2016.9.8
白血病

白血病の検査方法と治療法

自覚症状が乏しい、血液のがん

Leukemia cells in peripheral blood smear日本人の2人に1人がかかり、3人に1人が死亡すると言われているがんは、医療技術の進化により早期発見が可能になってきている。がんの検査方法と治療法シリーズ第8回は、血液の成分に異常が現れる疾患で、一般的には「血液のがん」と呼ばれている白血病について紹介する。

白血病は骨髄で血液がつくられる過程で、白血球や赤血球、血小板といった血液細胞ががん化してしまう病気だ。骨髄内でがん細胞が増え、占拠するため、正常な血液が減少していく。がん化した細胞のタイプから、「骨髄性」と「リンパ性」に分けられ、進行の仕方から「急性」と「慢性」に分かれる。

白血病の腫瘍細胞は、血液中に含まれる血球なので、自覚症状が乏しいがんと言える。おもな症状は、貧血や免疫力の低下のほか、進行すると脾臓の肥大といった症状が現れることがある。そんな白血病の検査法や治療法について解説する。

血液検査と骨髄検査の違いとは?

白血病は、造血幹細胞が腫瘍化する疾患であるため、血液中には異常な血球が出現する。あるいは、血球の数が正常値より大きく減少したり、増加したりする。そこで行われるのが血液検査と骨髄検査だ。まず、血液検査を行い、赤血球や白血球、血小板などの血球数や白血病細胞の有無を調べる。白血病が疑われる場合、骨髄検査を行う。骨髄検査とは、腰か胸の骨に針を刺して骨髄液を採取し、検査するもの。血液細胞の数や形の変化を見たり、白血病細胞の数やタイプを確認したり、染色体異常の有無を調べる。
では、両検査の特徴を比較してみよう。

費用 時間 病型分類
血液検査 安い 短い 不可
骨髄検査 高い 長い

白血病は、急性と慢性とに大きく分けられ、さらに骨髄性かリンパ性かでも、その性質が大きく異なるため、白血病によって増減する血球も病態に応じて変動する。まず血液検査では、どの血球の数に異常が現れているかについて調べることが可能だ。

一方、骨髄検査では、血球の数だけでなく、腫瘍細胞の形も見分けることができ、病型分類が可能となっている。ただ、骨髄検査はより詳しい情報が得られる分、患者さの負担も幾分大きくなる。

基本的に血液検査は、静脈から血液を採取するだけの為、検査時間も短い。検査費用も、骨髄検査と比べると安い。骨髄検査はおもに胸骨や腸骨といった太い骨に注射針を刺し、骨髄液を採取するため、比較的痛みや不快感が大きく、負担がかかるといえる。

白血病の治療法

白血病ではまず、寛解導入療法が行われる。寛解導入療法とは、血液や骨髄に存在する腫瘍細胞を薬剤によって「減少」させる治療法である。わざわざ減少という言葉を用いているのは、完全に消滅させることが非常に困難であるためだ。そこで白血病の治療においては、寛解(検査結果にがんの存在が確認できなくなった状態)を目標に置き、治療が進められる。

寛解という状態が達成されたら、次は失われた血球を補填するために、合併症がない、60歳以下の造血幹細胞移植が行われることがある(それ以上の年齢の患者にもミニ移植という方法で造血幹細胞移植が行われることがある)。それに加えて、化学療法や放射線療法を組み合わせながら、白血病の再発を防止していくこととなる。ともあれ、白血病の治療は、血液検査や骨髄検査を受けて、病態を知ることから始まるといえる。過度の貧血や出血傾向が目立つ場合は、血液検査を受けることをおすすめする。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部