分 | 市民税課税世帯 | 市民非課税世帯 | 生活保護世帯 |
---|---|---|---|
鳥取市国保被保険者 | 7,200円 | 2,200円 | 無料 |
健康保険等被扶養者 | 8,000円 | 3,000円 | 無料 |
受診は市内の契約医療施設のみです。募集時期や詳細は鳥取市サイトで確認してください。
鳥取市は健康年齢の延伸を目指し「とっとり市民元気プラン2021」のもと、さまざまな取り組みを実施しています。
・若い世代を対象にした健康診査 社会保険等の本人を除く18~39歳の人は、500円で健康診査を受診できる。市民税非課税世帯は無料。
・しゃんしゃん体操を開発 介護予防と地域のふれあいを目的として、鳥取市の「しゃんしゃん傘踊り」の音楽に合わせて行う「しゃんしゃん体操」を作り、普及員を育成して、市内での普及に努めている。2020年には認知症予防を目的とした脳トレ「しゃんしゃんコグニサイズ」も開発、広めようとしている。
・地域リハビリテーション活動の支援 地域の通いの場や介護サービス事業所等に、リハビリテーション専門職などの人材を派遣し、介護予防の取組内容について技術的な指導や助言を行っている。派遣料は無料。
・一品さんレシピを紹介 管理栄養士の資格を持つ「一品さん」が、高血圧症、糖尿病などの生活習慣病予防に役立つ様々な食事レシピを鳥取市サイトで紹介している。
※本記事は2021年10月時点の情報を元に作成しています。