2019.6.10

人間ドックの電解質検査とは? なにがわかる?

ずばり「電解質の濃度を調べる検査」


人間ドックの電解質検査とは、血液中の電解質の濃度を調べる検査だ。採血による血液検査で行われる。

人間の身体の60%は水分で構成されており、血液や体液として存在している。この体内の水分にはさまざまな物質が溶けこんでおり、水に溶けて電子を帯びた原子であるイオンとなっているものを電解質と呼ぶ。

体液中に存在する電解質は、体内の浸透圧の調節や水分の保持、筋肉や神経の働きを助けるなど、重要な役割を担っている。なんらかの理由で身体の電解質のバランスが崩れると、体調不良やのどの渇き、吐き気やけいれんなどさまざまな症状が起こる。また、心臓や腎臓や肝臓などの病気が隠れている場合もある。

電解質検査の項目と基準値の見方

電解質検査でチェックするイオンは多数ある。ここでは通常の電解質検査で行われる項目について説明する。

ナトリウム(Na)

身体の水分の量を調節する成分で、基準値は137~147 mEq/L(ミリイクイバレント)。基準値より低値のときに考えられる病気は、心不全、急性腎炎、慢性腎不全、糖尿病性アシドーシス(高血糖によって意識がなくなる状態)など、基準値より高値のときに考えられる病気は、脱水症、糖尿病性昏睡、尿崩症などが挙げられる。

カリウム(K)

心臓の筋肉の働きや神経の興奮にかかわる重要な成分で、基準値は3.5~5.0 mEq/L。基準値より低値のときに考えられる病気は、クッシング病(副腎皮質ホルモンが過剰に分泌されることで起こる病気)、アルドステロン症(アルドステロンというホルモンが過剰に分泌されることで起こる病気)、呼吸不全症候群、下痢や嘔吐などであり、基準値より高値のときに考えられる病気は腎不全などが挙げられる。

クロール(Cl)

身体の浸透圧やpHの調節にかかわりのある成分で、基準値は98~108 mEq/L。基準値より低値のときに考えられる病気は、アジソン病(副腎皮質の機能低下によって起こる病気)、慢性腎炎、肺気腫など、基準値より高値のときに考えられる病気は脱水症、過換気症候群、腎不全などが挙げられる。

カルシウム(Ca)

骨や歯を構成するだけでなく、細胞間の情報伝達や血液を固める働きのある成分で、基準値は8.4~10.4 mg/dL。基準値より低値のときに考えられる病気は、副甲状腺機能低下症、クッシング病、腎不全など、基準値より高値のときに考えられる病気は副甲状腺機能亢進症(ふくこうじょうせんきのうこうしんしょう)、多発性骨髄腫、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍などが挙げられる。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

Colorda編集部