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2017.5.15

“いい薬局”とは? 知っておきたい、薬局によって違う薬の値段


風邪をひいて病院に行った時、処方箋をもらったけれど、いつもの薬局がとても混んでいたので、別の薬局に行きました。家に帰って薬局の明細書をよく見ると、ほとんど同じ薬のはずなのにいつも行っている薬局よりも高い。薬局によって薬の値段が違うなんてことがあるのでしょうか? そもそも明細書に書いてある「調剤技術料」や「薬学管理料」とはいったい何でしょうか?

「同じ薬を同じ量もらっても、薬局で支払う金額が違うことがあります。しかしそれは薬ではなく、“技術料”や“薬学管理料”が薬局によって違う場合があるからなのです」。こう教えてくれたのは、医薬ジャーナリストで、薬局薬剤師の教育研修もしている藤田道男さん。

今、日本にある調剤薬局は、約5万7000店。コンビニよりも多く、どこに行けばいいのか迷うほど。最後にもらう明細書から、薬局を選ぶヒントが見つかるかもしれませよ。

薬局でかかる4つのお金

薬局でかかるお金は、「調剤技術料」「薬学管理料」「薬剤料」「特定保険医療材料料」の4つ。それに「加算」という項目が加わることもある。それぞれの項目に「点数」が書かれていて、1点は10円に当たる。社会保険や国民健康保険に入っている人なら、「合計点数×10円」の3割を窓口で支払う。

4つのうち、「薬剤料」は薬そのものの値段。日本では薬の値段は国によって決められているので、どの薬局でも薬剤料は変わらない。「特定保険医療材料料」も、糖尿病で使うインスリンの針など特別な場合のみに使う材料の値段で、これも薬局による差はない。

「薬学管理料」は値段が変わることもあるけれど、その理由のほとんどは患者さん側にある。薬学管理料の中で大きな割合を占めるのは、「薬剤服用歴管理指導料」。患者さんがお薬手帳を持っていれば38点、手帳がないと50点。薬局では、病院のカルテに当たるような、患者さん一人一人の記録(薬歴)をつけている。患者さんに薬を出すときは、記録を見ながら薬の飲み方や注意点を伝えているので、指導料としてこの料金がかかる。

ごくまれに薬剤服用歴管理指導料がない薬局もある。それは薬歴をつけていないということ。カルテなしで診療するようなもので、副作用などの問題が起こる可能性が高くなる。「多少おカネがかかっても、きちんと薬歴を管理している薬局を勧めます」と藤田さんはアドバイスしている。

薬局ごとに違う“施設維持費”

残る一つ、「調剤技術料」は、薬局によって値段が変わる。その中の調剤基本料は、入場料や初診料・再診料に当たるもの。「業界では、施設を維持するための費用、と考えられています」(藤田さん)。

調剤基本料は、薬局の規模や業務内容によって変わり、どの病院の処方箋でも受け付けている薬局なら41点、特定の病院の処方箋だけ扱うなら25点、大手グループの薬局なら20点。大手グループで安くなっているのは、規模が大きいほど事務手続きや在庫管理などのコストが安くなるので、その差を小さくするためだという。

患者さんのプライバシーを守るための個室があったり、8時間以上、土日どちらか開局、在宅業務を実施している薬局などでは「基準調剤加算」として32点が追加される。ジェネリック医薬品を使えば、18点または22点が「後発医薬品調剤体制加算」としてプラスになる。

150円以上の差が出ることも

こうして明細書をよく見ると、調剤基本料の違い、加算のありなしだけでも、薬局によって50点以上、金額にしてみると、3割負担で150円以上の差が出てくる場合もあることになる。

薬が同じなら、安い薬局のほうがお得なのだろうか? でも「一般的な買い物とは違い、薬局に関しては値段だけで選ぶのはお勧めしません」と藤田さんはアドバイスする。

いちばんいい薬の飲み方は、“最小限の薬で最大限の効果が得られる”こと。薬が少ないほど安全だけれど、少なすぎれば必要な効果が出ない。薬の知識だけでなく、患者さんの体質やライフスタイルを把握して、総合的に判断してくれるのが望ましい。

「“値段が高い薬局”ほど薬剤師のレベルが高く、薬歴などもきちんと管理されている場合が多いので、より安心して薬を飲むことができると言えます」(藤田さん)。

通いやすさも考えて

藤田さんは、薬局を選ぶ基準として、通いやすさも挙げてくれた。「自宅や職場の近くだと、小さなことでも相談しやすいですよね」(藤田さん)。

薬を飲むときには、体質や食の好み、ライフスタイル、仕事内容などがかかわってくることもある。だから何でも相談できることはとても大切だという。たとえば患者さんが仕事で運転をすることを薬剤師が知っていれば、眠くなる薬を避けることができる。

「最も重要なのは、自分が納得できる薬局を選ぶこと。治療や薬のことをきちんと理解しなければ、途中で飲むのをやめたりして病気が治りきらず、もう一度病院に行き直さなければならないこともあります」と藤田さん。

多少高くても“いい薬局”で丁寧に相談に乗ってもらうことが、結局は一番“安く済む”ことになるのかもしれない。

文/関口 瑞季
記事/ハレタル
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Colorda編集部