神奈川県 厚木市がこんな健康への取組みをしているって知っていますか 1.厚木市の特徴 1-1.厚木市の人口統計と高齢化率 厚木市は神奈川県の中央に位置する市です。1955年2月に愛甲郡厚木町、南毛利村、睦合村、小鮎村および玉川村が合併し、厚木市政が始まりました。また、同年7月に中郡相川村、愛甲郡依知村、さらに翌年愛甲郡荻野村を編入し、今の姿となっています。東部・南部に本厚木駅や東名高速道路の厚木ICを有し、北部・西部には広大な森林公園やゴルフ場が点在しています。
2022年1月現在の人口は約22.4万人 (国勢調査をもとにした推計人口)です。国勢調査によれば、厚木市の人口は2015年まで一貫して増加を続けていましたが、2015年から2020年にかけて、初めて減少 しました。なお、神奈川県全体では2020年においても増加を続けている(国勢調査)一方、日本全体では2008年をピークに減少に転じています(推計人口)。国立社会保障・人口問題研究所の2018年時点の推計によれば、厚木市の人口は2015年をピークに減少に転じ、2045年には約19.4万人に減少するとされています。
2021年12月現在における65歳以上の高齢者人口は約5.8万人で、高齢化率は26.1% です。2020年10月の日本全体の高齢化率は28.8%であることから、厚木市の高齢化率は日本全体よりも低い と言えます。厚木市は東京都心が通勤圏内であること、東京都内に比べて地価・物価が安価であることからベッドタウンとしての側面もあります。日本全体が人口減少傾向にあるなかでも比較的若い世代の転入が多いため、高齢化も比較的ゆるやかであると考えられます。
厚木市の人口と高齢化率の推移
*厚生労働省「国勢調査」をもとに編集部で作成 1-2.厚木市の健康寿命 健康寿命とは、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間 を指します。日常生活に制限のない、自立した状態で過ごせる期間と言えます。
下記は、厚木市の平均寿命と健康寿命を示した表です。厚木市の平均寿命・健康寿命は市独自で算出しています。平均余命と健康寿命との差(不健康である期間)が長くなるほど医療費や介護費がふくらみ、公費負担が増大する要因になります。
男性 女性 2014年 2018年 増減 2014年 2018年 増減 平均寿命 80.7歳 81.4歳 +0.7 85.4歳 86.7歳 +1.3 健康寿命 79.2歳 80.0歳 +0.8 82.3歳 83.5歳 +1.2 不健康である期間 1.5年 1.4年 -0.1 3.1年 3.2年 +0.1
厚木市の2018年現在の健康寿命は、男性80.0歳、女性83.5歳 です。2014年から2018年にかけて、男女ともに平均寿命・健康寿命のどちらも伸長しており、不健康である期間はほぼ同水準です。この結果から、厚木市では順調に健康寿命が延伸している とみることができます。
2.厚木市の死因順位と割合 1981年以降、日本人の死因の第1位はがんです。 以降、生活習慣病を主因とする疾患が上位を占めています。生活習慣病とは、生活習慣(食、運動、喫煙、飲酒等)が影響する一部のがんや心臓病(心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)、糖尿病などを指します。人口動態調査によると、厚木市と日本全体の死因とその割合は下記のようになっています。
1位 2位 3位 4位 5位 厚木市※2019年 悪性新生物(がん)30.3% 心疾患13.6% 老衰9.8% 脳血管疾患6.8% 肺炎6.4% 日本全体※2019年 悪性新生物(がん)27.3% 心疾患15.0% 老衰8.8% 脳血管疾患7.7% 肺炎6.9%
厚木市の死因順位は日本全国と同様です。生活習慣病の三大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)の合計割合は、日本全体が50.0%であるのに対し、厚木市は50.7%とほぼ同水準です。このうち、心疾患、脳血管疾患による死亡割合は日本全体を下回っている一方、がんによる死亡割合が日本全体を3.0ポイント上回っており 突出しています。厚木市はがん対策が課題であると言えそうです。
3.厚木市のがん検診の種類・費用 3-1.自治体主導の「5大がん検診」 日本では、厚生労働省の指針に基づき、自治体主導で実施されている「5大がん検診」と呼ばれるがん検診があり、全国各自治体とも受診率の向上を目指しています。 5大がん検診は、胃がん、子宮がん(子宮頸がん)、肺がん、乳がん、大腸がん の5つの検診を指します。
5大がん検診は、加入している健康保険の種類に関係なく住民票のある自治体で受診することができます。検診の種類によって対象年齢や頻度は異なりますが、受診費の一部もしくは全額が公費で負担されます。ただし、企業に勤めている方などは、企業による健康診断にがん検診が含まれていることが多いため、自治体主導のがん検診受診者は国民健康保険加入者や後期高齢者医療保険加入者を含む、「勤務先などでの受診機会のない人」が中心です。
3-2.厚木市のがん検診 厚木市が実施しているがん検診の種類と費用は下記の通りです。太字は、厚木市独自の取り組みです。
厚木市のがん検診の種類・費用
種類 検査項目 対象者 受診間隔 費用 胃がん 胃部X線検査(バリウム)または胃内視鏡検査(胃カメラ) 40歳以上 年1回 ●バリウム・集団:1,500円・個別:4,100円●胃カメラ 4,800円(個別のみ) 子宮がん 子宮頸部細胞診※45歳以上で、医師が必要と認めた人のみ子宮体部細胞診 も実施 20歳以上女性 年1回 ・集団:1,100円・個別:2,000円※子宮体部細胞診は別途 3,800円 肺がん 胸部X線検査、喀痰検査※喀痰検査は50歳以上で喫煙歴があり、喫煙指数600以上の方 40歳以上 年1回 ●胸部X線500円(個別のみ)●喀痰検査1,100円(個別のみ) 乳がん マンモグラフィ 40歳以上女性 2年に1回 ●40歳代・集団:1,800円・個別:2,100円●50歳以上・集団:1,300円・個別:1,600円 大腸がん 便潜血反応検査 40歳以上 年1回 400円 前立腺がん 血液検査(PSA値) 50歳以上男性 年1回 1,000円 口腔がん 視触診 40歳以上 年1回 1,600円
厚木市のがん検診は、基本的には厚生労働省の指針に沿っています。特徴として、厚生労働省の指針にはない前立腺がん検診・口腔がん検診を実施 していることが挙げられます。また、胃がん(胃カメラ)・子宮がん検診は指針と異なり、厚木市ではいずれも毎年受診 できます。
3-3.厚木市のがん検診の無料クーポン 厚木市のがん検診の無料クーポンは下記の通りです。
種類 対象者※年齢は当該年度末時点で判定 無料になる検査項目 子宮頸がん 21・26・31歳女性 子宮頸部細胞診 大腸がん 56・61歳 便潜血反応検査
また、次の方は無料でがん検診を受診できます。
・70歳以上の方
・生活保護受給世帯の方
・市民税非課税世帯の方
・中国残留邦人等に対する支援給付を受けている方
ただし、市民税非課税世帯の方が無料でがん検診を受診するためには事前に費用免除証明書の交付を受ける必要があります。詳細は厚木市サイトをご確認ください。
4.厚木市のがん検診受診率と受診率向上のための取り組み 4-1.厚木市のがん検診受診率の現状 下記は、2015年度から2019年度の厚木市のがん検診受診率の推移です。
厚木市のがん検診受診率推移
胃がん 子宮頸がん 肺がん 乳がん 大腸がん 2015年度 6.7% 36.8% 24.0% 27.2% 22.4% 2016年度 7.9% 16.8% 8.3% 12.2% 7.5% 2017年度 9.7% 16.6% 7.8% 12.2% 7.1% 2018年度 9.7% 16.1% 7.0% 11.3% 6.3% 2019年度 9.4% 15.2% 7.1% 13.9% 6.4%
下記は、自治体主導のがん検診における2015年度から2019年度の日本全体の受診率の推移です。
自治体主導の日本全体のがん検診受診率推移
胃がん 子宮頸がん 肺がん 乳がん 大腸がん 2015年度 6.3% 23.3% 11.2% 20.0% 13.8% 2016年度 8.6% 16.4% 7.7% 18.2% 8.8% 2017年度 8.4% 16.3% 7.4% 17.4% 8.4% 2018年度 8.1% 16.0% 7.1% 17.2% 8.1% 2019年度 7.8% 15.7% 6.8% 17.0% 7.7%
厚木市のがん検診受診率を日本全体と比較すると、検診の種類によって差がみられます。胃がん・子宮頸がん検診は上回り 、肺がん検診は同程度、乳がん・大腸がん検診は下回って います。また、日本全体ではすべての検診受診率が年々低下傾向であるのに対し、厚木市の肺がん・乳がん・大腸がん検診では2018年から2019年にかけて若干上昇しています。
日本全体のデータにおいて、2016年度から一部の受診率が顕著に低下している要因としては、地域保健・健康増進事業報告における受診率の算定法の対象者が変更されたことが考えられます。また、過去に国のがん検診推進事業として、大腸がん検診、乳がん検診では40~60歳の間で5歳おき、子宮頸がん検診では20~40歳の間で5歳おきに無料クーポンが配布されていました。しかし、2016年から大腸がん検診は事業の対象外になり、2017年から子宮頸がん検診と乳がん検診の無料クーポンは検診開始年齢(子宮頸がん検診20歳、乳がん検診40歳)のみになりました。これら無料クーポン対象外の影響が受診率低下につながっていると考えられています。このため、自治体によっては独自の無料クーポンを配布したり、キャンペーンを実施したりして、受診率向上に努めています。
4-2.厚木市のがん検診受診率向上やがん予防のための取り組み がん検診の受診率向上やがん予防に向けて、厚木市では次のような取り組みを行っています。
・肝炎ウイルス検診の実施
厚木市在住の40歳以上で、これまで肝炎ウイルス検査を未受診であれば、肝炎ウイルス検診を受けることができる。肝炎ウイルスは肝臓がんの主因のひとつであり、事前に適切な検査を受けることで肝臓がんのリスクの低減につながる。受診費は900円。ただし、41・46・51・56歳・61歳の人は無料。
・胃がんリスク検診の実施
厚木市では、一部の市民に胃がんリスク検診を実施している。日本人の胃がんのおもな原因は、ヘリコバクター・ピロリ菌への感染である。ピロリ菌に感染することで胃の粘膜が萎縮し、胃がんのリスクが上がると言われている。血液検査で、ピロリ菌感染の有無を調べる検査(ピロリ菌抗体検査)や胃粘膜萎縮度の検査(ペプシノゲン検査)を行うことで、胃がんの早期治療開始や、除菌による胃がんリスクの低減が期待できる。対象は40歳以上の市民で、受診頻度は5年に1回、受診費は1,500円。
5.厚木市の人間ドックの費用補助・助成 厚木市では、国民健康保険に加入している方を対象に人間ドック費用の一部助成 を行っています。助成内容は下記の通りです。
【対象者】
20歳以上の厚木市国民健康保険被保険者で、保険料に未納がない方
【助成額】
20~39歳:上限 25,000円
40歳以上 :上限20,000円
助成条件は下記の通りです。
・特定健診の受診は不可
・厚木市指定の検査項目を網羅していること
・検査結果の提供に同意すること
詳細は厚木市サイトをご確認ください。
6.厚木市の人間ドック機能評価認定施設 6-1.機能評価認定施設とは? 「機能評価認定施設」とは、日本人間ドック学会が定めている「人間ドック健診施設機能評価」という評価基準をクリアした医療施設 です。申請のあった人間ドック施設に対して日本人間ドック学会が受診者目線で審査している取り組みです。
審査項目には、「運営方針、組織の管理体制が確立しているか」や「検査の業務マニュアルは作成されているか」、「感染対策などの危機管理は徹底されているか」といった施設側の安全面に関する基準から、「受診者が快適に受診できるように配慮しているか」や「受診者のプライバシーに配慮しているか」といった受診者側に関する基準まで、多角的な評価基準があります。また、評価基準は5年ごとに改定され、更新審査が行われます。
6-2.厚木市の機能評価認定施設 全国390以上の医療施設が認定されており、このうち厚木市内の評価機能認定施設は2022年1月現在で2施設 あります。
マーソでは、機能評価認定施設から人間ドックのプランを探すことができます。くわしくはこちら をご覧ください。
7.厚木市の健康増進への取り組み 厚木市は健康寿命の延伸を目標に掲げています。健康寿命の延伸に向け、さまざまな取り組みを行っています。
・骨粗しょう症検診の実施
厚木市では骨粗しょう症の早期発見を目的として骨粗しょう症検診(手のレントゲン撮影)を実施している。骨粗しょう症は骨密度が低下して骨が脆くなった状態を指す。女性ホルモンによる影響が大きいためとくに閉経後の女性が発症しやすいとされており、骨粗しょう症が進行すると骨折リスクが上がり、日常生活への影響が生じるリスクもある。対象は40~70歳の5歳刻み年齢の女性で、受診費は1,500円。
・成人眼科健康診査の実施
厚木市では市民を対象に緑内障予防・早期発見を目的として成人眼科健康診査を行っている。緑内障は眼圧が上がる病気で、進行すると失明のリスクもある。緑内障リスクは40歳以上で高くなると言われており、早期発見・早期治療が大切である。対象は40~55歳の5歳刻み年齢の市民で、受診費は2,300円。
・健康づくりによるポイント制度「あゆコロちゃんGENKIポイント」
ウォーキングの実施や健康イベントへの参加、各種検診の受診を通してポイントを貯める「あゆコロちゃんGENKIポイント」事業を展開している。あゆコロちゃんとは、厚木市公式マスコットキャラクター。貯まったポイントで、プレゼントが当たる抽選に応募できる。プレゼントは体組成計など健康グッズのほか、協賛企業提供の商品や日用品など。
・あつぎ健康相談ダイヤル24
市民が24時間医療者に相談できる電話窓口。医師、保健師、管理栄養士、心理カウンセラーなどの専門家が担当しており、どのような時間帯でも相談できる。相談内容は健康に関することのほか、医療や介護、子育て、ストレス、夜間医療機関案内など多様。厚木市民もしくは厚木市内在勤であれば、年中無休、通話料無料で利用できる。
※本記事は2022年1月時点の情報を元に作成しています。