将来の妊娠&出産希望とは関係なく、子宮環境をととのえておくことは仕事もプライベートも快適に過ごす秘訣。

実際のケーススタディから、「こんなときはどんな検査をした?」「何が原因?」を産婦人科医師が解説、働く女性の子宮環境を考える。

これを読んだら、何もなくてもまずは産婦人科へ行ってみない?(全6回)

2017.4.6

Vol.3 30代から始まる月経痛や月経過多、それって「子宮筋腫」かも?

CASE STUDY03

C子さん(33歳、都内企業の営業担当、現在は地方の支店勤務)

月経周期
13歳で初潮を迎えて以降、20歳まで月経不順あり。22歳くらいから28~30日周期に整った
環境の変化
東京本社で社内勤務として働いていたが、31歳から地方の県庁所在地の支店に転勤。取引先企業の営業担当として、おもに外回りをしている
受診の経緯
社会人になってからは月経周期もほぼ落ち着いており、月経痛などもとくになかった。地方に転勤となった2年ほど前から、ときどき月経痛が重く、鎮痛剤を服用するようになった。昨年から月経時にレバーのような塊が出ることも。立ちくらみはないものの、駅の階段で多少息切れがするようになってきた。会社の検診で貧血を指摘され、内科を受診したら婦人科を受診するように言われたため来院
婦人科の受診歴
初めて

所要時間

問診と検査で15~20分(内診あり)

どんなことをした?

Check1 生理時期の状態の確認

いつから月経痛が起こるようになったのか、いつから月経量が増えてきたのかなどを確認しました。もともと月経痛はほとんどなかったそうですが、転勤以降に月経痛が重いことが増え、鎮痛剤を服用するようになってきたとのことでした。

月経量は、20代から3~4時間ごとの生理ナプキンの交換が常で、日中に夜用を使っていたそうですが、ここ1年くらいは、毎回血液に混じってレバーのような塊が出るようになり、ナプキンの交換も2時間おきと、かなり頻繁に交換しなければならなくなってきたということでした。出血の状態が変化してきたということは、何か子宮内の変化によって出血が増えてきている可能性が考えられます。

Tips 月経時の血液量、多さの目安は?

自分の血液量が多いのかは他人と比較することもできず、なかなかわかりにくいものです。目安としては、昼間でも夜用の生理ナプキンを使っていたり、交換時間が2~3時間おきと頻繁だったりする場合は、月経量は多いと考えられます。また、レバーのような塊は凝血塊(コアグラ)といい、血液量が多い場合にみられることが多いです。

Check2 内診&経膣超音波検査

毎年会社の健康診断で子宮頸がん検査は受けていて問題なかったそうですが、内診や超音波検査などは含まれていなかったため、それ以外の確認ができていなかったとのことでした。今回、経腟超音波検査(エコー検査)を行ったところ、子宮内膜部分に1.5cmほどの粘膜下子宮筋腫、また子宮体部には5cm大の筋層内~漿膜下(しょうまくか)子宮筋腫がふたつ認められました。卵巣や卵管には異常所見は認められませんでした。

Tips 子宮筋腫のできる場所

子宮筋腫は良性(がんではない)の疾患 ですが、月経痛の悪化や出血量の増加をもたらします。通常複数個できることが多く、そのできている場所によって粘膜下・筋層内・漿膜下(しょうまくか)に分類されます。粘膜下にあると月経時やそれ以外でも出血することが多く、貧血の原因となります。筋層内では月経痛の原因に。漿膜下のものは、自覚症状がないまま巨大化していることが少なくありません。

Check3 血液検査

採血を行い、貧血の鑑別を行いました。MCV(平均赤血球容積、赤血球1個の平均的な大きさを表す数値)やMCH(平均赤血球血色素量、赤血球1個の平均的なヘモグロビン量を表す数値)がともに低いと鉄欠乏性貧血が疑われ、とくに女性の場合、過多月経(月経時の出血量が多いこと)の方に起こりやすいです。男女共通の要素としては、痔や胃腸系の疾患から起こることもあります。

同時に、腫瘍マーカーであるCA125の検査も行いました。子宮体がんや卵巣がんなどの管理に使われている腫瘍マーカーですが、良性疾患である子宮内膜症や子宮腺筋症の場合もCA125は高値を示すことが多いです。

診断結果

子宮筋腫、鉄欠乏性貧血

粘膜下と筋層内に複数の子宮筋腫(多発子宮筋腫)が認められました。また血液検査では鉄欠乏性貧血を示しており、原因は粘膜化子宮筋腫による過多月経のようなので、子宮鏡による粘膜下子宮筋腫の摘除術を行いました。CA125値は正常範囲であり、内診でも子宮内膜症を疑われる所見は認められず、卵巣嚢腫(チョコレート嚢腫)などもありませんでした。なお、子宮内膜症は強い月経痛をもたらします。

通勤途中の電車内での立ちくらみなどを「貧血」の症状かもと心配して来院される方が多いです。ですが、実際には立ちくらみやいわゆる血の気が引くような感じの場合は、血液中のヘモグロビンが少ない本来の貧血ではなく、自律神経系などメンタルが原因の可能性があります。高度な貧血では、階段などで息切れなどが起こります。貧血の原因は、過多月経以外に胃腸系や痔疾患をはじめ、血液疾患(白血病や再生不良性貧血)の場合などさまざまです。

メディカル知恵袋

30代になってから始まった月経痛や月経過多は受診を!

一般的には、30代に入ると月経周期が安定して、月経期間の日数がやや短くなったり月経痛が和らいできたりすることが多いです。月経期間が延びた、月経量が増えてきた、月経痛が重くなってきたと感じたときは、子宮筋腫や子宮内膜症など婦人科系疾患が疑われます。会社や自治体の健康診断での子宮頸がん検査では、経腟超音波検査はほぼ行われないため、こういった症状のある方は近くの婦人科でしっかりと診てもらうようにしましょう。


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Colorda編集部