滋賀県大津市大石中1-6-6
目次[非表示]
大津市は日本最大の面積と貯水量を持つ琵琶湖を有する滋賀県の県庁所在地で、2006年の旧志賀町との合併を経て、2009年には中核市に移行しました。中核市とは地方自治法にもとづき、政令によって指定される人口20万人以上の市を指します。2021年現在、62市が指定されています。世界文化遺産の比叡山延暦寺をはじめとした、彦根城、国宝建築など、歴史を感じさせるスポットが多くあり、2003年には全国で10番目の「古都」指定を受けました。
2021年9月現在の人口は約34.4万人(住民基本台帳法及び外国人登録法の定める届出による)です。国勢調査によれば、大津市の人口は現在も増加しています。なお、日本全体のピークは2008年、滋賀県全体のピークは2013年です(いずれも国勢調査をもとにした推計人口)。
国立社会保障・人口問題研究所によれば、大津市の人口は現状のままでは2030年には約33.7万人に減少すると推計されています。2021年9月現在における65歳以上の高齢者人口は約9.3万人で、高齢化率は27.0%です。2020年10月の日本全体の高齢化率は28.8%であることから、大津市の高齢化率は全国よりも低いと言えます。多くの地方自治体同様、人口が減少しているのに対して、高齢者の人口は増加しています。
健康寿命とは、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間を指します。日常生活に制限のない、自立した状態で過ごせる期間と言えます。
下記は、大津市の平均寿命と健康寿命、およびその差です(カッコ内は全国平均)。平均寿命と健康寿命との差(不健康である期間)が長くなるほど医療費や介護費がふくらみ、公費負担が増大する要因になります。
平均寿命※2015年 | 健康寿命※2015年 | 不健康である期間 | |
---|---|---|---|
男性 | 81.91歳(80.8歳) | 80.15歳(72.14歳) | 1.76年(8.66年) |
女性 | 87.74歳(87.0歳) | 83.79歳(74.79歳) | 3.95年(12.21年) |
2015年現在の健康寿命は、男性80.15歳、女性83.79歳です。大津市は男女ともに平均寿命と健康寿命が全国平均より長く、とくに健康寿命は男性が8.01歳、女性が9.00歳と大きく上回っており、健康である期間が長いといえます。
1981年以降、日本人の死因の第1位はがんです。以降、生活習慣病を主因とする疾患が上位を占めています。生活習慣病とは、生活習慣(食、運動、喫煙、飲酒等)が影響する一部のがんや心臓病(心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)、糖尿病などを指します。人口動態調査によると、大津市と日本全体の死因とその割合は下記のようになっています。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
---|---|---|---|---|---|
大津市※2019年 | 悪性新生物(がん)28.1% | 心疾患17.2% | 脳血管疾患8.1% | 老衰5.9% | 肺炎5.5% |
日本全体※2019年 | 悪性新生物(がん)27.3% | 心疾患15.0% | 老衰8.8% | 脳血管疾患7.7% | 肺炎6.9% |
大津市の死因順位1~3位は生活習慣病が占めています。大津市は高齢化率が日本全体よりも低いため、老衰よりも生活習慣病で亡くなる方が多いと考えられます。
日本では、厚生労働省の指針に基づき、自治体主導で実施されている「5大がん検診」と呼ばれるがん検診があり、全国各自治体とも受診率の向上を目指しています。5大がん検診は、胃がん、子宮がん(子宮頸がん)、肺がん、乳がん、大腸がんの5つの検診を指します。
5大がん検診は、加入している健康保険の種類に関係なく住民票のある自治体で受診することができます。検診の種類によって対象年齢や頻度は異なりますが、受診費の一部もしくは全額が公費で負担されます。ただし、企業に勤めている方などは、企業による健康診断にがん検診が含まれていることが多いため、自治体主導のがん検診受診者は国民健康保険加入者や後期高齢者医療保険加入者を含む、「勤務先などでの受診機会のない人」が中心です。
大津市が実施しているがん検診の種類と費用は下記の通りです。
種類 | 検査項目 | 対象者 | 受診間隔 | 費用 |
---|---|---|---|---|
胃がん | 胃部エックス線検査(バリウム)もしくは胃内視鏡検査(胃カメラ) | ・バリウム40歳以上・胃カメラ50歳以上年度年齢偶数 | ・バリウム年1回・胃カメラ2年に1回 | ・バリウム(集団のみ)1,600円・胃カメラ(個別のみ)4,000円 |
子宮頸がん | 視診・内診・子宮頸部細胞診 | 20歳以上女性 | 2年に1回 | 1,600円 |
肺がん | ・胸部エックス線検査・喀痰細胞診※50歳以上かつ喫煙指数600以上の方 | 40歳以上 | 年1回 | ・胸部エックス線検査800円・喀痰細胞診1,000円 |
乳がん | 問診・マンモグラフィ | 40歳以上女性 | 2年に1回 | ・集団40歳代 2,100円、50歳以上 1,800円・個別40歳代 2,000円、50歳以上 1,600円 |
大腸がん | 免疫便潜血検査2日法 | 40歳以上 | 年1回 | 800円 |
大津市のがん検診は、基本的には厚生労働省の指針に沿っています。なお、大津市国民健康保険加入者はすべてのがん検診を無料で受診できます。
大津市のがん検診の無料クーポンは下記の通りです。
種類 | 対象者 | 無料になる検査項目 |
---|---|---|
子宮頸がん | ・20歳の女性・前年度未受診の21歳の女性 | 問診・内診・子宮頸部細胞診 |
乳がん | ・40歳の女性・前年度未受診の41歳の女性 | 問診、マンモグラフィ |
子宮頸がん検診当日、無料クーポン券を持参せずに受診した場合は、後日償還払いの手続きをとると自己負担分が返金されます。
また、次の方は無料でがん検診を受診することができます。 ・70歳以上の人 ・65~69歳の人で後期高齢者医療保険制度加入者 ・生活保護世帯等の人 ・世帯全員が市民税非課税の人 ・大津市国民健康保険加入者
下記は、大津市が実施した2015年度から2019年度の各がん検診の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
---|---|---|---|---|---|
2015年度 | 0.8% | 15.2% | 5.8% | 12.7% | 8.6% |
2016年度 | 1.7% | 22.2% | 6.6% | 11.6% | 7.4% |
2017年度 | 1.8% | 21.0% | 6.5% | 13.2% | 6.6% |
2018年度 | 1.7% | 18.1% | 5.7% | 14.5% | 5.8% |
2019年度 | 1.6% | 20.9% | 5.9% | 13.2% | 5.8% |
下記は、自治体主導のがん検診における2015年度から2019年度の日本全体の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
---|---|---|---|---|---|
2015年度 | 6.3% | 23.3% | 11.2% | 20.0% | 13.8% |
2016年度 | 8.6% | 16.4% | 7.7% | 18.2% | 8.8% |
2017年度 | 8.4% | 16.3% | 7.4% | 17.4% | 8.4% |
2018年度 | 8.1% | 16.0% | 7.1% | 17.2% | 8.1% |
2019年度 | 7.8% | 15.7% | 6.8% | 17.0% | 7.7% |
大津市のがん検診受診率は、子宮頸がん検診が日本全体を上回っているものの、日本全体を下回っている検診がほとんどです。日本全体との乖離が最も小さいのは肺がん検診です。日本全体では、すべての検診の受診率が下がっていますが、大津市の受診傾向は多くの部位で横ばい状態になっています。
2016年度から一部の受診率が顕著に増減している要因としては、地域保健・健康増進事業報告における受診率の算定法の対象者が変更されたことが考えられます。また、過去に国のがん検診推進事業として、大腸がん検診、乳がん検診では40~60歳の間で5歳おき、子宮頸がん検診では20~40歳の間で5歳おきに無料クーポンが配布されていました。しかし、2016年から大腸がん検診は事業の対象外になり、2017年から子宮頸がん検診と乳がん検診の無料クーポンは検診開始年齢(子宮頸がん検診20歳、乳がん検診40歳)のみになりました。これら無料クーポン対象外の影響が受診率低下につながっていると考えられています。このため、自治体によっては独自の無料クーポンを配布したり、キャンペーンを実施したりして、受診率向上に努めています。
がん検診の受診率向上やがん予防に向けて、大津市では次のような取り組みを行っています。
・胃がんリスク検診(ピロリ菌検査およびペプシノゲン検査)の実施 生涯に一度受診できる胃がんリスク検診を実施。ほとんどの胃がんの原因に関わるヘリコバクター・ピロリ菌の感染の有無と、胃炎の程度から将来の胃がん発症リスクを判定する。対象者は41・46・51・56・61歳かつ過去に胃がんリスク検診を受診したことのない方で、受診費は1,300円。なお、大津市国民健康保険加入者は無料。
・肝炎ウイルス検診(B型・C型)の実施 生涯に一度受診できる肝炎ウイルス検診を実施。肝炎ウイルスは肝臓がんの主因のひとつであり、事前に適切な検査を受けることで肝臓がんの発症リスクを低減することができる。対象者は40歳以上かつ過去に肝炎ウイルス検診を受診したことのない方。40歳全員と過去未受診の41・46・51・56・61歳の方に無料クーポンが配布されるほか、大津市国民健康保険加入者は無料。対象者のうちそれ以外の受診希望者は受診費1,000円(事前申込制)。
・大津市以外でも子宮頸がん検診が受診可能 滋賀県内の子宮頸がん検診登録医療機関であれば、大津市以外でも受診できる。住まいに限らず、職場や学校の近く、用事と一緒に受けることが可能。
・2月4日は「がんについて考える日」TAC(Think About Cancer)キャンペーン 大津市では毎年2月4日を「がんについて考える日」と定め、市民や事業所に「がんの予防や早期発見」や「がんにかかっても安心して療養」ができる暮らし方について考え、できることから取り組んでもらおうというもの。
大津市国民健康保険の被保険者が、人間ドック(1泊2日および日帰り)を受診する場合、その費用の一部が助成されます。指定する受診期間に受診する人間ドックの受診費用が助成対象で、助成内容は下記の通りです。
【助成対象者】下記すべてを満たす方。 ・大津市国民健康保険の被保険者 ・申込日現在、満40歳以上、受診時に75歳未満(※65歳以上75歳未満の後期高齢者医療制度被保険者は除く) ・保険料を滞納していない ・受診時、入院治療を受けていない ・助成金の交付決定日において特定健康診査を受けていない者であって、交付決定日後において特定健康診査を受ける予定がない
【助成額】 人間ドック受診費用の2分の1の額(1,000円未満は切り捨て) ※1泊2日ドックは24,000円、日帰りドックは15,000円が上限(1人につき年1回限り)
【承諾事項】 助成を受けるにあたり、以下について承諾する必要があります。
・受診結果を大津市へ情報提供すること ・受診結果を大津市が実施する特定健康診査・がん検診のデータとして活用すること ・人間ドック利用助成金の交付決定を受けた後に特定健康診査を受けた場合は、助成金を返還しなければならない
募集時期や詳細は大津市サイトで確認してください。
大津市は、健康寿命の延伸に向け、市民の健康への意識づくり、行動変容、環境づくりの3つを基本方針に、さまざまな取り組みを行っています。ユニークな取り組みを紹介します。
・健康推進アプリ「BIWA-TEKU」 楽しみながら運動などの健康増進活動を継続できるよう滋賀県内の市町等が連携して開発した健康推進アプリ。がん検診受診や対象スポットのウォーキングなど、市が指定する健康活動に取り組むことで健康ポイントを取得し、1年間(1~12月)でためた健康ポイントを使って翌年1月の賞品抽選に応募することができる(応募資格19歳以上など応募には一定の条件があり)。
・大津市歯周病検診(30・35・40・45歳、妊婦) 歯周病で歯を失うことなく、いくつになっても自分の歯で食べ続けられるよう、30・35・40・45歳と妊婦に虫歯や歯周病の健診を行っている。
※本記事は2021年9月時点の情報を元に作成しています。