VSRAD®（脳萎縮評価支援システム）
脳萎縮評価支援システムVSRAD®とは？
VSRAD®はVoxel-Based Specific Regional Analysis System for Atrophy Detectionの頭文字をとったもので、「ブイエスラド®」と読みます。アルツハイマー型認知症の早期診断を支援するためのプログラムで、事前にMRI装置で撮影した脳の画像を使用します。
VSRAD®には事前に収集された54〜86歳の健常な男女80名の脳画像が実装されており、その画像データと比較することで検査対象者の脳内萎縮の有無や程度を分析しています。
VSRAD®を使用する目的
VSRAD®（ブイエスラド®）では、とくにアルツハイマー型認知症において特異的に萎縮の見られる領域（関心領域）の萎縮の程度を調べることで、アルツハイマー型認知症を早期に発見することを目的にしています。
VSRAD®で扱う関連領域としては、内側側頭部（海馬、扁桃、嗅内野の大部分）と背側脳幹があります。
アルツハイマー型認知症においては、海馬と呼ばれる記憶を司る脳分野など、いくつかの部位において、早期から萎縮が見られることが知られています。
VSRAD®で見つけられる病気
VSRAD®（ブイエスラド®）は、下記の診断に役立ちます。
アルツハイマー型認知症
VSRAD®の結果の見方
VSRAD®（ブイエスラド®）では、撮影した脳の画像（スライス画像と脳全体の画像）が表示されるほか、萎縮の程度を数値化した2つの指標が得られます。
ひとつめはVOI内萎縮度と呼ばれる指標で、内側側頭部の萎縮の程度を示す指標です。0以上の数字で表され、0の場合は萎縮なし、数字が大きくなるほど萎縮の程度が高くなります。
ふたつ目はVOI間萎縮比と呼ばれる指標で、下記の計算式で求められます。
（背側脳幹のVOI内萎縮度）÷（内側側頭部のVOI内萎縮度）
内側側頭部と背側脳幹のどちらがより萎縮が進んでいるかをみるもので、医師が診断のためとくに必要な場合に参照されます。
VSRAD®の長所/短所
通常のMRI撮影に加え6分程度長めに撮影を行うだけで検査を行うことができます。また、これまでの画像診断では発見が難しかった初期の病変についても見つかる可能性が高くなっています。
しかし、VSRAD®（ブイエスラド®）はあくまで診断の助けという位置づけであり、この検査だけで確定診断を行うことができない点については注意が必要です。また、脳内の萎縮度には個人差が大きく、とくに若年である場合や、広範囲に脳梗塞がある場合などでは正確な結果が得られない可能性があります。比較対象データが実装されている54歳以上の患者を対象に検査を行なっている医療施設が多いです。
また、VSRAD®ではMRIを使用した画像の撮影が必須です。検査中は狭い機械の中で30分程度動かずにいることが必要となり、閉所恐怖症の人や、長時間動かずにいることに耐えられない人には向きません。
また、磁気を利用して撮影する検査方法のため、金属を身につけていると強大な磁力に引き寄せられ、重大な事故に発展したり、検査機械の故障につながったりする恐れがあります。そのため、検査の際には身につけている金属類をすべて外すことが必要です。過去の治療などで体内に金属を埋め込んでいる場合、素材や部位によっては検査ができない可能性もありますので、事前に担当医に申告する必要があります。
VSRAD®を利用した検査の流れ
VSRAD®（ブイエスラド®）による検査は、MRI装置で事前に撮影した脳画像を使用するため、受診者にとっては通常のMRI検査とほぼ同じです。撮影時間は一般的なMRI検査よりも6分程度長くなります。
１．検査前に金属類を外す
２．検査台に仰向けになる
３．そのまま検査が終わるまで動かないで40分程度待機
※VSRAD®およびブイエスラド®は、エーザイ・アール・アンド・ディー・マネジメント株式会社の登録商標です。
＜参考＞
エーザイ株式会社「ブイエスラドの概要」
エーザイ株式会社「（検査を受けられる患者様へ）ブイエスラド®について」パンフレット
この記事の監修ドクター
マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム（現・先端医療社会コミュニケーションシステム）を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院（福島県いわき市）・ナビタスクリニック（立川・新宿）内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』（光文社新書）
