日本人では30歳以上の6割が発症すると言われている下肢静脈瘤。
こむらがえり、足のだるさ、むくみ、かゆみ、痛みなどが発症し、重症化すると潰瘍になることも。一度発症すると、自然治癒することはなく早期発見が重要だ。

この数年で飛躍的に進化している下肢静脈瘤の治療法に迫る。(全6回)

2016.7.7

Vol.4 下肢静脈瘤を予防するには…発症リスクを管理して血行を意識しよう

下肢静脈瘤の発症原因のおさらい 

下肢静脈瘤を予防するには第2回では、足の血液を心臓に戻す駆動力として、ふくらはぎの筋肉や横隔膜、肋骨の間にある肋間筋(ろっかんきん)などの呼吸筋や腹筋のはたらきが非常に重要であることをお伝えしました。ふくらはぎの筋肉や横隔膜がしっかり収縮、弛緩を繰り返すことにより、足の血液が心臓にスムーズに戻ってくるのでしたね。

そして、下肢静脈瘤の発生は、皮膚のすぐ下を流れる表在静脈が脚の中心にある深部静脈に合流する部分の弁が壊れて静脈内の血液が足先の方へ逆流することによるものでした。深部静脈内の血圧が高まると、逆流防止弁にかかる圧力も大きくなり弁の破壊につながるということになります。

すなわち、下肢静脈瘤が発症する際には、足から心臓に向かう静脈がスムーズに流れず、それにより深部静脈内に血液が溜まってその内圧(深部静脈内の血圧)が大きくなり、逆流防止弁に過度の力が加わって弁が壊れる、という一連の出来事が生じています。

下肢静脈瘤を予防するには

下肢静脈瘤の発症予防には、言うまでもなくその発症原因を管理することが必要になります。ポイントはふたつあります。1点目は、足から心臓に向かう静脈がスムーズに流れるようにすること、2点目は逆流防止弁が壊れないよう血管のコンディションを整えることです。では、それぞれを具体的に考えていきましょう。

1)足から心臓に向かう静脈がスムーズに流れるようにする

とにもかくにも、重力の影響を考慮し、立ちっぱなし、座りっぱなしは避けましょう。仕事で立つ時間や座りっぱなしの時間が長い方、足がむくみやすい方などは、就寝時に足をタオルなどで高くするのも良いでしょう。そして、筋力ポンプをしっかりと作用させるため、第二の心臓と呼ばれるふくらはぎの筋肉や横隔膜などの呼吸筋の働きを保つことが非常に大切です。20分くらいの早歩きを毎日行う、朝晩各10回くらいは大きな深呼吸を励行することを習慣づけるのがよいでしょう。

2)逆流防止弁が壊れないよう血管のコンディションを整える

血管のコンディションを整えるということは、血液をサラサラに保つことであり、脱水が禁物です。水分を十分に摂取し、お酒の飲みすぎに注意しましょう。アルコールの分解には体内の水分が使われるので、血液中の水分も減ってしまいます。また、タバコは血管に炎症反応を引き起こします。言うまでもなく禁煙が重要です。また、ピルは血管炎や血栓症を誘発することがありますので注意して使用しましょう。着圧・弾性ストッキングを利用して血管を保護するのも予防効果は大きいようです。弾性ストッキングを履くことで、静脈の病的な拡張が抑えられ、血液が心臓に戻りやすくなります。特に長時間の立ち仕事の方には有用です。

その他にも太りすぎや、長時間の過度な運動(フルマラソンのし過ぎ)なども下肢の静脈瘤の発症を促しますので注意が必要です。太りすぎにより内臓脂肪が増えると、腹圧が上昇して大静脈が圧迫され足の血液が心臓に戻りにくくなります。また、血行促進に役立つ筋肉のコンディションを整える意味で適度な運動は大切ですが、長時間の運動や激しすぎる運動は足の血管に過度の負担をかけるために静脈瘤の発症を誘発します。

次回は、実際に下肢静脈瘤になってしまったらどうすれば良いのか。進行具合にあわせた対処法についてお伝えしたいと思います。


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Colorda編集部