北海道札幌市中央区南1条西5丁目15-2
目次[非表示]
札幌市は北海道の県庁所在地で、1922年から市制を施行した後に近隣町村との合併・編入を繰り返し、1970年には人口が100万人を突破、1972年に政令指定都市に移行しました。政令指定都市とは、地方自治法にもとづき政令によって指定される、人口50万人以上の市を指します。2021年現在、20市が指定されています。
2021年8月現在の人口は約196.2万人(住民基本台帳による)です。国勢調査によれば、札幌市の人口は、1970年から1975年の増加数が20万人を超えるほどで、その後は増加数が少なくなっているものの、現在も人口増加が続いています。なお、日本全体のピークは2008年ですが、北海道全体のピークは1997年で569.9万人です(いずれも国勢調査をもとにした推計人口)。
国立社会保障・人口問題研究所によれば、札幌市の人口は、現状のままでは2030年には約195.9万人に減少すると推計されています。2021年4月における65歳以上の高齢者人口は約54.4万人で、高齢化率は27.7%です。2020年10月の日本全体の高齢化率は28.8%であることから、札幌市の高齢化の進度は全国よりも若干ゆるやかと言えます。
健康寿命とは、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間を指します。日常生活に制限のない、自立した状態で過ごせる期間と言えます。
下記は、札幌市の平均寿命と健康寿命、およびその差です(カッコ内は全国平均)。平均寿命と健康寿命との差(不健康である期間)が長くなるほど医療費や介護費がふくらみ、公費負担が増大する要因になります。
平均寿命※2015年 | 健康寿命※2016年 | 不健康である期間 | |
---|---|---|---|
男性 | 80.7歳(80.8歳) | 71.34歳(72.14歳) | 9.36年(8.66年) |
女性 | 87.2歳(87.0歳) | 72.89歳(74.79歳) | 14.31年(12.21年) |
2016年現在の健康寿命は、男性71.34歳、女性72.89歳で、これは政令指定都市20市のうち男性と女性ともに18位です。男女ともに全国平均を下回っており、政令指定都市の中でも下位に位置しています。札幌市は、健康増進計画「健康さっぽろ21(第二次)」で「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」を目標のひとつとして明記し、健康寿命をさらに伸ばす取り組みを行なっています。
1981年以降、日本人の死因の第1位はがんです。以降、生活習慣病を主因とする疾患が上位を占めています。生活習慣病とは、生活習慣(食、運動、喫煙、飲酒等)が影響する一部のがんや心臓病(心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)、糖尿病などを指します。人口動態調査によると、札幌市と日本全体の死因とその割合は下記のようになっています。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
---|---|---|---|---|---|
札幌市※2017年 | 悪性新生物(がん)31.6% | 心疾患13.3% | 脳血管疾患7.7% | 肺炎7.3% | 老衰5.1% |
日本全体※2019年 | 悪性新生物(がん)27.3% | 心疾患15.0% | 老衰8.8% | 脳血管疾患7.7% | 肺炎6.9% |
札幌市の死因は、日本全体と比べて、悪性新生物による死亡割合が4.3ポイント高くなっています。また、日本全体では死因3位である老衰は5位になっており、札幌市では老衰で亡くなる方より病気で亡くなる方が多いことがわかります。
日本では、厚生労働省の指針に基づき、自治体主導で実施されている「5大がん検診」と呼ばれるがん検診があり、全国各自治体とも受診率の向上を目指しています。5大がん検診は、胃がん、子宮がん(子宮頸がん)、肺がん、乳がん、大腸がんの5つの検診を指します。
5大がん検診は、加入している健康保険の種類に関係なく住民票のある自治体で受診することができます。検診の種類によって対象年齢や頻度は異なりますが、受診費の一部もしくは全額が公費で負担されます。ただし、企業に勤めている方などは、企業による健康診断にがん検診が含まれていることが多いため、自治体主導のがん検診受診者は国民健康保険加入者や後期高齢者医療保険加入者を含む、「勤務先などでの受診機会のない人」が中心です。
札幌市が実施しているがん検診の種類と費用は下記の通りです。太字は、札幌市独自の取り組みです。
種類 | 検査項目 | 対象者 | 受診間隔 | 費用 |
---|---|---|---|---|
胃がん | 問診、胃部X線検査(バリウム)または胃内視鏡検査(胃カメラ) | 50歳以上 | 2年に1回 | ・バリウム集団:700円個別:2,200円・胃カメラ集団:3,200円個別:3,500円 |
子宮がん | 問診、視診、子宮頸部細胞診、内診、または子宮体部細胞診も含む※子宮体部細胞診は医師の判断により実施 | 20歳以上女性 | 2年に1回 | ・子宮頸部集団:1,100円個別:1,400円・子宮頸部+子宮体部集団:1,700円個別:2,100円 |
肺がん | 問診、胸部X線検査、喀痰検査 | 40歳以上 | 年1回 | 無料※喀痰検査は別途400円 |
乳がん | 問診、マンモグラフィ(40歳代:2方向、50歳代:原則1方向)、または乳腺超音波検査(乳腺エコー検査)を含む※乳腺エコーは40歳代の希望者 | 40歳以上女性 | 2年に1回 | ・2方向撮影集団:1,300円個別:1,800円・1方向撮影集団:1,100円個別:1,400円※乳腺エコーは別途800円 |
大腸がん | 問診、便潜血検査 | 40歳以上 | 年1回 | 400円 |
前立腺がん | 問診、血液検査(PSA値) | 50~69歳以上男性 | 年1回 | 500円 |
札幌市のがん検診は、基本的には厚生労働省の指針に沿っています。指針にはない札幌市独自の取り組みとして、子宮体がん検診を医師の判断により実施していることや、乳がん検診では40歳代の希望者に超音波検査を実施していること、前立腺がん検診を行っていることが特長です。
札幌市のがん検診の無料クーポンは下記の通りです。
種類 | 対象者※年齢は当該年度4月1日時点で判定 | 無料になる検査項目 |
---|---|---|
子宮頸がん | 20歳の女性 | 問診、視診、子宮頸部細胞診、内診 |
乳がん | 40歳の女性 | 問診、マンモグラフィ |
上記年齢の市民に対し、当該年度6月下旬頃にクーポンが発送されます。無料クーポン券配布対象者が、クーポン券が届く前に「札幌市の検診」を受診した場合、医療機関へ支払った自己負担金が返金されます。自己負担金返金の対象は、「札幌市の検診」のみで、妊娠中や症状のある方の検査や、人間ドック・職場での検診、過去にかかった病気によって受けた検査などは対象外であり、返金されません。各年度のクーポン券の有効期限は、当該年度3月31日までで、それ以降の検診受診にクーポン券は使用できません。
また、次の方は無料でがん検診を受診することができます。 ・70歳以上の方 ・市・道民税非課税世帯の方 ・後期高齢者医療保険証を持っている方 ・生活保護受給世帯の方 ・中国残留邦人等の支援給付世帯の方
下記は、札幌市が実施した2015年度から2019年度の各がん検診の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
---|---|---|---|---|---|
2015年度 | 8.1% | 44.8% | 3.6% | 36.6% | 17.0% |
2016年度 | - | - | 1.2% | - | 4.8% |
2017年度 | 5.9% | 18.9% | 1.2% | 14.8% | 4.4% |
2018年度 | 4.3% | 20.9% | 1.2% | 14.0% | 4.0% |
2019年度 | 3.4% | 20.8% | 1.5% | 13.2% | 3.6% |
下記は、自治体主導のがん検診における2015年度から2019年度の日本全体の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
---|---|---|---|---|---|
2015年度 | 6.3% | 23.3% | 11.2% | 20.0% | 13.8% |
2016年度 | 8.6% | 16.4% | 7.7% | 18.2% | 8.8% |
2017年度 | 8.4% | 16.3% | 7.4% | 17.4% | 8.4% |
2018年度 | 8.1% | 16.0% | 7.1% | 17.2% | 8.1% |
2019年度 | 7.8% | 15.7% | 6.8% | 17.0% | 7.7% |
札幌市のがん検診受診率は、日本全体と比べて子宮頸がん検診は高いものの、その他においては低い状況です。またどの検診も年々受診率が低下している傾向にあり、これは日本全体においても同様の傾向です。
とくに大きく低下したのは2016年度以降の大腸がん検診、子宮頸がん検診および乳がん検診です。2016年度から一部の受診率が顕著に低下している要因としては、地域保健・健康増進事業報告における受診率の算定法の対象者が変更されたことが考えられます。また、過去に国のがん検診推進事業として、大腸がん検診、乳がん検診では40~60歳の間で5歳おき、子宮頸がん検診では20~40歳の間で5歳おきに無料クーポンが配布されていました。しかし、2016年から大腸がん検診は事業の対象外になり、2017年から子宮頸がん検診と乳がん検診の無料クーポンは検診開始年齢(子宮頸がん検診20歳、乳がん検診40歳)のみになりました。これらが無料クーポン対象外の影響が受診率低下につながっていると考えられています。このため、自治体によっては独自の無料クーポンを配布したり、キャンペーンを実施したりして、受診率向上に努めています。
がん検診の受診率向上やがん予防に向けて、札幌市では次のような取り組みを行っています。がんに関する講演会などのイベントだけでなく、胃がんリスク診断の助成や禁煙外来治療費の助成も行っています。
・胃がんリスク診断 満40歳の市民を対象に、市の補助で行う胃がんリスク診断。血液検査(血清ペプシノゲン検査、ヘリコバクターピロリ抗体検査)で、胃がんの原因となるピロリ菌感染や、胃炎の程度を判定して評価する。通常費用は約6000円かかるが、市の補助により約1000円で受けられる。
・がんに関する正しい知識の普及啓発 「札幌市がん対策普及啓発キャンペーン実行委員会」が行うがん対策の普及活動。これまで、がん対策に関する講演会やリーフレットの作製を実施。小中学生を対象としたがん対策にかかわる川柳の募集も行っている。
・禁煙支援や、禁煙外来治療費の助成 禁煙外来治療費の自己負担額を最大1万円まで助成している。また、札幌市がオリジナルで作成した禁煙応援カレンダーなどの配布や、周囲のサポート方法の紹介などを行っている。
・小中高生に対するがん教育 がん専門の医療従事者や、がん経験者を学校に招き、「がんに関する授業」を実施。小中高生が、がんの正しい知識を身につけるための取り組み。
・がん検診受診の実態調査 がん検診の受診実態を正確に評価するために、札幌市独自で実施する調査。
札幌市では、人間ドックの補助や助成は行っていません。
「機能評価認定施設」とは、日本人間ドック学会が定めている「人間ドック健診施設機能評価」という評価基準をクリアした医療施設です。申請のあった人間ドック施設に対して日本人間ドック学会が受診者目線で審査している取り組みです。
審査項目には、「運営方針、組織の管理体制が確立しているか」や「検査の業務マニュアルは作成されているか」、「感染対策などの危機管理は徹底されているか」といった人間ドックの健診施設側の安全面に関する基準から、「受診者が快適に受診できるように配慮しているか」や「受診者のプライバシーに配慮しているか」といった受診者側に関する基準まで、多角的な評価基準があります。また、評価基準は5年ごとに改定され、更新審査が行われます。
日本人間ドック学会が審査した機能評価認定施設は、全国で410以上の施設が認定されており、このうち札幌市内の機能評価認定施設は2023年8月現在で9施設あります。
マーソでは、機能評価認定施設から人間ドックのプランを探すことができます。くわしくはこちらをご覧ください。
札幌市は、「健康さっぽろ21(第二次)」のなかで「平均寿命の増加分を上回る健康寿命の増加」を目標のひとつとして掲げています。健康寿命の増加に向けて、「生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底」および「社会生活を営むために必要な機能の維持および向上」を基本方針に、さまざまな取り組みを行っています。
・食を通した健康づくりのボランティア 食生活改善推進員養成講座を受講した会員1,600名が、ボランティアとして食育活動を実施。子供から高齢者までを対象とした料理教室の開催や、健康な食生活を伝える食生活改善点などを行っている。
・ウォーキング大会 ウォーキングに取り組むきっかけをつくるために、市民ボランティアとともにウォーキング大会を開催。またさらに多くの市民を対象とするため、公共交通機関と連携して、地下鉄駅から始めるウォーキングマップの紹介なども行っている。
・毎月3日の「さっぽろMU煙デー」 札幌市では、受動喫煙のない空気のきれいな街を目指して定められた毎月3日を「さっぽろMU煙デー」とし、市民一人ひとりが職場や家庭での受動喫煙防止について考え、できることがら始める日としている。
※本記事は2021年6月時点の情報を元に作成しています。