脳PET検査
脳PET検査とは?
脳PET検査は、とくに脳領域に限定したPET検査のことを言います。PET検査とは、がん細胞が好むブドウ糖を身体へ注入して、ブドウ糖が集まっている部位を調べる検査です。人間の細胞はブドウ糖をエネルギー源にしています。そのなかでも、がん細胞は健康な細胞に比較して3倍以上のブドウ糖を細胞内に取り込むという性質を利用した検査方法です。
PET検査で使用するブドウ糖は実際のブドウ糖とは異なります。ブドウ糖に放射性同位元素を付着させた「FDG」というものを使用します。がん細胞にFDGが取り込まれ、それをPETで撮影すると放射性同位元素ががん細胞の部位を示すという原理です。
脳PET検査の目的
脳PET検査では、脳にできるがんである「脳腫瘍」を発見するため、また、脳腫瘍の位置を特定するために行われます。また、近年
ではアルツハイマー型認知症など、他の疾患を見つけるためにも役立つことが認められてきています。
そのほか、脳全体に十分な血液が流れているかを検査することで、脳卒中などの有無や程度を測る検査としても利用されています。
脳PET検査で見つけられる病気
脳PET検査を行うことで、次のような病気の診断に役立てることができます。
●脳腫瘍
●アルツハイマー型認知症
●てんかん
●脳卒中
など
脳PET検査結果の見方
PET検査ではブドウ糖が集積している部分だけ、黒く写ります。そのため、画像内でほかの場所よりも黒く写っている場所があった場合、がん細胞である可能性があります。
また、FDGの集まり具合からがん細胞の有無を判定し、良性か悪性かの判別も可能です。
脳PET検査の長所/短所
PET検査はがん細胞がまだ小さいうちから発見できることも多く、脳腫瘍の早期発見につなげることができます。
一方で、PET検査だけで脳腫瘍と確定診断することはできず、あくまで補助的な検査であるという短所もあります。また、脳はもともとブドウ糖を必要とする量がほかの臓器に比べて多く、ブドウ糖が集積しやすい特徴があるため、脳PETの結果の判断にはとくに専門性が求められます。
PET検査の特徴として、検査で使用したFDGから放射線が放出するため、被曝を避ける意味で妊娠中の人や妊活中の人や幼児が近づかないような注意が必要という点もあります。
脳PET検査の流れ
脳PET検査の流れは、以下のようになっています。
1. 検査前6時間から絶食する
2. 体重と血糖値を測定する
3. FDGを静脈注射で入れる
4. 約1時間安静にする
5. 検査台に寝て撮影する
6. 体内のFDGが減少するまで待機
この記事の監修ドクター

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)