血沈
血沈とは?
血液検査における血沈とは赤血球沈降速度や赤沈とも呼ばれ、赤血球が試薬内を沈んでいく速さを調べる項目です。血液が固まることがないようにする抗凝固剤という試薬が入った試験管のなかに血液を入れて、1時間後に赤血球が何mm沈んだかを測定する検査です。
血沈を調べる目的
血沈は、体内に炎症を伴う疾患があるかを調べる目的で行います。
血沈の血液検査で見つけられる病気
血液検査の血沈によって、病気があるかどうかを把握することはできますが、どの病気にかかっているかを特定することはできません。しかし、基準値より高い場合には、次のような病気があることが推測されます。
●肺炎、結核、気管支炎、梅毒などの感染症
●心筋梗塞、心内膜炎、心筋炎などの心臓病
●肝炎、胆のう炎、潰瘍性大腸炎など消化器病
●白血病、悪性貧血などの血液病
●がん など
基準値より低い数値の場合には、次のような病気があることが推測されます。
●多血症 など
血沈の結果数値の見方
血液検査における血沈の基準値は、男性2~10mm/1h、女性3~15mm/1hです(国立がん研究センターより)。
血沈の血液検査の長所/短所
血沈の長所は、血液検査のため採血で手軽に行うことができる点です。一方短所は、血沈のみで疾患名を判断できない点です。
また、人によって注射針による痛みを苦痛に感じる人もいるかもしれません。極度にストレスを感じることで、副交感神経が緊張して、冷や汗、低血圧、顔面蒼白、吐き気などの症状が現われることがあります(「迷走神経反射」といいます)。
採血では、消毒綿や手袋、注射針のなどの物品を使うため、人によってはアレルギーが起こることがあります。とくにアレルギーとなりやすいのが、感染予防に使用されるアルコール綿です。アレルギーに心当たりのある人はあらかじめ、採血を担当する医療スタッフに伝えるようにしましょう。
さらに、採血の手技によっては神経損傷が生じることがあります。神経損傷は、注射の針先が神経に触れることで起こります。採血時にピリッとした刺激を感じたときは、採血の担当スタッフに伝えるようにしましょう。なお、採血による神経損傷の多くは、2~3ヶ月ほどで自然に治ります。
採血後には、アザなど皮下血種ができることがありますが、数日以内で自然に吸収されます。
血沈の血液検査の流れ
血沈を調べる血液検査では、採血を行います。ここでは、腕からの採血の具体的な流れについて説明します。
1. ひじの内側など血管がはっきりと確認できる部分を露出させ、専用の小さな 台に腕を乗せる。
2. 上腕部を「駆血帯」と呼ばれるひもやベルトで締める。
3. アルコール綿で消毒し、注射針を刺す。
4. シリンジ内の検体が血液でいっぱいになったら、アルコール綿で抑えながら 針を抜く
(ほかの項目の血液検査を行うために、複数の検体を取ることがある)。
5. 注射した部位に絆創膏を貼る。血が止まるまでの数分間、自身で圧迫しておく。
6. 完全に止血したら、絆創膏を剥がす。
<参考>
国立研究開発法人国立がん研究センター「臨床検査基準値一覧」2019年11月版
この記事の監修ドクター

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)