神奈川県 藤沢市がこんな健康への取組みをしているって知っていますか 1.藤沢市の特徴 1-1.藤沢市の人口統計と高齢化率 藤沢市は神奈川県の中央南部に位置し、南に相模湾、北には相模台地のなだらかな丘陵が続く、自然環境に恵まれた温暖な街です。1940年の市制施行により誕生し、その後近隣の町村と合併し現在の市域になりました。江の島や片瀬・鵠沼海岸をはじめとする海沿いのエリアは観光スポットとして有名です。
藤沢市の2021年11月現在の人口は約44.2万人 (住民基本台帳による)です。国勢調査によれば、藤沢市の人口は1940年の市制施行から現在まで増え続けて います。神奈川県も増加傾向ではありますが、増加率の鈍化から過渡期と考えられます。なお、日本全体のピークは2008年です(いずれも推計人口)。国立社会保障・人口問題研究所の2018年時点の推計によればによれば、藤沢市の人口は今後も増加が続き、2025年にピークを迎えたのち減少に転じ、2045年には約42.0万人に減少すると推計されています。
2021年11月現在における65歳以上の高齢者人口は約10.8万人で、高齢化率は24.5% です。2020年10月の日本全体の高齢化率は28.8%であることから、藤沢市の高齢化は日本全体よりは進みが遅いと言えます。しかし、「藤沢市市政運営の総合指針2020(資料集)」では、藤沢市の高齢化率は将来的に日本全体の数値に近づいていくものと推計されています。
藤沢市の人口と高齢化率の推移
*総務省統計局「国勢調査」をもとに編集部で作成 1-2.藤沢市の健康寿命 健康寿命とは、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間 を指します。日常生活に制限のない、自立した状態で過ごせる期間と言えます。
下記は、藤沢市の平均寿命と健康寿命を示した表です(カッコ内は全国平均)。藤沢市の健康寿命は、介護保険要介護認定に基づいて要介護2〜5以外の状態として独自に算出されています。平均寿命と健康寿命との差(不健康である期間)が長くなるほど医療費や介護費がふくらみ、公費負担が増大する要因になります。
男性 女性 2010年 2015年 増減 2010年 2015年 増減 平均寿命 80.7歳(79.6歳) 81.9歳(80.8歳) +1.2 86.9歳(86.4歳) 87.8歳(87.0歳) +0.9 健康寿命 79.5歳 80.7歳 +1.2 83.9歳 85.0歳 +1.1 不健康である期間 1.2年 1.2年 ±0.0 3.0年 2.8年 -0.2
藤沢市の平均寿命は2010年、2015年ともに全国平均より高い値を示しています。健康寿命は2010年と2015年の比較で男性が1.2歳、女性は1.1歳の延びがみられました。不健康である期間においては、男性は変化がない一方で女性は0.2年とわずかに短くなっています。
藤沢市では、「元気ふじさわ健康プラン 藤沢市健康増進計画(第2次)」において到達目標を「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」とし、ライフステージごとの健康課題に応じた健康づくりを推進しています。
2.藤沢市の死因順位と割合 1981年以降、日本人の死因の第1位はがんです。 以降、生活習慣病を主因とする疾患が上位を占めています。生活習慣病とは、生活習慣(食、運動、喫煙、飲酒等)が影響する一部のがんや心臓病(心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)、糖尿病などを指します。人口動態調査によると、藤沢市と日本全体の死因とその割合は下記のようになっています。
1位 2位 3位 4位 5位 藤沢市※2019年 悪性新生物(がん)28.2% 老衰12.7% 心疾患12.6% 脳血管疾患7.6% 肺炎7.1% 日本全体※2019年 悪性新生物(がん)27.3% 心疾患15.0% 老衰8.8% 脳血管疾患7.7% 肺炎6.9%
藤沢市の死因順位をみると、老衰が日本全体を3.9ポイント上回り2位 となっています。1位のがんは日本全体を0.9ポイント上回っているものの、三大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)の合計は日本全体が50.0%に対し、藤沢市は48.4%となっています。このことから、藤沢市では病気よりも老衰で亡くなる方が比較的多いと考えられます。
3.藤沢市のがん検診の種類・費用 3-1.自治体主導の「5大がん検診」 日本では、厚生労働省の指針に基づき、自治体主導で実施されている「5大がん検診」と呼ばれるがん検診があり、全国各自治体とも受診率の向上を目指しています。 5大がん検診は、胃がん、子宮がん(子宮頸がん)、肺がん、乳がん、大腸がん の5つの検診を指します。
5大がん検診は、加入している健康保険の種類に関係なく住民票のある自治体で受診することができます。検診の種類によって対象年齢や頻度は異なりますが、受診費の一部もしくは全額が公費で負担されます。ただし、企業に勤めている方などは、企業による健康診断にがん検診が含まれていることが多いため、自治体主導のがん検診受診者は国民健康保険加入者や後期高齢者医療保険加入者を含む、「勤務先などでの受診機会のない人」が中心です。
3-2.藤沢市のがん検診 藤沢市が実施しているがん検診の種類と費用は下記の通りです。太字は、藤沢市独自の取り組みです。
藤沢市のがん検診の種類・費用
種類 検査項目 対象者 受診間隔 費用 胃がん 胃部X線検査(バリウム)または胃内視鏡検査(胃カメラ)※胃カメラは50歳以上の方のみ 40歳以上 年1回※胃カメラは2年に1回 3,000円※70歳以上はバリウムのみ無料 子宮頸がん 子宮頸部細胞診 20歳以上女性 2年に1回 2,000円※20代偶数年齢および70歳以上は無料 肺がん 胸部X線検査 40歳以上 年1回 600円※70歳以上の方は無料 乳がん マンモグラフィ・40~49歳:2方向撮影・50歳以上:1方向撮影 40歳以上女性 2年に1回 ・2方向撮影:3,000円・1方向撮影:1,800円※70歳以上は1方向撮影が無料 大腸がん 便潜血反応検査 40歳以上 年1回 600円※70歳以上の方は無料 前立腺がん 血液検査(腫瘍マーカーPSA検査) 50歳以上男性 年1回 1,000円
藤沢市のがん検診は、基本的には厚生労働省の指針に沿っています。指針にはない前立腺がん検診を実施しているのが特徴です。
がん検診の対象者には毎年5月下旬頃に市から受診券が発送されます。上記以外の検査および精密検査を行った場合は保険適用または自己負担になります。また指定医療機関以外での受診は全額自己負担となります。
3-3.藤沢市のがん検診の無料クーポン 藤沢市のがん検診の無料クーポンは下記の通りです。
種類 対象者※年齢は当該年度4月1日時点で判定 無料になる検査項目 子宮頸がん ・21歳の女性・20代偶数年齢の女性 ※受診券・70歳以上の女性 ※受診券 子宮頸部細胞診 乳がん ・41歳の女性・40代偶数年齢の女性 ※受診券・70歳以上の女性 ※受診券 マンモグラフィ・41歳、40代偶数年齢の方:2方向撮影・70歳以上の方:1方向撮影
無料クーポン券は子宮頸がん検診対象者の21歳の女性と乳がん検診対象者の41歳の女性に送付されます。この無料クーポン券を提出することで無料受診が可能です(別送されるがん検診受診券には「今年度は対象者ではありません」と記載されます)。子宮頸がん検診対象の20代偶数年齢の女性、乳がん検診対象の40代偶数年齢の女性には無料クーポン券は送付されませんが、費用欄に「無料」と記載された受診券が送付されます。無料クーポン券または受診券を使用できるのは、藤沢市の検診として指定医療機関で受診する場合に限ります。
70歳以上の方はこのほかに、胃がん検診(バリウム)、肺がん検診、大腸がん検診が無料となります。また、次の方は無料でがん検診を受診することができます。
・生活保護受給者の方
・一定の障がいをお持ちの方(前立腺がん検診は除く)
・市民税非課税世帯の方(前立腺がん検診は除く)
・支援決定がされた中国残留邦人の方
詳細は藤沢市サイトや藤沢市役所にてご確認ください。
4.藤沢市のがん検診受診率と受診率向上のための取り組み 4-1.藤沢市のがん検診受診率の現状 下記は、藤沢市が実施した2015年度から2019年度の各がん検診の受診率の推移です。
藤沢市のがん検診受診率推移
胃がん 子宮頸がん 肺がん 乳がん 大腸がん 2015年度 2.6% 17.4% 11.9% 14.4% 12.1% 2016年度 4.2% 17.8% 11.0% 16.3% 10.5% 2017年度 3.8% 17.9% 10.0% 16.9% 9.6% 2018年度 3.4% 17.7% 9.1% 17.2% 8.6% 2019年度 3.2% 17.5% 8.4% 17.8% 7.9%
下記は、自治体主導のがん検診における2015年度から2019年度の日本全体の受診率の推移です。
自治体主導の日本全体のがん検診受診率推移
胃がん 子宮頸がん 肺がん 乳がん 大腸がん 2015年度 6.3% 23.3% 11.2% 20.0% 13.8% 2016年度 8.6% 16.4% 7.7% 18.2% 8.8% 2017年度 8.4% 16.3% 7.4% 17.4% 8.4% 2018年度 8.1% 16.0% 7.1% 17.2% 8.1% 2019年度 7.8% 15.7% 6.8% 17.0% 7.7%
藤沢市のがん検診受診率は、子宮頸がん・肺がん検診が日本全体よりやや高く、乳がん・大腸がん検診は同程度、胃がん検診は日本全体を下回っています。受診率の推移をみると、乳がん検診は若干の上昇がみられますが、そのほかの検診はおおむね横ばいで推移しています。
日本全体のデータにおいて、2016年度から一部の受診率が大幅に低下している要因としては、地域保健・健康増進事業報告における受診率の算定法の対象者が変更されたことが考えられます。また、過去、国のがん検診推進事業として、大腸がん検診、乳がん検診では40~60歳の間で5歳おき、子宮頸がん検診では20~40歳の間で5歳おきに無料クーポンが配布されていました。しかし、2016年から大腸がん検診は事業の対象外になり、2017年から子宮頸がん検診と乳がん検診の無料クーポンは検診開始年齢(子宮頸がん検診20歳、乳がん検診40歳)のみになりました。これら無料クーポン対象外の影響が受診率低下につながっていると考えられています。このため、自治体によっては独自の無料クーポンを配布したり、キャンペーンを実施したりして、受診率向上に努めています。
4-2.藤沢市のがん検診受診率向上やがん予防のための取り組み がん検診の受診率向上やがん予防に向けて、藤沢市では次のような取り組みを行っています。
・胃がんリスク検診(ABC検診)の実施
胃がん検診の受診率の低下や将来の医療費の削減のため、2014年8月より「胃がんリスク検診(ABC検診)」を実施。胃がんの危険因子として重要とされるヘリコバクター・ピロリ菌感染を調べる。対象者は40~70歳までの5歳刻みの年齢の方。検査内容は血液検査(ペプシノゲン量、ヘリコバクター・ピロリ菌抗体)。費用は1,000円。
・肝炎ウイルス検診の実施
肝硬変や肝臓がんの発症リスクとなり得る肝炎ウイルス(B型、C型)への感染の有無を調べる肝炎ウイルス検診を実施。対象者は過去に市の肝炎ウイルス検診を受診していない40歳以上の方。費用は1,200円。
・禁煙支援、受動喫煙防止対策支援
喫煙は肺がんをはじめとするさまざまながんの原因となる。藤沢市では、保健師等が禁煙をサポートする「ふじさわ禁煙サポート」や、事業所向けの禁煙セミナー、タバコに関する啓発媒体の貸出などの禁煙支援を行っている。また、中小企業事業主に対して、各種喫煙室等の設置などにかかる工費、設備費、備品費、機械装置費などの経費に対して助成を行う「受動喫煙防止対策助成金」制度を設けている。
5.藤沢市の人間ドックの費用補助・助成 藤沢市では、人間ドックの補助や助成は行っていません。
6.藤沢市の人間ドック機能評価認定施設 6-1.機能評価認定施設とは? 「機能評価認定施設」とは、日本人間ドック学会が定めている「人間ドック健診施設機能評価」という評価基準をクリアした医療施設 です。申請のあった人間ドック施設に対して日本人間ドック学会が受診者目線で審査している取り組みです。
審査項目には、「運営方針、組織の管理体制が確立しているか」や「検査の業務マニュアルは作成されているか」、「感染対策などの危機管理は徹底されているか」といった施設側の安全面に関する基準から、「受診者が快適に受診できるように配慮しているか」や「受診者のプライバシーに配慮しているか」といった受診者側に関する基準まで、多角的な評価基準があります。また、評価基準は5年ごとに改定され、更新審査が行われます。
6-2.藤沢市の機能評価認定施設 全国で390以上の施設が認定されており、このうち藤沢市内の機能評価認定施設は2021年11月現在で2施設 あります。
マーソでは、機能評価認定施設から人間ドックのプランを探すことができます。くわしくはこちら をご覧ください。
7.藤沢市の健康増進への取り組み 藤沢市では市民の健康寿命の延伸と健康格差の縮小に向けて、さまざまな取り組みを行っています。ユニークな取り組みを紹介します。
・ふじさわ歩くプロジェクト
歩くことから始める健康づくりとして「ふじさわ歩くプロジェクト」を推進。歩くことを楽しめるようにInstagram、Facebook、特設ホームページ等で行きたくなるスポットやイベント情報などを発信している。
・健康支援プログラム
藤沢市保健医療センター保健事業課が行う健康支援プログラム。生活習慣病の予防や改善を目指し、健康診断の結果をもとに保健師、管理栄養士、運動指導員が生活習慣の見直しや改善点を確認し、健康づくり目標を設定。約6ヶ月間のサポートが受けられる。対象は18歳以上の市民。費用は無料(トレーニング室・体力度チェックには別途利用条件や費用負担あり)。
・成人歯科健康診査
20~80歳までの5歳刻みの年齢の藤沢市民が対象。検査内容は問診、口腔内診査(むし歯・歯周病の診査、歯周ポケット測定、入れ歯の状況、清掃状態)、保健指導、唾液検査による歯周病リスク検査(20、25歳のみ)、咀嚼能力検査(65・70・80歳のみ)。費用は500円。
※本記事は2021年11月時点の情報を元に作成しています。