甲状腺ホルモン(TSH、T3、T4)
甲状腺ホルモンの血液検査とは?
のどの前面には、甲状腺という器官があります。甲状腺ホルモンには、脳の下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモン(TSH)と甲状腺から分泌されるホルモンであるサイロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)の2種類があり、血液検査では、血液中に遊離したフリーT3(FT3)とフリーT4(FT4)を測定します。
甲状腺ホルモンの血液検査の目的
甲状腺ホルモンは、身体の代謝を活発させるほか、胎児や子どもの成長に関わりの深いホルモンです。甲状腺ホルモンの血液検査では、甲状腺ホルモンの分泌をコントロールするホルモンや甲状腺から分泌されるホルモンの分泌を調べて、甲状腺の機能を確認します。
甲状腺ホルモンの血液検査で見つけられる病気
血液検査で甲状腺ホルモンを調べることは、次のような病気の診断に役立ちます。
●甲状腺機能低下症(慢性甲状腺炎、単純性甲状腺腫など)
●甲状腺機能亢進症(バセドウ病気、無痛性甲状腺炎、亜急性甲状腺炎など)
等
甲状腺ホルモンの血液検査の見方
甲状腺ホルモンの基準値は、測定するキットにより異なるため、医療機関ごとに数値が設定されています。基準値よりも高かったり、低かったりする場合は、甲状腺の病気の可能性が考えられます。
甲状腺ホルモン(TSH、T3、T4)の長所/短所
甲状腺ホルモンを調べるには、採血で手軽に行うことができます。医療機関によっても異なりますが、検査結果は採血から通常1時間程度で確認できます。
人によっては注射針による痛みを苦痛に感じることがあるかもしれません。採血で極度にストレスを感じると、副交感神経が緊張して、まれに冷や汗、低血圧、顔面蒼白、吐き気などの症状が現われることがあります(「迷走神経反射」といいます)。
採血では、消毒綿や手袋、注射針のなどの物品を使うため、アレルギーを起こす可能性もあります。特に、アレルギーでよくみられるのが、感染予防に使用されるアルコール綿です。アレルギーに心当たりのある人はあらかじめ、採血を担当する医療スタッフに伝えるようにしましょう。
また、採血の手技によっては神経損傷が生じることがあります。神経損傷は、注射の針先が神経に触れることで起こります。採血時にピリッとした刺激を感じたときは、採血の担当スタッフに伝えるようにしましょう。採血による神経損傷の多くは、2~3ヶ月で自然に治ります。
なお、採血後には、アザなど皮下血種ができることがありますが、数日以内で自然に吸収されます。
甲状腺ホルモン(TSH、T3、T4)の流れ
甲状腺ホルモンを調べるには、採血が行われます。ここでは、腕からの採血の具体的な流れについて説明します。
1. ひじの内側など血管がはっきりと確認できる部分を露出させ、専用の小さな台に腕を乗せる。
2. 上腕部を「駆血帯」と呼ばれるひもやベルトで締める。
3. アルコール綿で消毒し、注射針を刺す。
4. シリンジ内の検体が血液でいっぱいになったら、アルコール綿で抑えながら針を抜く(ほかの項目の血液検査を行うために、複数の検体を取ることがある)。
5. 注射した部位に絆創膏を貼る。血が止まるまでの数分間、自身で圧迫しておく。
6. 完全に止血したら、絆創膏を剥がす。
この記事の監修ドクター

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)