2015.8.13

便潜血は病気のサイン! その裏に潜む大腸の異常

便に血液が含まれていたら要注意!

便検査大腸の異常を調べるには、糞便検査が有効である。これはおもに、糞便に血液が含まれるかを調べる検査だ。糞便は、大腸を経由し肛門から排泄される過程で、血液などの成分が付着する。本来、大腸を始めとした消化管からは出血が見られないため、糞便に血液が含まれるのは異常なのだ。糞便検査は、一般的に、便潜血検査の2日法が実施され、文字通り2日に渡って便に血液が含まれていないかを調べる。

できるだけ新しい便を採取しよう!

糞便を調べるには、まず採便を行う。採便には、専用のスティックを使用するため、誰でも確実に便を採取することができるが、大切なのは新しい便を採取することだ。これは時間が経過するほど、便中のヒトヘモグロビンを始めとした物質が変性もしくは分解していくためである。そうなると、正確な検査結果が得られにくくなる。

もちろん、厳密な温度管理を行えるのであれば、7日前に採便してもよいかもしれないが、便の中には無数の細菌が生息しており、その動きを完全に止めるには不可能に近い。

そのため、採便の日に便通がよくなるよう、摂取する食品に気を使う必要がある。具体的には、食物繊維や水分を多めに摂取することだ。そうして普段通りに便を排泄し、適切な量を適切な形で採取することが求められる。普段から便秘傾向のある人は、便秘薬を使用しよう。便が硬くなって腸や肛門を傷つけると、検査結果に悪影響が生じる可能性が高い。ただ、問診などの際に使用した市販薬については自己申告しておく必要がある。

便中のヒトヘモグロビンを調べる検査

糞便検査では、肉眼で血液の有無を確認するのではない。便中に含まれるヒトヘモグロビンを調べることで、消化管内で出血が起こっているかどうかを調べるのだ。便中にヒトヘモグロビンが含まれている場合、免疫反応によってその有無が確認される。

便潜血検査は、陽性か陰性かの定性検査であるため、正常値を具体的に挙げることは難しい。ともあれ、陽性反応が出たら要注意だ。特に、2日とも陽性反応が出た場合は、消化管に何らかの病気が潜んでいる可能性が高い。

ちなみに、2日に渡って調べるのは、検査の精度を高めるためである。便潜血には、痔や鼻血による出血も含まれることがあるため、偽陽性が出やすい傾向にあるのだ。

陽性反応で疑われる病気とは

便潜血検査で陽性反応が現れたら、いくつかの病気が疑われる。とりわけ、大腸がんや大腸ポリープといった下部消化管の病気が見つかるケースが多い。その他、食道がんや胃がん、胃潰瘍、十二指腸潰瘍といった上部消化管の病気が疑われることもあるため、注意が必要である。

いずれにせよ、その背後にどういった病気が潜んでいるかは、精密検査を受けなければわからない。糞便検査というのは、口腔から肛門に至る組織の中で、なんらかの出血が起こっていることしかわからないのである。ただ、その出血が悪性腫瘍によるものだった場合は迅速な対応が求められるため、糞便検査を受ける意義は非常に大きいといえる。

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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Colorda編集部