油は悪か? 善か? 最新の研究に基づく油の健康への影響や勘違いを、アンチエイジング研究の第一人者・白澤卓二氏が解説。「いつまでも若々しさと健康をキープしたい」という願いを叶える、油との上手な付き合い方が判明。

2016.9.8

どっちの油を選ぶのが正解? 飽和脂肪酸orトランス脂肪酸

アメリカで使用禁止になった油とは?

A, MR & PR | date created: 2006:08:30
2015年6月、米食品医薬品局(FDA)は一部の菓子類やマーガリンなどに含まれ心臓疾患のリスクを高めるとされる「トランス脂肪酸」の原因となる油の使用を禁じると発表した。「食用として一般的に安全とは認められない」と判断した。3年間の猶予期間を経て、2018年6月以降は食品への添加を原則認めない方針だ。

トランス脂肪酸は液体の植物油などを固める加工過程などで生成され、マーガリンやパン、ケーキ、クッキー、ドーナツなどの洋菓子や揚げ物に含まれている。世界保健機関(WHO)はトランス脂肪酸の摂取を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるよう目標値を設定している。一方、日本では食品安全委員会が2012年の評価書で、日本人の大多数はWHOの目標を下回っているとしてトランス脂肪酸の表示を義務づけていない。

トランス脂肪酸の摂取量が多いと総死亡リスクが34%も高まる

カナダ・マクマスター大学の臨床疫学のソニア・アナンド博士らの研究チームは、これまでに発表された飽和脂肪酸およびトランス脂肪酸と心疾患、糖尿病、脳卒中の死亡率に関する過去の論文を包括的にレビューし、その結果を報告した。

アナンド博士らの分析によれば、飽和脂肪酸の摂取量が多いと、心臓に酸素や栄養を送る冠状動脈疾患による死亡リスクを15%高めたが、総死亡リスク、脳卒中および糖尿病による死亡リスクには影響を与えないことがわかった。一方、トランス脂肪酸の摂取量が多いと総死亡リスクが34%、冠状動脈疾患の死亡リスクが28%、発症リスクが21%高くなることがわかった。

現在の米国のガイドラインでは飽和脂肪酸はエネルギー比率で10%未満、トランス脂肪酸は1%未満にするように推奨されているが、摂取量に関して再検討が必要だろう。トランス脂肪酸は摂取しないほうがよく、一方で、飽和脂肪酸はバランスよく摂取すれば健康効果が期待できるのだから。さらに最近では、ココナッツオイルなどの飽和脂肪酸の健康効果が報告されている。すべての油が悪ではないが、油の質の見直しも重要だ。


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Colorda編集部