埼玉県がこんな健康への取組みをしているって知っていますか 1.埼玉県の特徴 1-1.埼玉県の人口統計と高齢化率 埼玉県は関東地方に位置する県で、県庁所在地はさいたま市です。東京都と隣接する立地上、都心のベッドタウンとして機能する一面に加え、小江戸川越、ライン下りが楽しめる秩父や長瀞といった観光地も有しています。
2021年9月1日現在の埼玉県の人口は約734.4万人 (国勢調査をもとにした推計人口)です。埼玉県の人口は、47都道府県のうち5位(2021年1月1日現在)です。2020年の国勢調査(速報値)によると、埼玉県の人口は増加傾向ですが、増加率の鈍化から過渡期の可能性 が考えられます。なお、日本全体のピークは2008年です(推計人口)。国立社会保障・人口問題研究所の2018年時点の推計によれば、埼玉県は2020年に人口ピークを迎えたのち減少傾向に転じて、2045年には約652.5万人に減少すると予想されています。
2021年1月1日現在における埼玉県の65歳以上の高齢者人口は約196.0万人で、高齢化率は26.5% です。2020年10月の日本全体の高齢化率は28.8%であることから、埼玉県の高齢化率は全国平均を下回っている と言えます。しかし、多くの地方自治体と同様に高齢者の人口は増加しており高齢化が進んでいくことが予想されます。
埼玉県の人口と高齢化率の推移
*総務省統計局「国勢調査」より編集部で作成 1-2.埼玉県の健康寿命 健康寿命とは、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間 を指します。日常生活に制限のない、自立した状態で過ごせる期間と言えます。
下記は、2016年における埼玉県の健康寿命と「日常生活に制限のある期間の平均」です(カッコ内は全国平均)。日常生活に制限のある期間が長くなるほど医療費や介護費がふくらみ、公費負担が増大する要因になります。
健康寿命※2016年 日常生活に制限のある期間の平均※2016年 【参考】平均寿命※2015年 男性 73.10歳(72.14歳) 8.03年(8.84年) 80.8歳(80.8歳) 女性 74.67歳(74.79歳) 12.28年(12.34年) 86.7歳(87.0歳)
2016年現在の埼玉県の健康寿命は、男性73.10歳、女性74.67歳で、これは47都道府県のうち男性2位、女性29位 です。全国平均と比較すると、埼玉県は男性の健康寿命は全国平均よりも0.96歳上回っている一方で、女性は全国平均をわずかに下回っています。日常生活に制限がある期間は、男女ともに全国平均より短い結果になっています。
埼玉県では上記の健康寿命とは別に、65歳に達した県民が健康で自立した生活を送ることができる期間(介護保険制度の「要介護2以上」になるまでの期間)を「健康寿命」として独自に算出しています。2017〜2019年の健康寿命は下記の通りです。
65歳時の健康寿命(埼玉県独自)
2017年 2018年 2019年 目標値:2021年 男性 17.57年 17.64年 17.73年 17.72年 女性 20.36年 20.46年 20.58年 20.39年
健康寿命の推移を見ると、男女とも年々上昇傾向 です。埼玉県では「埼玉県5か年計画」をもとに、健康寿命の延命をはじめとした県民の健康づくりに取り組んでいます。2022年度からの次期5か年計画の素案では、2026年の健康寿命の目標値として男性18.50年、女性21.28年を設定しています。
2.埼玉県の死因順位と割合 1981年以降、日本人の死因の第1位はがんです。 以降、生活習慣病を主因とする疾患が上位を占めています。生活習慣病とは、生活習慣(食、運動、喫煙、飲酒等)が影響する一部のがんや心臓病(心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)、糖尿病などを指します。人口動態調査によると、埼玉県と日本全体の死因とその割合は下記のようになっています。
1位 2位 3位 4位 5位 埼玉県※2019年 悪性新生物(がん)28.5% 心疾患16.0% 肺炎8.2% 脳血管疾患7.1% 老衰7.0% 日本全体※2019年 悪性新生物(がん)27.3% 心疾患15.0% 老衰8.8% 脳血管疾患7.7% 肺炎6.9%
埼玉県のおもな死因は日本全体と同じです。それぞれの割合を比較すると、埼玉県ではがん、心疾患、肺炎で亡くなる割合が日本全体を1.0ポイント以上上回って おり、老衰は1.8ポイント下回って います。死因の第1位は日本全体と同じく悪性新生物(がん)であり、全死因の約3割を占めています。日頃からがん予防を意識することが重要だと言えます。
3.埼玉県のがん検診の種類・費用 3-1.自治体主導の「5大がん検診」 日本では、厚生労働省の指針に基づき、自治体主導で実施されている「5大がん検診」と呼ばれるがん検診があり、全国各自治体とも受診率の向上を目指しています。 5大がん検診は、胃がん、子宮がん(子宮頸がん)、肺がん、乳がん、大腸がん の5つの検診を指します。
5大がん検診は、加入している健康保険の種類に関係なく住民票のある自治体で受診することができます。検診の種類によって対象年齢や頻度は異なりますが、受診費の一部もしくは全額が公費で負担されます。ただし、企業に勤めている方などは、企業による健康診断にがん検診が含まれていることが多いため、自治体主導のがん検診受診者は国民健康保険加入者や後期高齢者医療保険加入者を含む、「勤務先などでの受診機会のない人」が中心です。
厚生労働省が示している指針は下記の通りです。全国各市区町村に対し、科学的根拠に基づいた効果が認められるがん検診を推奨しています。
種類 検査項目 対象者 受診間隔 胃がん検診 問診、胃部X線検査(バリウム)または胃内視鏡検査(胃カメラ)のいずれか ・バリウム検査:40歳以上・胃カメラ:50歳以上 ・バリウム検査:年1回・胃カメラ:2年に1回 子宮頸がん検診 問診、視診、子宮頸部細胞診および内診 20歳以上女性 2年に1回 肺がん検診 問診、胸部X線検査および喀痰検査 40歳以上 年1回 乳がん検診 問診およびマンモグラフィ 40歳以上女性 2年に1回 大腸がん検診 問診および便潜血検査 40歳以上 年1回
これを受け、全国各市区町村は、基本的に上記に沿ってがん検診を実施しています。さらに、前立腺がん検診や子宮体がん検診などの実施、年齢の引き下げ、受診費の無料化などに取り組んでいる市区町村もあります。
3-2.埼玉県のがん検診の無料クーポン 市区町村によっては、がん検診の無料クーポンが配布されている場合があります。埼玉県の県庁所在地であるさいたま市では無料クーポンの配布はありませんが、以下の対象者はがん検診の費用が無料になります。
種類 対象者※年齢は当該年度4月1日時点で判定 無料になる検査項目 胃がん 40歳 問診、胃部X線検査(バリウム)または胃内視鏡検査(胃カメラ)のいずれか 子宮がん 20歳女性 問診、視診、子宮頸部細胞診および内診(必要に応じて子宮体部細胞診) 肺がん 40歳 問診、胸部X線直接撮影(レントゲン検査)(必要に応じて喀痰検査) 乳がん 40歳女性 問診、視触診、マンモグラフィ 大腸がん 40歳 問診および便潜血検査(2日法)
また、次の方は無料でがん検診を受診できます。
・70歳以上の方(肺がん・結核検診は65歳以上の方)
・65歳以上70歳未満で後期高齢者医療保険証を持っている方
・生活保護受給世帯の方
・市民税非課税世帯の方(非課税世帯とは、世帯全員が非課税である世帯をいいます。)
・中国残留邦人など支援給付受給者
がん検診の詳細は各市区町村ページをご参照ください。
・埼玉県さいたま市の健康への取り組みを見る(医療施設一覧ページへ)
・埼玉県川口市の健康への取り組みを見る(医療施設一覧ページへ)
・埼玉県川越市の健康への取り組みを見る(医療施設一覧ページへ)
・埼玉県所沢市の健康への取り組みを見る(医療施設一覧ページへ)
・埼玉県草加市の健康への取り組みを見る(医療施設一覧ページへ)
・埼玉県春日部市の健康への取り組みを見る(医療施設一覧ページへ)
・埼玉県上尾市の健康への取り組みを見る(医療施設一覧ページへ)
・埼玉県熊谷市の健康への取り組みを見る(医療施設一覧ページへ)
4.埼玉県のがん検診受診率と受診率向上のための取り組み 4-1.埼玉県のがん検診受診率の現状 下記は、2015年度から2019年度の埼玉県全体の受診率の推移です。
埼玉県のがん検診受診率推移
胃がん 子宮頸がん 肺がん 乳がん 大腸がん 2015年度 4.1% 20.2% 10.1% 22.1% 13.9% 2016年度 6.9% 14.9% 7.1% 16.6% 8.8% 2017年度 7.6% 14.5% 6.7% 15.8% 8.0% 2018年度 7.4% 14.0% 6.5% 15.1% 7.8% 2019年度 7.5% 14.0% 6.2% 15.2% 7.4%
下記は、自治体主導のがん検診における2015年度から2019年度の日本全体の受診率の推移です。
自治体主導の日本全体のがん検診受診率推移
胃がん 子宮頸がん 肺がん 乳がん 大腸がん 2015年度 6.3% 23.3% 11.2% 20.0% 13.8% 2016年度 8.6% 16.4% 7.7% 18.2% 8.8% 2017年度 8.4% 16.3% 7.4% 17.4% 8.4% 2018年度 8.1% 16.0% 7.1% 17.2% 8.1% 2019年度 7.8% 15.7% 6.8% 17.0% 7.7%
埼玉県のがん検診受診率は、2015年度を除き全検診において日本全体を下回って います。日本全体の受診率との乖離が最も少ないのは大腸がん検診ですが、2017年度以降は日本全体の受診率をわずかに下回っています。胃がんを除くがん検診の受診率は年々低下傾向にあり、これは日本全体も同様です。
2016年度から一部の受診率が顕著に低下している要因としては、地域保健・健康増進事業報告における受診率の算定法の対象者が変更されたことが考えられます。また、過去に国のがん検診推進事業として、大腸がん検診、乳がん検診では40~60歳の間で5歳おき、子宮頸がん検診では20~40歳の間で5歳おきに無料クーポンが配布されていました。しかし、2016年から大腸がん検診は事業の対象外になり、2017年から子宮頸がん検診と乳がん検診の無料クーポンは検診開始年齢(子宮頸がん検診20歳、乳がん検診40歳)のみになりました。これら無料クーポン対象外の影響が受診率低下につながっていると考えられています。このため、自治体によっては独自の無料クーポンを配布したり、キャンペーンを実施したりして、受診率向上に努めています。
4-2.埼玉県のがん検診受診率向上やがん予防のための取り組み がん検診の受診率向上やがん予防に向けて、埼玉県では「埼玉県がん対策推進計画」に基づいて次のような取り組みを行っています。
・企業・団体と連携したがん検診の受診勧奨
2009年から、県内の企業や団体とがん啓発・受診率向上に関する包括協定を提携。各企業・団体の窓口で検診受診を呼びかける啓発活動や、市民セミナーの開催、従業員の検診率向上に向けた啓発活動などを通じてがん検診の受診を推進している。
・埼玉県立久喜図書館におけるがん情報コーナーの設置
がん情報コーナーを設置し、がんに関するさまざまな情報を提供。毎年がん患者会によるパネル展示が行われるほか、ソーシャルワーカーによるがんに関する無料個別相談を実施している(予約制)。
・小中高生を対象とした「がん教育出前講座」を開催
県内の小中高生を対象に、医師によるがんに関する出張講座を開催。若いうちからがんの正しい知識や検診の重要性、命について学ぶことでがんへの関心を高め、予防行動や将来のがん検診の受診を促すことを目的としている。
・利便性を考慮した受診機会の提供
地域医師会や検診機関などと協力し、がん検診の土日実施、早朝・夜間実施、近隣市町村での受診機会の提供など受診者にとって利便性を高めた受診機会の提供を進めている。川越市を例に挙げると、一部医療施設にて土曜検診、日曜検診、平日18時以降の検診を受付ている。
5.埼玉県の人間ドックの費用補助・助成 埼玉県では各市区町村によって人間ドックの費用を補助している場合があります。くわしくは各市区町村のWebサイトを参考にしてください。例として、さいたま市、所沢市、越谷市の人間ドック費用補助を紹介します。
5-1.埼玉県さいたま市の人間ドックの費用助成 ●国民健康保険人間ドック
【対象者】下記の3つの条件をすべて満たす方が対象。
・40歳から75歳の誕生日前日までの方(さいたま市国民健康保険に加入している年度末時点での年齢)
・納期の到来しているさいたま市国民健康保険税を完納している世帯に属する方
・同一年度内にさいたま市が実施する特定健康診査を受診していない方
【助成額】11,000円(自己負担額:33,462円)
【助成条件】
・受診は契約医療施設のみ
・自治体が実施している特定健康診査と併用することは不可(国民健康保険人間ドックに特定健康診査の検査項目が含まれているため)
・利用は年度内1回まで
5-2.埼玉県所沢市の人間ドックの費用助成 ●人間ドック日帰りコース
【対象者】所沢市の国民健康保険に加入している35~74歳の方
【助成額】16,500円(自己負担額:23,100円)
【助成条件】
・受診は所沢市市民医療センターのみ
・受診日において保険税を滞納していないこと
・助成は同一年度内で人間ドック、特定健診、30歳代健診のいずれか1回(併用は不可)
●生活習慣病コース
【対象者】所沢市の国民健康保険に加入している35~74歳の方
【助成額】15,000円(自己負担額:9,200円)
【助成条件】人間ドック日帰りコースと同様
5-3.埼玉県越谷市の人間ドックの費用助成 ●人間ドック
【対象者】越谷市国民健康保険に加入している40歳以上の方
【助成額】上限10,000円
【助成条件】
・利用は年度内1回まで
・国民健康保険税の滞納がないこと
・人間ドックの検査項目に特定健診の基本的な健診項目を含むこと
・人間ドックの助成を受ける年度に特定健康診査・後期高齢者健康診査を受診していないこと
6.埼玉県の人間ドック機能評価認定施設 6-1.機能評価認定施設とは? 「機能評価認定施設」とは、日本人間ドック学会が定めている「人間ドック健診施設機能評価」という評価基準をクリアした医療施設 です。申請のあった人間ドック施設に対して日本人間ドック学会が受診者目線で審査している取り組みです。
審査項目には、「運営方針、組織の管理体制が確立しているか」や「検査の業務マニュアルは作成されているか」、「感染対策などの危機管理は徹底されているか」といった施設側の安全面に関する基準から、「受診者が快適に受診できるように配慮しているか」や「受診者のプライバシーに配慮しているか」といった受診者側に関する基準まで、多角的な評価基準があります。また、評価基準は5年ごとに改定され、更新審査が行われます。
6-2.埼玉県の機能評価認定施設 全国で390以上の施設が認定されており、このうち埼玉県内の機能評価認定施設は2021年10月現在で13施設 あります。
マーソでは、機能評価認定施設から人間ドックのプランを探すことができます。くわしくはこちら をご覧ください。
7.埼玉県の健康増進への取り組み 埼玉県では、健康長寿社会の実現に向けて「健康長寿埼玉プロジェクト」を推進しています。忙しい方も健康づくりに参加しやすいポイント制度や、企業対抗で取り組める健康イベントなど、本プロジェクトのユニークな取り組みを紹介します。
・健康ポイント事業「埼玉県コバトン健康マイレージ」の実施
スマホアプリなどを活用したポイント事業。ウォーキングや特定健診、人間ドック(40歳未満の方は健康診断も可)の受診などでポイントが付与される。特定のポイント数を集めると、抽選で特産物や企業協賛による賞品などが当たる。
・企業対抗コバトンウォーキングチャレンジ
上記の「埼玉県コバトン健康マイレージ」を活用し、従業員の健康増進および健康経営の推進に役立てることを目的とした企業対抗戦イベント。開催期間中のひとり1日あたりの平均歩数を出し、チーム全体の平均歩数を競う。上位チームにはクオカードなどがおくられるほか、参加者全員にコバトン健康マイレージ5,000ポイントが付与される。
・働き盛り世代の健康セミナーの動画を配信
企業の従業員など、働き盛り世代の健康づくりに役立つ専門家の講演や県内企業の取り組みを収録した動画を県公式Youtubeチャンネルに掲載。第1弾では働き盛り世代の健康づくりについて、第2弾では企業における受動喫煙防止対策についての研修動画が配信されている。
※本記事は2021年10月時点の情報を元に作成しています。