尿沈渣
尿沈査検査とは?
尿沈渣(にょうちんさ)検査とは、採尿した尿を遠心分離器で液体と固体に分離し、固体にどんな成分があるのかを顕微鏡で確認する検査です。
尿沈渣検査の目的
尿沈渣検査をすることで、腎臓、膀胱、尿道などの異常を知り、病気の診断に役立てることができます。尿沈渣検査は試験紙で行う尿検査に比べ、より詳しく正確な情報を得ることができます。そのため、試験紙による尿検査で異常があった場合には尿沈渣検査を行います。
尿沈渣検査で見つけられる病気
尿沈渣検査をすることで、次のような病気の診断に役立てることができます。
●赤血球がある場合:糸球体腎炎、腎盂腎炎、膀胱炎、尿路結石、腎臓腫瘍など、出血をともなう病気。赤血球は出る部位によって形状が違うため、赤血球を顕微鏡で確認することで、どこの部位から出血しているのかを知ることができます。
●白血球がある場合:糸球体腎炎、腎盂腎炎、膀胱炎、前立腺炎など、炎症をともなう病気。尿沈渣検査では白血球の種類までわかるため、病気を特定する手がかりにできます。
●細菌がある場合:腎盂腎炎、膀胱炎など、腎臓や尿路が細菌に感染することで起こる病気。細菌の種類を特定することで、診断に役立てることができます。
●上皮細胞がある場合:その上皮細胞の部位に炎症が起こっている可能性があります。
●異常のある円柱細胞がある場合:腎炎、ネフローゼ症候群、糖尿病性腎症などのほか、円柱細胞ができる尿細管やその上にある糸球体の病気が疑われます。
尿沈渣検査の結果数値の見方
尿沈渣の基準値は次のようになっています(京都大学病院より)。なお、単位であるHPF(high power field)は高倍率視野(400倍視野)、LPF(low power field)は低倍率視野(100倍程度の視野)を指します。
赤血球:1~4以下/HPF
白血球:1~4以下/HPF
扁平上皮細胞:男性1未満/HPF、女性1~4以下/HPF
硝子円柱:1以下/LPF
細菌:1+以下/HPF
女性は排尿部分の形状から、排尿後の尿に白血球と扁平上皮が混ざりやすくなっています。そのため男性より女性のほうが、扁平上皮の基準値が高くなります。
尿沈渣検査の長所/短所
尿沈渣検査のメリットは、少量の尿で手軽に検査できるところです。検査結果も、医療施設によって20分程度でわかるところもあります。
デメリットは、尿の状態によって検査結果が変わってしまうところです。採尿した尿は、時間が経つごとに状態が変化していきます。そのため正確な結果を知るためには、できるだけ新鮮な尿を検査することが大切です。
採尿時の体調によっても、検査結果が変わることがあります。月経中には採尿に赤血球が混じってしまうため、正確な結果を知ることができません。薬を服用している場合にも、検査結果に影響を与えることがあります。激しい運動後には、蛋白質が増えることもあります。尿沈渣検査は、リラックスした状態で受けるようにしましょう。月経中、服用している薬がある場合には、あらかじめスタッフに申し出てください。
尿沈渣検査の流れ
尿沈渣検査の流れは以下のようになっています。
1.採尿する。
2.尿を遠心分離器にかけ、液体と固体に分離させる。
3.固体を顕微鏡で確認し判定する。
<参考>
京都大学医学部附属病院検査部 検査項目情報(一時サンプル採取マニュアル)
この記事の監修ドクター

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)