大阪府 堺市がこんな健康への取組みをしているって知っていますか 1.堺市の特徴 1-1.堺市の人口統計と高齢化率 堺市は大阪府で大阪市に次ぐ第二の都市で、2006年に政令指定都市に移行しました。政令指定都市とは、地方自治法にもとづき政令によって指定される、人口50万人以上の市を指します。2021年現在、20市が指定されています。
2021年8月現在の堺市の人口は約82.2万人 で、2012年をピークに減少 に転じています(推計人口)。なお、日本全体のピークは2008年、大阪府のピークは2010年です(いずれも推計人口)。国立社会保障・人口問題研究所によれば、現状のままでは堺市の人口は2045年には約70.7万人に減少すると推計されています。2020年9月現在における65歳以上の高齢者人口は約23.5万人で、高齢化率は28.2% です。2020年10月の日本全体の高齢化率は28.8%であることから、堺市の高齢化率は全国よりも若干低い です。多くの地方自治体同様、人口が減少しているのに対して、高齢者の人口は増加しています。
堺市の人口と高齢化率の推移
*総務省統計局「国勢調査」より編集部で作成 1-2.堺市の健康寿命 健康寿命とは、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間 を指します。日常生活に制限のない、自立した状態で過ごせる期間と言えます。
下記は、堺市の平均寿命と健康寿命、およびその差です(カッコ内は全国平均)。平均寿命と健康寿命との差(不健康である期間)が長くなるほど医療費や介護費がふくらみ、公費負担が増大する要因になります。
平均寿命※2015年 健康寿命※2016年 不健康である期間 男性 80.4歳(80.8歳) 71.46歳(72.14歳) 8.94年(8.66年) 女性 86.8歳(87.0歳) 73.60歳(74.79歳) 13.20年(12.21年)
2016年現在の堺市の健康寿命は、男性71.46歳、女性73.60歳 で、これは政令指定都市20市のうち男女とも16位 です。全国平均と比較すると、堺市では男性も女性も健康寿命が短く不健康である期間が長く なっています。堺市の「健康さかい21(第2次)2019-2023計画」では、健康寿命の延伸を目標としています。
2.堺市の死因順位と割合 1981年以降、日本人の死因の第1位はがんです。 以降、生活習慣病を主因とする疾患が上位を占めています。生活習慣病とは、生活習慣(食、運動、喫煙、飲酒等)が影響する一部のがんや心臓病(心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)、糖尿病などを指します。人口動態調査によると、堺市と日本全体の死因とその割合は下記のようになっています。
1位 2位 3位 4位 5位 堺市※2019年 悪性新生物(がん)30.4% 心疾患13.9% 肺炎8.8% 脳血管疾患6.7 老衰6.6% 日本全体※2019年 悪性新生物(がん)27.3% 心疾患15.0% 老衰8.8% 脳血管疾患7.7% 肺炎6.9%
堺市の死因順位は、上位2つは日本全体と同じです。ポイント数では、1位のがんが日本全体を大きく上回って います。肺炎は、日本全体では5位なのに対し、堺市では3位となり、日本全体より1.9ポイント高い数値になっています。堺市ではがんと肺炎による死の割合が、日本全体より高いと言えます。
3.堺市のがん検診の種類・費用 3-1.自治体主導の「5大がん検診」 日本では、厚生労働省の指針に基づき、自治体主導で実施されている「5大がん検診」と呼ばれるがん検診があり、全国各自治体とも受診率の向上を目指しています。 5大がん検診は、胃がん、子宮がん(子宮頸がん)、肺がん、乳がん、大腸がん の5つの検診を指します。
5大がん検診は、加入している健康保険の種類に関係なく住民票のある自治体で受診することができます。検診の種類によって対象年齢や頻度は異なりますが、受診費の一部もしくは全額が公費で負担されます。ただし、企業に勤めている方などは、企業による健康診断にがん検診が含まれていることが多いため、自治体主導のがん検診受診者は国民健康保険加入者や後期高齢者医療保険加入者を含む、「勤務先などでの受診機会のない人」が中心です。
3-2.堺市のがん検診 堺市が実施しているがん検診の種類と費用は下記の通りです。太字は、堺市独自の取り組みです。
堺市のがん検診の種類・費用
種類 検査項目 対象者 受診間隔 費用 胃がん 問診、胃部X線検査(バリウム)または胃内視鏡検査(胃カメラ) 50歳以上の偶数年齢 2年に1回 2022年3月31日まで無料 子宮頸がん 問診、視診、子宮頸部細胞診、内診、必要に応じて子宮体部細胞診 20歳以上の偶数年齢女性 2年に1回 2022年3月31日まで無料 肺がん 問診、胸部X線検査、喀痰検査※喀痰検査は50歳以上で喫煙指数600以上の希望者 40歳以上 年1回 2022年3月31日まで無料 乳がん 問診、視触診、マンモグラフィ 40歳以上の偶数年齢女性 2年に1回 2022年3月31日まで無料 大腸がん 問診、便潜血検査 40歳以上 年1回 2022年3月31日まで無料 胃がんリスク 問診、血液検査(ヘリコバクター・ピロリ菌抗体検査、ペプシノゲン検査) 35歳~49歳 35~49歳の間に1回 2022年3月31日まで無料 前立腺がん 問診、血液検査(PSA値) 50~69歳の偶数年齢男性 2年に1回 2022年3月31日まで無料
堺市のがん検診は、基本的には厚生労働省の指針に沿っていますが、指針にはない前立腺がん検診を運用 しているのが特長です。また、堺市民はすべてのがん検診を、2022年3月31日まで、自己負担なしで受診できます。
3-3.堺市のがん検診の無料クーポン 堺市では、2018年度に政令指定都市で初めて開始したがん検診の無償期間 を延長し、2020年4月1日から2022年の3月31日までを、がん検診の促進強化期間として再設定 しました。この期間は、胃がん検診、子宮がん検診、肺がん検診、乳がん検診、大腸がん検診、前立腺がん検査を無料で受診できます。受診対象者は、「3-2.堺市のがん検診」をご確認ください。
4.堺市のがん検診受診率と受診率向上のための取り組み 4-1.堺市のがん検診受診率の現状 下記は、堺市が実施した2015年度から2019年度の各がん検診の受診率の推移です。
堺市のがん検診受診率推移
胃がん 子宮頸がん 肺がん 乳がん 大腸がん 2015年度 4.3% 33.2% 4.5% 28.5% 15.8% 2016年度 2.9% 16.6% 2.1% 13.2% 5.1% 2017年度 3.1% 15.5% 2.6% 14.5% 4.8% 2018年度 3.9% 16.3% 3.8% 13.9% 5.5% 2019年度 5.2% 18.6% 4.5% 16.2% 6.1%
下記は、自治体主導のがん検診における2015年度から2019年度の日本全体の受診率の推移です。
自治体主導の日本全体のがん検診受診率推移
胃がん 子宮頸がん 肺がん 乳がん 大腸がん 2015年度 6.3% 23.3% 11.2% 20.0% 13.8% 2016年度 8.6% 16.4% 7.7% 18.2% 8.8% 2017年度 8.4% 16.3% 7.4% 17.4% 8.4% 2018年度 8.1% 16.0% 7.1% 17.2% 8.1% 2019年度 7.8% 15.7% 6.8% 17.0% 7.7%
堺市の2019年度の各種がん検診受診率を同年度の日本全体の数値と比較すると、子宮頸がん以外の検診は日本全体を下回っていました。しかしながら、2018年度の数値と比較すると、全検診で受診率は軒並み上昇 していました。これは日本全体においてがん検診の受診率が年々低下しているなかで、堺市が2018年度から行っているがん検診無償化の取り組みが奏功した結果 と言えそうです。
2016年度から一部の受診率が顕著に低下している要因としては、地域保健・健康増進事業報告における受診率の算定法の対象者が変更されたことが考えられます。また、過去に国のがん検診推進事業として、大腸がん検診、乳がん検診では40~60歳の間で5歳おき、子宮頸がん検診では20~40歳の間で5歳おきに無料クーポンが配布されていました。しかし、2016年から大腸がん検診は事業の対象外になり、2017年から子宮頸がん検診と乳がん検診の無料クーポンは検診開始年齢(子宮頸がん検診20歳、乳がん検診40歳)のみになりました。これら無料クーポン対象外の影響が受診率低下につながっていると考えられています。このため、自治体によっては独自の無料クーポンを配布したり、キャンペーンを実施したりして、受診率向上に努めています。
4-2.堺市のがん検診受診率向上やがん予防のための取り組み がん検診の受診率向上やがん予防に向けて、堺市では次のような取り組みを行っています。特に大きな取り組みには、がん検診の受診促進強化期間として主要ながん検診をすべて無料にしたことがあります。
・がん検診無償化
がん検診の受診率向上を目指し、がん検診の受診促進強化期間(2020年4月1日~2022年の3月31日)を設定。胃がん検診、子宮顎がん検診、肺がん検診、乳がん検診、大腸がん検診、前立腺がん検査を無料で受診できる。
・胃がんリスク検査(ピロリ菌抗体検査・ペプシノゲン検査)の実施
血液検査を行い、胃がんにかかるリスクを判定するため、ヘリコバクター・ピロリ菌の有無を調べる「ピロリ菌抗体検査」と、胃の粘膜の状態を調べる「ペプシノゲン検査」を実施。胃がん罹患者のほとんどはヘリコバクター・ピロリ菌の感染が原因とされる。対象は35~49歳の市民で、このうち一度だけ受診可。他のがん検診同様、2022年の3月31日まで無料。
・肝炎ウイルス検査(B型・C型)
過去に肝炎ウイルス検査を受診したことのない、20歳以上40歳未満の市民もしくは、40歳以上かつ職場検診等で肝炎ウイルス検査を受診する機会がない市民を対象にB型・C型肝炎ウイルスの検査を無料で実施している。
・がん検診総合相談ポータルサイト
パソコンやスマートフォンから、がん検診を受診できる医療機関の検索や胃がん・大腸がん集団検診の予約申込を行える。
5.堺市の人間ドックの費用補助・助成 堺市では、堺市国民健康保険被保険者および大阪府後期高齢者医療広域連合の被保険者を対象に、人間ドックの費用の一部が助成 されます。助成内容は下記の通りです。
【人間ドックの助成対象者】
・堺市国民健康保険被保険者(30歳から74歳まで)
・大阪府後期高齢者医療広域連合の被保険者
【人間ドックの自己負担額】
人間ドック項目 料金(円) 自己負担額(円)※3割 男性 基準検査(国民健康保険被保険者) 40,700 12,210 女性 基準検査(国民健康保険被保険者) 41,700 12,510 女性 基準検査+乳房検査(国民健康保険被保険者) 43,900 13,170 人間ドック(大阪府後期高齢者医療広域連合の被保険者) - 上限26,000円
国民健康保険被保険者への助成は受診費の7割となり、堺市では、これは政令都市のうちトップクラスの助成 であるとしています。
人間ドックの助成を受けるにはいくつか条件があり、国民健康保険被保険者の場合、受診は契約医療施設のみです。大阪府後期高齢者医療広域連合の被保険者の場合は、自己負担で人間ドックを受診し、受診後に助成の申請を行います。詳細は堺市サイトで確認してください。
6.堺市の人間ドック機能評価認定施設 6-1.人間ドックの機能評価認定施設とは? 「機能評価認定施設」とは、日本人間ドック学会が定めている「人間ドック健診施設機能評価」という評価基準をクリアした医療施設 です。申請のあった人間ドック施設に対して日本人間ドック学会が受診者目線で審査している取り組みです。
審査項目には、「運営方針、組織の管理体制が確立しているか」や「検査の業務マニュアルは作成されているか」、「感染対策などの危機管理は徹底されているか」といった人間ドックの健診施設側の安全面に関する基準から、「受診者が快適に受診できるように配慮しているか」や「受診者のプライバシーに配慮しているか」といった受診者側に関する基準まで、多角的な評価基準があります。また、評価基準は5年ごとに改定され、更新審査が行われます。
6-2.堺市の機能評価認定施設 日本人間ドック学会が審査した機能評価認定施設は、全国で410以上の施設が認定されており、このうち堺市内の人間ドック機能評価認定施設は2023年8月現在で2施設 あります。
マーソでは、機能評価認定施設から人間ドックのプランを探すことができます。くわしくはこちら をご覧ください。
7.堺市の健康増進への取り組み 堺市は、健康寿命の延伸とQOL向上を目指し、「健康さかい21(第2次)2019-2023計画」を策定しており、これを基盤にさまざまな市民の健康づくりの取り組みを行っています。
・+筋肉さかい体操
筋肉をつけることで生活習慣病や生活機能低下のリスクを軽減し、市民の健康増進を図ることを目的に、近畿大学・谷本准教授監修のもと、「ハニワ部長・CHO(Chief Haniwa Officer)」と一緒に体操に取り組むことができるYouTube動画を公開。
・禁煙取組優良施設ステッカー
屋内禁煙に取り組む飲食店を禁煙取組優良施設とし、オリジナル禁煙標識(禁煙取組優良施設ステッカー)を交付。
※本記事は2021年9月時点の情報を元に作成しています。