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この検査は何のための検査?

フェリチン

フェリチンとは?

フェリチンは、体内で鉄をためておく“貯蔵鉄”の働きを持つタンパク質です。全身の細胞に存在していますが、血液中にもわずかに存在しています。血液中のフェリチンの値は全身の貯蔵鉄量と相関性が高いため、体内の貯蔵鉄の量を推定する検査として有用であるとされています。

フェリチンを調べる目的

体内には成人で約3~5gの鉄が存在しています。食事などから体内に取り込まれた鉄は、トランスフェリンと結合し全身に運ばれたり、全身の細胞で利用されたりしますが、鉄は筋肉にも多いためほとんどはヘモグロビンの一部として赤血球に含まれ酸素運搬を助けています。120日程度の寿命が尽き、古くなった赤血球はマクロファージによって処理されますが、ヘモグロビンから取り出された鉄は、タンパク質のフェリチンに付き「貯蔵鉄」として肝臓や脾臓に蓄えられ、新しく赤血球がつくり出される際に利用されます。つまり、血液検査でフェリチン(血清フェリチン)の量を測定することは、貯蔵鉄の量を推測できることになります。

フェリチンの血液検査で見つけられる病気

血液検査でフェリチンを調べることは、次のような病気の診断に役立ちます。
●鉄欠乏
●鉄欠乏性貧血
●鉄過剰
●悪性貧血
●肝疾患
●悪性腫瘍
●感染症
●炎症  など

フェリチンの検査数値の見方

体内の鉄は、吸収と喪失のバランスが取れていれば問題ありません。具体的には、胃や腸などの消化管や、汗や皮膚細胞に含まれる鉄が排泄されることで1日1~2mg失われていますが、その分は食事に含まれる鉄を吸収し補充するため、通常であれば鉄が不足するということはありません。しかし、思春期や妊娠などによって鉄の需要が大きくなる場合や、鉄の摂取量が少ない、鉄の吸収状況がよくないなど供給が低下している場合、逆に消化管出血や婦人科系疾患、月経などによる鉄の喪失がある場合などは、鉄不足が起こります。鉄が不足すると、まずは貯蔵鉄から補充される仕組みになっているため、フェリチンの値が低くなるため、鉄欠乏の指標となります。この段階では「貧血のない貯蔵鉄欠乏状態」といえます。鉄が不足している時の次の仕組みとして、血液中の鉄(血清鉄)から補い、最終的にヘモグロビンから補うようになるため、早期に鉄欠乏の状態を知ることができます。

フェリチン1ng/mlは貯蔵鉄8~10mgに相当し、フェリチン25~250ng/ml、貯蔵鉄量200~2000mgが正常域(日本鉄バイオサイエンス学会より)とされています。基準値は測定方法や性別によって違いがありますが、女性では10ng/ml、男性では20mg/ml以下で低値のため鉄欠乏(日本臨床検査医学会より)、500ng/ml以上になると鉄過剰(日本鉄バイオサイエンス学会より)とされます。

フェリチンは貯蔵鉄量を推定するために有用で、鉄欠乏や鉄過剰の診断に役に立つ検査です。ただし、鉄の代謝の仕組みからも、フェリチン検査だけで鉄欠乏以外の診断はできません。たとえば貧血の診断にはヘモグロビン測定値や赤血球恒数(MCV, MCH, MCHC)を、鉄欠乏性の貧血かどうかにはTIBC検査を合わせて実施し判断されるものです。鉄欠乏には原因があるため、鉄を補うだけでなく、原因に対しての治療を第一におこなうことになります。

また、鉄過剰ではなくてもフェリチンの値が高値になることもあります。たとえば、肝臓が障害されると貯蔵されていた鉄が出てしまうため、肝疾患ではフェリチンの値が高値になります。他にも感染症や悪性腫瘍でも高値になることがあります。悪性腫瘍では、他の腫瘍マーカーと併せてフェリチン検査も非特異的マーカーとなり、腫瘍のスクリーニング検査に利用されることもあります。

フェリチンの血液検査の長所/短所

フェリチンを調べる血液検査は、採血で手軽に行うことができますが、検査結果が出るまでの時間は検査を行う医療施設によって変わります。

いずれも採血による血液検査となりますが、人によっては採血の際に注射針による痛みや、ストレスを感じる人もいるかもしれません。採血のときに冷や汗や吐き気を感じたり、血圧低下、顔面蒼白がみられたりした場合は、副交感神経の緊張で起こる「迷走神経反射」が原因です。

また、採血で使用する物品に対するアレルギー反応を起こすことがあります。とくに、感染予防で使用するアルコール綿には、アルコールが含まれています。アレルギーが心配な人はあらかじめ、採血を担当する医療スタッフに伝えておきましょう。

また、注射針の先が神経に触れると、神経障害が生じる可能性もあります。針を刺したときにピリッとした刺激を感じたときは、我慢をせずに採血を担当する医療スタッフに伝えましょう。
採血後、場合によっては皮下血腫やアザができることがありますが、数日以内で自然に吸収されます。

フェリチンの血液検査の流れ

血液中のフェリチンを調べるには、採血が行われます。ここでは、腕からの採血の具体的な流れについて説明します。

1.ひじの内側など血管がはっきりと確認できる部分を露出させ、専用の小さな台に腕を乗せる。
2.上腕部を「駆血帯」と呼ばれるひもやベルトで締める。
3.アルコール綿で消毒し、注射針を刺す。
4.シリンジ内の検体が血液でいっぱいになったら、アルコール綿で抑えながら針を抜く(ほかの項目の血液検査を行うために、複数の検体を取ることがある)。
5.注射した部位に絆創膏を貼る。血が止まるまでの数分間、自身で圧迫しておく。
6.完全に止血したら、絆創膏を剥がす。

<参考>
日本鉄バイオサイエンス学会「鉄剤の適正使用貧血治療指針 改定[第2版]」

日本臨床検査医学会「臨床検査のガイドラインJSLM2018」

この記事の監修ドクター

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)
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