神奈川県 川崎市がこんな健康への取組みをしているって知っていますか 1.川崎市の特徴 1-1.川崎市の人口統計と高齢化率 川崎市は神奈川県の北東部に位置しており、県内では横浜に次ぐ人口規模第二の都市です。市内は7の行政区に分かれており、1972年に政令指定都市に移行しました。政令指定都市とは、地方自治法に基づき政令によって指定される、人口50万人以上の市を指します。2021年現在、20市が指定されています。
2021年7月現在の人口は約154.2万人 です(国勢調査をもとにした推計人口)。国勢調査によれば、川崎市の人口は増え続けています 。なお、日本全体のピークは2008年であるのに対し、神奈川県の人口は増加を続けています(いずれも推計人口)。
国立社会保障・人口問題研究所によれば、川崎市の人口は2040年を境に減少に転じると予想されています。2020年10月現在における65歳以上の高齢者人口は約31万人で、高齢化率は20.3% です。2020年10月の日本全体の高齢化率は28.8%であることから、川崎市の高齢化率は低い と言えます。若い働き手が集まりやすい都市部であることから、地方ほどの顕著な高齢化現象は見られません。とはいえ、この15年ほどで高齢化率は5%以上も上昇しており、高齢化の問題は他の地域同様に潜んでいます。
川崎市の人口の推移・推計及び高齢化率
*「川崎市年齢別人口-平成30年10月1日現在-」をもとに編集部で作成 1-2.川崎市の健康寿命 健康寿命とは、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間 を指します。日常生活に制限のない、自立した状態で過ごせる期間と言えます。
下記は、川崎市の平均寿命と健康寿命、およびその差です(カッコ内は全国平均)。平均寿命と健康寿命との差(不健康である期間)が長くなるほど医療費や介護費がふくらみ、公費負担が増大する要因になります。
平均寿命※2015年 健康寿命※2016年 不健康である期間 男性 81.1歳(80.8歳) 71.84歳(72.14歳) 9.26年(8.66年) 女性 87.6歳(87.0歳) 74.28歳(74.79歳) 13.32年(12.21年)
2016年現在の健康寿命は、男性71.84歳、女性74.28歳で、これは政令指定都市20市のうち男性12位、女性10位 です。全国平均と比較すると、川崎市の男女ともに健康寿命が短くて不健康である期間が長い、という結果になっています。川崎市では健康増進計画「第2期かわさき健康づくり21」が進行中で、疾病の早期発見や治療、そして疾病予防を推進し、健康寿命の改善に取り組んでいます。
2.川崎市の死因順位と割合 1981年以降、日本人の死因の第1位はがんです。 以降、生活習慣病を主因とする疾患が上位を占めています。生活習慣病とは、生活習慣(食、運動、喫煙、飲酒等)が影響する一部のがんや心臓病(心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)、糖尿病などを指します。人口動態調査によると、川崎市と日本全体の死因とその割合は下記のようになっています。
1位 2位 3位 4位 5位 川崎市※2018年 悪性新生物(がん)29.5% 心疾患15.3% 脳血管疾患7.9% 老衰7.7% 肺炎6.2% 日本全体※2019年 悪性新生物(がん)27.3% 心疾患15.0% 老衰8.8% 脳血管疾患7.7% 肺炎6.9%
川崎市の死因順位は日本全体と1位2位までは同じですが、日本全体の3位が老衰であるのに対し、川崎市は脳血管疾患が3位に位置しています。がんによる死亡割合が日本全体を上回っており、心疾患や脳血管疾患の割合もやや上回っています。 また、老衰で亡くなる割合が日本全体を下回っており、これは高齢化率が日本全体よりも低いこと(「1-1.川崎市の人口統計と高齢化率」参照)が関わっていると考えられます。
3.川崎市のがん検診の種類・費用 3-1.自治体主導の「5大がん検診」 日本では、厚生労働省の指針に基づき、自治体主導で実施されている「5大がん検診」と呼ばれるがん検診があり、全国各自治体とも受診率の向上を目指しています。 5大がん検診は、胃がん、子宮がん(子宮頸がん)、肺がん、乳がん、大腸がん の5つの検診を指します。
5大がん検診は、加入している健康保険の種類に関係なく住民票のある自治体で受診することができます。検診の種類によって対象年齢や頻度は異なりますが、受診費の一部もしくは全額が公費で負担されます。ただし、企業に勤めている方などは、企業による健康診断にがん検診が含まれていることが多いため、自治体主導のがん検診受診者は国民健康保険加入者や後期高齢者医療保険加入者を含む、「勤務先などでの受診機会のない人」が中心です。
3-2.川崎市のがん検診 川崎市が実施しているがん検診の種類と費用は下記の通りです。
川崎市のがん検診の種類・費用
種類 検査項目 対象者 受診間隔 費用 胃がん 問診、胃部X線検査(バリウム)または胃内視鏡検査(胃カメラ) ・バリウム:40歳以上・胃カメラ:50歳以上 ・バリウム:年1回・胃カメラ:2年に1回 ・バリウム:2,500円・胃カメラ:3,000円 子宮頸がん 問診、視診、子宮頸部細胞診、内診 20歳以上女性 2年に1回 1,000円 肺がん 問診、胸部X線検査、(必要な方のみ)喀痰検査 40歳以上 年1回 900円※喀痰検査は別途200円 乳がん 問診、マンモグラフィ 40歳以上女性 2年に1回 1,000円 大腸がん 問診、免疫便潜血検査 40歳以上 年1回 700円
川崎市のがん検診は、厚生労働省の指針に沿った内容となっています。
3-3.川崎市のがん検診の無料クーポン 川崎市のがん検診の無料クーポンは下記の通りです。
種類 対象者※年齢は当該年度4月1日時点で判定 無料になる検査項目 子宮頸がん 20・21歳女性 問診、視診、子宮頸部細胞診、内診 乳がん 40・41歳女性 問診、マンモグラフィ
無料クーポン券が届く前までの間に、自己負担額を支払って川崎市の子宮頸がん検診及び乳がん検診を受診された場合は、所定の手続きをとることで、支払った自己負担額が川崎市から返金されます。
また、次の方は無料でがん検診を受診することができます。
・70歳以上の方
・市・県民税非課税世帯(世帯全員が非課税)の方
・生活保護受給者の方
・中国残留邦人等支援給付受給世帯の方
4.川崎市のがん検診受診率と受診率向上のための取り組み 4-1.川崎市のがん検診受診率の現状 下記は、川崎市が実施した2015年度から2019年度の各がん検診の受診率の推移です。
川崎市のがん検診受診率推移
胃がん 子宮頸がん 肺がん 乳がん 大腸がん 2015年度 3.5% 35.9% 15.8% 35.5% 19.0% 2016年度 6.0% 14.5% 5.1% 14.3% 5.3% 2017年度 7.5% 13.7% 5.4% 12.1% 5.0% 2018年度 8.4% 13.2% 5.1% 11.3% 4.7% 2019年度 7.5% 13.6% 5.1% 12.2% 4.9%
下記は、自治体主導のがん検診における2015年度から2019年度の日本全体の受診率の推移です。
自治体主導の日本全体のがん検診受診率推移
胃がん 子宮頸がん 肺がん 乳がん 大腸がん 2015年度 6.3% 23.3% 11.2% 20.0% 13.8% 2016年度 8.6% 16.4% 7.7% 18.2% 8.8% 2017年度 8.4% 16.3% 7.4% 17.4% 8.4% 2018年度 8.1% 16.0% 7.1% 17.2% 8.1% 2019年度 7.8% 15.7% 6.8% 17.0% 7.7%
川崎市のがん検診受診率は減少傾向にあり、日本全体の数値を下回る 結果となっています。子宮頸がん・乳がん検診、大腸がん検診における2015年度から2019年度の減少率は特に大きく 、がんが死亡要因の1位ということもあり、健康寿命延伸の上でも何らかの施策が求められるところです。
2016年度から一部の受診率が顕著に増減している要因としては、地域保健・健康増進事業報告における受診率の算定法の対象者が変更されたことが考えられます。また、過去に国のがん検診推進事業として、大腸がん検診、乳がん検診では40~60歳の間で5歳おき、子宮頸がん検診では20~40歳の間で5歳おきに無料クーポンが配布されていました。しかし、2016年から大腸がん検診は事業の対象外になり、2017年から子宮頸がん検診と乳がん検診の無料クーポンは検診開始年齢(子宮頸がん検診20歳、乳がん検診40歳)のみになりました。これら無料クーポン対象外の影響が受診率低下につながっていると考えられています。このため、自治体によっては独自の無料クーポンを配布したり、キャンペーンを実施したりして、受診率向上に努めています。
4-2.川崎市のがん検診受診率向上やがん予防のための取り組み がん検診の受診率向上やがん予防に向けて、川崎市では無料クーポンを配布するなどの取り組みを実践しています。また、肝炎ウイルス検査の無料実施や、外国人市民に向けた取り組みも行っています。
・肝炎ウイルス検査の実施
肝硬変や肝臓がんの発症リスクとなる肝炎ウイルスの早期発見と早期治療を目的とした、肝炎ウイルス検査を無料で実施。対象は川崎市民で、2008年度以降川崎市で実施した肝炎ウイルス検査の受診歴のない方(年齢制限なし)。
・がん検診等の多言語化対応
日本語を話せない、あるいは外国人の市民に向けて、英語や中国語、スペイン語など6ヶ国語に対応した、多言語での検診申込書やパンフレットの配布を実施。
5.川崎市の人間ドックの費用補助・助成 川崎市では、川崎市が実施する市内中小企業向けの福利厚生サービス「かわさきハッピーライフ(川崎市勤労者福祉共済)」の加入者に対し、人間ドックや脳ドックの受診費用の一部補助を実施しています。
5-1.川崎市の人間ドック(日帰りコース)の費用助成 川崎市の人間ドック(日帰りコース)の助成内容は下記の通りです。
【人間ドックの助成対象者】
川崎市勤労者福祉共済加入者
【人間ドックの助成額】
最大5,000円
人間ドックの助成対象となるには、いくつかの条件があります。
・対象は日帰りコースのみ
・受診は指定医療機関のみ
・1人につき年度内1回まで
詳細は、「かわさきハッピーライフ」Webサイト で確認してください。
5-2.川崎市の脳ドック等の費用助成 川崎市の脳ドックやMRI・CTなどの検査は、対象医療機関にて提携料金で受診することができます。脳ドックやMRI・CTなどの助成内容は下記の通りです。
【脳ドック等の助成対象者】
川崎市勤労者福祉共済加入者
【脳ドック等の自己負担額】
19,800〜58,660円(医療機関や検査項目によって異なる)
詳細は、「かわさきハッピーライフ」Webサイト で確認してください。
6.川崎市の人間ドック機能評価認定施設 6-1.人間ドックの機能評価認定施設とは? 「機能評価認定施設」とは、日本人間ドック学会が定めている「人間ドック健診施設機能評価」という評価基準をクリアした医療施設 です。申請のあった人間ドック施設に対して日本人間ドック学会が受診者目線で審査している取り組みです。
審査項目には、「運営方針、組織の管理体制が確立しているか」や「検査の業務マニュアルは作成されているか」、「感染対策などの危機管理は徹底されているか」といった人間ドックの健診施設側の安全面に関する基準から、「受診者が快適に受診できるように配慮しているか」や「受診者のプライバシーに配慮しているか」といった受診者側に関する基準まで、多角的な評価基準があります。また、評価基準は5年ごとに改定され、更新審査が行われます。
6-2.川崎市の人間ドック機能評価認定施設 日本人間ドック学会が審査した機能評価認定施設は、全国で410以上の施設が認定されており、このうち川崎市内の人間ドック機能評価認定施設は2023年8月現在で4施設 あります。
マーソでは、機能評価認定施設から人間ドックのプランを探すことができます。くわしくはこちら をご覧ください。
7.川崎市の健康増進への取り組み 川崎市では、市民の健康増進に向けたさまざまな取り組みを実施しています。
・歯っぴーファミリー健診
妊婦とそのパートナーに提供している健診サービスで、歯科検診や健康づくりに関する指導、クリーニング体験を受けられる。費用は1人500円。
・+10(プラステン)
運動習慣がない人に向けて促進している取り組みで、1日10分の散歩やジョギング、ラジオ体操などを推奨している。自転車通勤や地域運動場でのイベント参加など、生活に運動を取り入れる習慣を呼びかけ、健康寿命の増進や、ロコモティブシンドロームの防止を推奨。
・たばこ対策
改正健康増進法の施行に伴う、受動喫煙防止に向けたガイドラインの提供。喫煙に関して提示すべき標識などの情報発信や、禁煙外来を実施している市内の医療機関の提案を実施。
※本記事は2021年6月時点の情報を元に作成しています。