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この検査は何のための検査?

hANP

hANPとは?

血液検査におけるhANPとは、ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(human atrial natriuretic peptide)を省略した言葉で、ハンプと読みます。ANPと記載されることもあります。心臓内部、おもに心房という部分で合成・貯蔵され、血中に分泌されるホルモンです。心臓病の前段階や体液量の増加などによって、心臓に負荷がかかり心筋に伸縮刺激が加わると分泌されます。

浮腫を伴うような心臓に関係する病気の診断、心機能および腎機能障害の診断や重症度の判定、血液透析における体重管理に有用です。hANPは利尿作用、血管弛緩、血圧や体内の塩分を保つ働きがあるホルモンのレニン・アルドステロン分泌抑制、循環血漿量減少などさまざまな作用があり、この作用から生体の体液バランス、血圧調節に関与すると考えられているホルモンです。

hANPを調べる目的

血液検査におけるhANP検査は、浮腫を伴う疾患の診断に有用です。特に心機能の状態や機能障害の診断および重症度の判定、血液透析における体液量の管理の上で重要な指標となります。そのため、循環器系の病気を調べることを目的とした場合に検査が行われ、病気が重症になればなるほど値も高くなっていきます。しかし、この値のみですべての病態を正確に判断することは難しいため、ほかの検査と組み合わせて診断をしていきます。

なお、人工透析を行っている場合、透析の前後でhNAP検査を行います。これは、透析による除水(余分な水分を排出すること)の指標にもなるためです。

hANPの血液検査で見つけられる病気

血液検査でhANPを調べることは、下記の病気の診断に役立ちます。の値が基準値より高い場合には以下の病気や状態の可能性があります。

【hANP値が基準値より高い場合】
 ●うっ血性心不全
 ●本態性高血圧
 ●慢性腎不全
 ●心筋梗塞
 ●心房性不整脈
 ●ネフローゼ症候群
 ●肝硬変
 ●妊娠高血圧症候群
 ●甲状腺機能亢進症
 ●原発性アルドステロン症
 ●体液量増加
 ●輸液過剰
など

【hANP値が基準値より低い場合】
 ●尿崩症
 ●甲状腺機能低下症
 ●脱水
 ●食塩摂取制限時
など

hANP検査の結果数値の見方

血液検査におけるhANPの基準値は43.0pg/mL以下です(京都大学医学部附属病院より)。そのため、この値よりも高いか、低いかでどの病気の可能性があるのかが変わってきます。心房の進展刺激によって分泌されるため、心房圧の上昇や体液量の増加をきたす疾患や病態では異常高値を示します。

透析中の患者がhANP検査を受けた場合、透析前後で値が大きく変動し、透析前は高い値が出て、透析後には低い値が出てくるようになります。

病気の有無や進行具合を調べるためにはhANP検査だけでなく、Na、K、BUN、Cr、アンギオテンシンI・II、アルドステロンといった値も一緒に検査を行い、総合的なデータを元に病気の状態を判断する必要があります。

hANPの血液検査の長所/短所

hANPを調べる血液検査は、採血で手軽に行うことができます。検査結果が出るまでの時間は検査を行う医療施設によって変わりますが、スクリーニング等でhANP検査を行う場合は、採血から概ね2~3日程度で結果を確認できます。hANPを調べている検体は不安定なため、血液が溶血してしまうと検査の値に影響が出てしまうこともあります。検体が溶血してしまった場合には、値が低く出ることもあります。

hANPは採血による血液検査となりますが、人によっては採血の際に注射針による痛みや、ストレスを感じる人もいるかもしれません。採血のときに冷や汗や吐き気を感じたり、血圧低下、顔面蒼白がみられたりした場合は、副交感神経の緊張で起こる「迷走神経反射」が原因です。

また、採血で使用する物品に対するアレルギー反応を起こすことがあります。とくに、感染予防で使用するアルコール綿には、アルコールが含まれています。アレルギーが心配な人はあらかじめ、採血を担当する医療スタッフに伝えておきましょう。

また、注射針の先が神経に触れると、神経障害が生じる可能性もあります。針を刺したときにピリッとした刺激を感じたときは、我慢をせずに採血を担当する医療スタッフに伝えましょう。

採血後、場合によっては皮下血腫やアザができることがありますが、数日以内で自然に吸収されます。

hANPの血液検査の流れ

hANPの血液検査では採血をして調べるため、ここでは採血の流れを説明していきます。

1. ひじの内側など血管がはっきりと確認できる部分を露出させ、専用の小さな台に腕を乗せる。
2. 上腕部を「駆血帯」と呼ばれるひもやベルトで締める。
3. アルコール綿で消毒し、注射針を刺す。
4. シリンジ内の検体が血液でいっぱいになったら、アルコール綿で抑えながら針を抜く(ほかの項目の血液検査を行うために、複数の検体を取ることがある)。
5. 注射した部位に絆創膏を貼る。血が止まるまでの数分間、自身で圧迫しておく。
6. 完全に止血したら、絆創膏を剥がす。

<参考>
京都大学医学部附属病院検査部 検査項目情報(一時サンプル採取マニュアル)

この記事の監修ドクター

上 昌広(かみ まさひろ)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所理事長
マーソ株式会社 顧問
1993年東京大学医学部卒。1999年同大学院修了。医学博士。
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。
山本 佳奈(やまもと かな)
この記事の監修ドクター
医療ガバナンス研究所 研究員
1989年生まれ。滋賀県出身。医師。
2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)
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