兵庫県 尼崎市がこんな健康への取組みをしているって知っていますか 1.尼崎市の特徴 1-1.尼崎市の人口統計と高齢化率 尼崎市は兵庫県の南東部に位置する市で、1916年の市制施行で誕生しました。1947年に旧園田村との合併により現在の市域となり、南部に工業地域、中央部に商業地、北部に住宅地が広がる形で発展してきました。神戸市や大阪方面へのアクセスがよく、「本当に住みやすい街大賞2018 in 関西」では尼崎駅周辺が第1位に選ばれています。
2021年10月31日現在の人口は約46.1万人 (住民基本台帳による)です。国勢調査によれば、尼崎市の人口は1970年の約55.4万人をピークに現在まで減少し続けていましたが、近年は横ばい状態 にあります。なお、日本全体の人口ピークは2008年、兵庫県全体の人口ピークは2007年です(いずれも国勢調査をもとにした推計人口)。国立社会保障・人口問題研究所の2018年時点の推計によれば、尼崎市の人口は現状のままでは2040年には約39.1万人に減少するとされています。
2021年3月31日現在における65歳以上の高齢者人口は約12.8万人で、高齢化率は27.6% です。2020年10月の日本全体の高齢化率は28.8%であることから、尼崎市の高齢化率は全国と比べてわずかに低いと言えます。しかし多くの地方自治体同様、今後も高齢化が進んでいくことが予想されます。
尼崎市の人口と高齢化率の推移
*総務省統計局「国勢調査」をもとに編集部で作成 1-2.尼崎市の健康寿命 健康寿命とは、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間 を指します。日常生活に制限のない、自立した状態で過ごせる期間と言えます。
下記は、兵庫県が算出した尼崎市の平均寿命と健康寿命、不健康な期間を示した表です(カッコ内は全国平均)。兵庫県では、介護保険要介護認定に基づいた要介護2〜5を不健康な状態(不健康である期間)、それ以外を健康な状態(健康寿命)として独自に算出しています。不健康である期間が長くなるほど医療費や介護費がふくらみ、公費負担が増大する要因になります。
男性 女性 2010年 2015年 増減 2010年 2015年 増減 平均寿命(歳) 78.41 79.88 +1.47 85.16 86.26 +1.10 健康寿命(歳) 76.69 78.14 +1.45 81.44 82.69 +1.25 不健康である期間(年) 1.72 1.74 +0.02 3.72 3.56 -0.16
尼崎市の健康寿命は介護保険要介護認定に基づく方法で算出されているため全国平均との比較はできませんが、2010年度と2015年度の健康寿命を比較すると、男女ともに順調に伸びている ことがわかります。一方で、不健康である期間には大きな変化がないため、短縮していくことが課題と言えます。
尼崎市では「第3次地域いきいき健康プランあまがさき」を策定し、「市民の健康寿命の延伸」を全体目標として明記しています。
2.尼崎市の死因順位と割合 1981年以降、日本人の死因の第1位はがんです。 以降、生活習慣病を主因とする疾患が上位を占めています。生活習慣病とは、生活習慣(食、運動、喫煙、飲酒等)が影響する一部のがんや心臓病(心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)、糖尿病などを指します。人口動態調査によると、尼崎市と日本全体の死因とその割合は下記のようになっています。
1位 2位 3位 4位 5位 尼崎市※2019年 悪性新生物(がん)29.5% 心疾患13.8% 老衰7.6% 脳血管疾患7.2% 肺炎6.6% 日本全体※2019年 悪性新生物(がん)27.3% 心疾患15.0% 老衰8.8% 脳血管疾患7.7% 肺炎6.9%
尼崎市の死因順位は日本全体と同じです。ポイント数では、1位のがんのみ日本全体を上回って おり、その差は2.2ポイントです。この要因のひとつとして、尼崎市のがん検診受診率は日本全体と比べて低い 傾向にあることも考えられます(「4-1.尼崎市のがん検診受診率の現状」参照)。
3.尼崎市のがん検診の種類・費用 3-1.自治体主導の「5大がん検診」 日本では、厚生労働省の指針に基づき、自治体主導で実施されている「5大がん検診」と呼ばれるがん検診があり、全国各自治体とも受診率の向上を目指しています。 5大がん検診は、胃がん、子宮がん(子宮頸がん)、肺がん、乳がん、大腸がん の5つの検診を指します。
5大がん検診は、加入している健康保険の種類に関係なく住民票のある自治体で受診することができます。検診の種類によって対象年齢や頻度は異なりますが、受診費の一部もしくは全額が公費で負担されます。ただし、企業に勤めている方などは、企業による健康診断にがん検診が含まれていることが多いため、自治体主導のがん検診受診者は国民健康保険加入者や後期高齢者医療保険加入者を含む、「勤務先などでの受診機会のない人」が中心です。
3-2.尼崎市のがん検診 尼崎市が実施しているがん検診の種類と費用は下記の通りです。太字は、尼崎市独自の取り組みです。
尼崎市のがん検診の種類・費用
種類 検査項目 対象者 受診間隔 費用 胃がん 問診、胃部X線検査(バリウム)または胃内視鏡検査(胃カメラ) ・バリウム:40歳以上・胃カメラ:50歳以上 ・バリウム:年1回・胃カメラ:2年に1回 ●バリウム・集団:800円・個別:2,700円●胃カメラ・個別:4,300円※保健所でのバリウムの実施は、当分の間中止 子宮頸がん 問診、子宮頸部細胞診 20歳以上女性 2年に1回 1,500円(個別のみ) 肺がん 問診、胸部X線検査※必要に応じて喀痰検査も実施 40歳以上 年1回 ・保健所:300円・集団:300円※喀痰検査は別途600円 乳がん 問診、視触診、マンモグラフィ※検診時に、自己視触診の指導を実施 40歳以上女性 2年に1回 ・集団:2,200円・個別:2,200円 大腸がん 問診、便潜血検査(2日法) 40歳以上 年1回 ・集団:900円・個別:900円
尼崎市のがん検診は、基本的には厚生労働省の指針に沿っています。乳がん検診では検査に加えて、市民の乳がんセルフチェックを推進するため、自己視触診の指導を実施 している点が特徴です。
3-3.尼崎市のがん検診の無料クーポン 尼崎市のがん検診の無料クーポンは下記の通りです。
種類 対象者 無料になる検査項目 胃がん 40歳 問診、胃部X線検査(バリウム) 子宮頸がん 20歳女性 問診、視診、子宮頸部細胞診 肺がん 40歳 問診、胸部X線検査 乳がん 40歳女性 問診、視触診、マンモグラフィ 大腸がん 40歳 問診、便潜血検査
紛失・転入などにより、クーポン券の発行が必要な場合、申請書の申請または窓口での手続きにより、再発行が可能です。また、クーポン券が届く前に尼崎市のがん検診を受診した場合、保健所での申請により自己負担金が返金されます。自己負担金返金の対象は尼崎市のがん検診のみで、人間ドックや職場の検診は対象外です。
また、次の方は申請により無料でがん検診を受診できます。
・生活保護法による被保護世帯に属する方
・市民税非課税世帯に属する方
・その他市長が認めた方
詳細は尼崎市サイトでご確認ください。
4.尼崎市のがん検診受診率と受診率向上のための取り組み 4-1.尼崎市のがん検診受診率の現状 下記は、2015年度から2019年度の尼崎市の受診率の推移です。
尼崎市のがん検診受診率推移
胃がん 子宮頸がん 肺がん 乳がん 大腸がん 2015年度 4.2% 13.1% 8.7% 19.3% 15.8% 2016年度 - 9.6% 8.6% 16.6% 13.5% 2017年度 3.2% 4.4% 3.0% 7.5% 4.7% 2018年度 2.9% 4.8% 2.4% 8.1% 4.2% 2019年度 2.0% 5.6% 2.0% 9.0% 4.3%
下記は、自治体主導のがん検診における2015年度から2019年度の日本全体の受診率の推移です。
自治体主導の日本全体のがん検診受診率推移
胃がん 子宮頸がん 肺がん 乳がん 大腸がん 2015年度 6.3% 23.3% 11.2% 20.0% 13.8% 2016年度 8.6% 16.4% 7.7% 18.2% 8.8% 2017年度 8.4% 16.3% 7.4% 17.4% 8.4% 2018年度 8.1% 16.0% 7.1% 17.2% 8.1% 2019年度 7.8% 15.7% 6.8% 17.0% 7.7%
尼崎市の受診率は、2015年度、2016年度の大腸がん検診を除くすべての検診で日本全体を下回って います。とくに胃がん・肺がん検診の受診率は低く、2018年度から2019年度において2%台となっています。一方で、子宮頸がん・乳がん検診においては、2017年度から2019年度にかけて受診率が増加傾向にあります。しかしながら、その他の検診の受診率は年々低下傾向にあり、これは日本全体においても同様の傾向です。
2016年度から一部の受診率が著しく低下している要因としては、地域保健・健康増進事業報告における受診率の算定法の対象者が変更されたことが考えられます。また、過去に国のがん検診推進事業として、大腸がん検診、乳がん検診では40~60歳の間で5歳おき、子宮頸がん検診では20~40歳の間で5歳おきに無料クーポンが配布されていました。しかし、2016年から大腸がん検診は事業の対象外になり、2017年から子宮頸がん検診と乳がん検診の無料クーポンは検診開始年齢(子宮頸がん検診20歳、乳がん検診40歳)のみになりました。これら無料クーポン対象外の影響が受診率低下につながっていると考えられています。このため、自治体によっては独自の無料クーポンを配布したり、キャンペーンを実施したりして、受診率向上に努めています。
4-2.尼崎市のがん検診受診率向上やがん予防のための取り組み がん検診の受診率向上やがん予防に向けて、尼崎市では次のような取り組みを行っています。肝臓がん予防のための肝炎ウイルス検査の無料実施や禁煙支援事業、女性が健診を受けやすくするための「レディース健診デイ」、働き盛り世代のがん対策のための「がん予防・がん健診促進にかかる企業との連携」などがあります。
・無料の肝炎ウイルス検査の実施
肝硬変や肝臓がんにつながるリスクがある肝炎ウイルスの検査を実施。尼崎市では、肝炎ウイルス検査の受診歴がない方、1994年以前に一部の血液凝固剤を投与された経験がある方、感染に不安のある方などを対象に、保健所にて無料で実施している。また、肝炎ハイリスク者は市内の医療機関でも無料の検査が受けられる。
・「スワンスワン相談」の実施
禁煙を希望する市民を対象に、禁煙についての相談やニコチン依存度チェックを無料で行う「スワンスワン相談」を市役所で実施。電話または特定健診の会場での予約が必要(現在は新型コロナの影響により、禁煙相談のみ実施)。
・特定健診の日程に乳がん検診を組み合わせられる「レディース健診デイ」
尼崎市では女性が健診を受けやすい環境を作るために「レディース健診デイ」を開設。特定健診と同時に乳がん検診を受診できる。健診スタッフが女性であり、託児スペースも使用できるため、子どものいる女性でも受診しやすい工夫がされている。完全予約制で、乳がん検診の受診費は市の乳がん検診と同じ2,200円。
・がん予防・がん検診促進にかかる企業との連携
働き盛り世代のがん対策のため、尼崎市ではがん予防やがん健診の受診促進などの普及啓発を企業と連携して推進している。連携企業では、従業員およびその家族に対するがん検診の受診勧奨や、顧客窓口でのがん予防に関するパンフレット配布やポスター掲示などを実施している。
5.尼崎市の人間ドックの費用補助・助成 尼崎市では、人間ドックの補助や助成は行っていません。
6.尼崎市の人間ドック機能評価認定施設 6-1.機能評価認定施設とは? 「機能評価認定施設」とは、日本人間ドック学会が定めている「人間ドック健診施設機能評価」という評価基準をクリアした医療施設 です。申請のあった人間ドック施設に対して日本人間ドック学会が受診者目線で審査している取り組みです。
審査項目には、「運営方針、組織の管理体制が確立しているか」や「検査の業務マニュアルは作成されているか」、「感染対策などの危機管理は徹底されているか」といった施設側の安全面に関する基準から、「受診者が快適に受診できるように配慮しているか」や「受診者のプライバシーに配慮しているか」といった受診者側に関する基準まで、多角的な評価基準があります。また、評価基準は5年ごとに改定され、更新審査が行われます。
6-2.尼崎市の機能評価認定施設 全国で390以上の施設が認定されており、このうち尼崎市内の機能評価認定施設は2021年11月現在で1施設 あります。
マーソでは、機能評価認定施設から人間ドックのプランを探すことができます。くわしくはこちら をご覧ください。
7.尼崎市の健康増進への取り組み 尼崎市は、健康寿命の延伸を目指してさまざまな取り組みを行っています。健康活動によりポイントが貯まる「未来いまカラダポイント」事業や、手軽に健康づくりを始めるための「尼崎市ウォーキングマップ」の作成などがあります。
・「未来いまカラダポイント」制度
尼崎市民限定のポイント制度。健(検)診の受診やセミナーの受講、身体によい推奨商品の購入など、健康によいことを行うとインセンティブが付与される仕組み。インセンティブは、10枚で景品が当たる抽選に応募できる「継続特典チケット」または、1ポイント=1円の電子地域通貨「あま咲きコイン」として利用できる「SDGsポイント(電子ポイント)」の2種類がある。
・尼崎市ウォーキングマップの作成
尼崎市の健康づくり推進委員(健康増進すみれ会)が作成したウォーキングマップ。合計6つのコースが掲載されている。各コースにその地域の見どころや名所があり、歩くだけで尼崎市のよさを再発見できるコースとなっている。
※本記事は2021年11月時点の情報を元に作成しています。