尿比重
尿比重検査とは?
尿検査における尿比重とは、試験紙を使って尿に含まれている成分の濃度を調べる検査です。尿は90%以上が水分で、その他に尿酸、アンモニア、クレアチニン、塩分などいろいろな成分が含まれています。
尿比重を調べる目的
腎臓には、身体の水分量を調節する働きがあります。尿比重検査は、この働きを確認する目的をもっています。腎臓に疾患があったり機能が低下したりすると、身体の水分量を調節することができなくなり、尿比重が基準値から外れてしまいます。尿を濃縮する機能が低下すると希釈尿(薄い尿)となり、尿を希釈する機能が低下すると濃縮尿(濃い尿)となってしまいます。尿崩症は尿を濃縮する機能が低下するため、希釈尿が多く排尿されます。
尿に含まれている成分の量を知ることで、病気の診断を助ける目的もあります。糖尿病は尿に糖が、ネフローゼ症候群は尿にタンパクが多く含まれるため濃縮尿になります。
尿比重は水分摂取量や体調によっても変化するため、水分が不足していないかどうかの参考にすることもできます。水やアルコールなど大量の水分を摂ったときには希釈尿になり、大量の発汗や下痢などで水分を失うと濃縮尿になります。
尿比重検査で見つけられる病気
尿比重を調べることで、次のような病気や状態の診断に役立てることができます。
【基準値より低い場合】
●尿崩症
●急性腎不全
●腎盂炎
●多量の水分摂取 など
【基準値より高い場合】
●糖尿病
●ネフローゼ症候群
●脱水
●下痢や嘔吐
●大量の発汗 など
尿比重検査の結果数値の見方
尿比重の基準範囲は、1.005~1.022です(国立がん研究センターより)。
1.004以下は比重の低い低比重尿(希釈尿)、1.026以上は比重の高い高比重尿(濃縮尿)となります。
尿比重検査の長所/短所
尿比重検査のメリットは、少量の尿で手軽に検査できるところです。検査結果も数分でわかります。
デメリットは、尿の状態によって検査結果が変わってしまうところです。採尿した尿は、時間が経つごとに状態が変化していきます。時間が経つと尿が濃縮して高比重になってしまうため、正確な結果を知るためにもできるだけ新鮮な尿を検査することが大切です。
採尿時の体調によっても、検査結果が変わることがあります。月経中には採尿に赤血球が混じってしまうため、正確な結果を知ることができません。薬を服用している場合にも、検査結果に影響を与えることがあります。月経中、服用している薬がある場合には、あらかじめスタッフに申し出てください。
水分摂取量や食事内容も検査結果に影響を与えるので、水分摂取や食事内容のバランスを整えるようにしましょう。激しい運動をして発汗が増えると濃縮尿になりやすくなるため、検査前の運動は控えるようにしてください。運動後に水分補給をすることも大切です。
尿比重検査の流れ
尿比重検査の流れは以下のようになっています。
1.採尿する。
2.試験紙に尿をつける。
3.試験紙の色の変化と判定表を照らし合わせて判定する。
<参考>
国立研究開発法人国立がん研究センター「臨床検査基準値一覧」2019年11月版
この記事の監修ドクター

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)