抗DNA抗体
抗DNA抗体とは?
自分の細胞を攻撃してしまう抗体を自己抗体と呼び、自己抗体のうち、細胞の核を攻撃するものを抗核抗体と呼びます。さらに抗核抗体のうち、DNAを攻撃するものが抗DNA抗体です。抗DNA抗体には、抗ds-DNA抗体と抗ss-DNA抗体があり、それぞれ膠原病(自己免疫疾患)の診断に役立ちます。
そもそも抗体とは病原体が体内に入った際、病原体を排除しようとする物質で、広く免疫ともよばれます。DNAとは生物の身体を作り出す情報で広く遺伝子ともよばれます。
抗DNA抗体を調べる目的
本来、外部からのウイルスや細菌から守るために機能する抗体ですが、なんらかの原因により自分自身を攻撃してしまう抗体を作ってしまう病気を膠原病(自己免疫疾患)と言います。血液検査における抗DNA抗体は、膠原病(自己免疫疾患)のうち、DNAを攻撃されることで起きる病気を診断するためのものです。
抗DNA抗体の血液検査で見つけられる病気
抗DNA抗体を血液検査で調べることは、次のような病気の診断に役立ちます。
【抗ds-DNA抗体が高値の場合】
●全身性エリテマトーデス(SLE)
【抗ss-DNA抗体が高値の場合】
●全身性エリテマトーデス(SLE)
●全身性強皮症
●シェーグレン症候群
●混合性結合組織病
●関節リウマチ
●自己免疫性肝炎
など
抗DNA抗体の結果数値の見方
血液検査における抗DNA抗体の基準値は以下の通りです(京都大学医学部附属病院より)。なお、検査方法によって基準値が異なります。検査を受ける医院で基準値を確認するとよいでしょう。
●抗DNA抗体 6.0IU/ml以下(RIA方式)
●抗ds-DNA抗体 12.0IU/ml以下(ELISA方式)
●抗ss-DNA抗体 25.0AU/ml以下(ELISA方式)
抗DNA抗体の血液検査の長所/短所
抗DNA抗体の血液検査は、採血のみで行えます。医療機関やその他の検査項目にもよりますが、1時間程度で結果が出る手軽な検査です。
採血は、針を刺しますので痛みを伴います。先端恐怖症の方や痛みが苦手な方は苦痛が大きいでしょう。針を刺す前のアルコール消毒で肌が荒れてしまう人もいます。アルコールアレルギーがある方は、非アルコール性の消毒がある場合もあるので事前に伝えておきましょう。
また、針を刺すことで、神経損傷を起こしてしまうこともあります。頻度として1万回から10万回に1回と言われており、大抵の人は2~3ヶ月ほどで自然治癒します。万が一採血時にピリッとした痛みがあればその場で伝えましょう。なお、採血後に青くアザになってしまったりすることがありますが、数日で消失します。
抗DNA抗体の血液検査の流れ
抗DNA抗体を調べる血液検査は、採血が行われます。ここでは、腕からの採血の具体的な流れについて説明します。
1. ひじの内側など血管がはっきりと確認できる部分を露出させ、専用の小さな台に腕を乗せる。
2. 上腕部を「駆血帯」と呼ばれるひもやベルトで締める。
3. アルコール綿で消毒し、注射針を刺す。
4. シリンジ内の検体が血液でいっぱいになったら、アルコール綿で抑えながら針を抜く(ほかの項目の血液検査を行うために、複数の検体を取ることがある)。
5. 注射した部位に絆創膏を貼る。血が止まるまでの数分間、自身で圧迫しておく。
6. 完全に止血したら、絆創膏を剥がす。
この記事の監修ドクター

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)