2016.9.5

Vol.1 更年期障害とはなんなのか? 【更年期障害ノート】

更年期障害の基本のキ

sad woman sitting on floor加齢と更年期障害は切っても切り離せない関係だ。症状に個人差はあっても、年齢を重ねるうち、ほとんどの人が経験する通過儀礼といっても過言ではない。ただ、対策を講じれば症状が軽くて済むこともあり、更年期にさしかかる前に更年期障害の症状や予防法、対処法をよく知っておきたい。そこで、3回にわたって更年期障害のあれこれを詳しく解説していく。

更年期とは、年齢45~55歳ごろの、閉経を迎える頃のちょうど生殖機能の低下や女性ホルモンの分泌量が減少しはじめるころを指す。この時期に起こってくる更年期障害は、女性の病気だと思われがちだが、実は男女ともに起こりえる。男性の場合、加齢やストレスなどによって男性ホルモンであるテストステロンが低下することにより発生する。のぼせ、ほてりなど自律神経系の症状と、イライラ、うつ病などの精神的な症状とが複合して発症する場合が多い。病名が特定できない不調を「不定愁訴」と呼ぶが、更年期障害は、この不定愁訴が日常生活に困難を来すほどのものをいう。

更年期症状が起こるメカニズム、原因とは?

女性の場合は、一般的に閉経を迎える50歳を境に、前後5年で起こるホルモン分泌の低下が、更年期障害のおもな原因だ。もちろん、閉経やホルモンバランスには個人差があるため、なかには30代で更年期障害になる人もいる。

卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンが、30代のピークを経て減少していく。しかし、そこで脳の視床下部にある下垂体が「もっとエストロゲンを出せ」と命令しても、卵巣が衰えているために分泌することができない状態になる。このとき、脳が興奮して自律神経の調節ができなくなることが、さまざまな更年期障害の症状につながるのだ。

また男性の場合は、男性ホルモンのテストステロンの減少が影響している。テストステロンの分泌のピークは20代だが、やはり個人差が大きい。40歳以降にテストステロンが減ると、筋肉量の低下や、メタボ、うつ症状を招く。女性の更年期障害は10年ほどで症状が落ち着くのに対し、閉経というはっきりとした時期がない男性は長引くこともある。

更年期障害を予防するために、普段の生活で、気をつけることは?

女性は食生活の乱れや身体を冷やしていると、月経不順や婦人科系疾患、自律神経の乱れから、30代でも更年期障害に悩まされることになる。男女ともに若いからといって油断は禁物。食生活の見直しと、ストレスをためず運動や筋トレ、睡眠時間の確保を第一に考えよう。更年期障害の疑いがある場合には、女性は婦人科を、男性は泌尿器科受診をして、診察を受けることをおすすめする。

また、不定愁訴があらわれたからといって、「更年期だから仕方がない」と自己判断するのは危険だ。甲状腺や循環器などの内科系、脳神経や精神疾患の病気になっていることもあるので、正しい診断を受けてほしい。

またすでに更年期障害に悩まされている人は、不規則な生活や睡眠不足、油ものや甘いものばかり食べて自律神経を乱れさせるのは避けて、この時期を乗り切ってほしい。さらに、ウォーキングや水泳などの有酸素運動を習慣にして、ストレスをためないことも大切だ。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

Colorda編集部