アジア諸国で増え続ける2型糖尿病の原因とは?
アジア諸国で2型糖尿病の増加が深刻な問題となっている。2型糖尿病とは、食生活や運動不足など、おもに生活習慣が原因でかかる糖尿病のことだ。2030年には中国とインドでは2型の糖尿病患者はそれぞれ、6350万人(45%増)と 8700万人(72%増)に達すると推測されている。日本でも2型糖尿病患者は増え続け、2007年には890万人だったのが、2012年の厚生労働省の調査では950万人に増加した。
米国ハーバード大学ジョスリン糖尿病センターのウイリアム・シュー博士らの研究グループは、アジアで糖尿病が増加した背景としてアジア諸国の食事が伝統的アジア食から欧米型の食事に変わったことに注目し、研究をはじめた。
伝統的アジア食の栄養バランスが、インスリン抵抗性を改善する
研究チームは、2型の糖尿病の発症リスクの高いアジア系米国人24名と白人16名を対象に、伝統的なアジア料理を8週間にわたって専任のコックに作ってもらい、1日3食のアジア食と1スナックを自宅にデリバリーした。また、そのうちの一部は、日本の『五訂増補日本食品標準成分表2006年版(Standard Tables of Food Composition in Japan Fifth Revised and Enlarged Edition 2006)』が活用されている。
試験に用いたアジア食の栄養バランスは炭水化物70%、タンパク質15%、脂質15%で、食物繊維が1日量にして33g含まれていた。8週間後、血液検査でインスリン抵抗性や脂質を調べると、両群ともにインスリン抵抗性が改善し、LDLコレステロールが低下していた。つまり、アジア食にはインスリンの効きをよくし、コレステロールを下げる効能があったのだ。
9週目に、アジア系米国人20名と白人13名を低食物繊維の欧米型食事に切り替え、残りの7人はそのまま伝統的アジア食を継続した。すると、欧米型に戻った群はアジア人、白人を問わずインスリンの効きが悪くなったが、その傾向はとくにアジア人で強く認められた。シュー博士は伝統的アジア食に含まれる豊富な食物繊維と低脂肪が糖尿病の発症を抑える効果につながると推測する。
日本でも2型糖尿病が増え続けている。この研究結果から、玄米などの未精製穀物を使っていた頃の、伝統的日本食を見直す必要がありそうだ。
・生活習慣から糖尿病を発症するリスクは食事の多様化などによって年々高まっています。定期的な健診・検査で発症リスクを確認しましょう!
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