下肢動脈エコー検査
下肢動脈エコー検査とは?
下肢動脈エコー検査とは、超音波で作り出される画像によって、下肢の動脈にできた病変や血液の流れをリアルタイムに観察できる検査です。検査は、ベッドに仰向けになり足全体にエコーゼリーを塗り、超音波を発するプローブ(深触子)を軽く押し当てるだけの簡単な検査です。
下肢動脈エコー検査の目的
下肢動脈エコー検査の目的は、下肢動脈にできる動脈硬化の程度や血栓の有無などを調べることです。それによって、足の血管病(血管疾患ともいう)を早期に発見することです。
足の血管病には、動脈硬化が進行して発症する閉塞性動脈硬化、血管の炎症によって発症するバージャー氏病などがあります。閉塞性動脈硬化(ASO)とバージャー氏病(TAO)では、足の冷感やしびれ、歩くとふくらはぎが痛くなる間欠性跛行(かんけつせいはこう)、安静時痛などの症状が出ます。最終的には足に栄養が行かなくなり潰瘍や壊死(えし)が起こるため、足を切断することになる可能性があります。
下肢動脈エコー検査では、このような血管病を早期に発見することができます。また血栓が原因で発症する急性動脈血栓症の予防にも役立ちます。
下肢動脈エコー検査で見つけられる病気
下肢動脈エコー検査で下肢動脈を調べることで、次のような病気や症状の発見につながります。
●閉塞性動脈硬化症
●バージャー氏病
●動脈狭窄
●動脈硬化
●血栓症 など
下肢動脈エコーの検査結果の見方
下肢動脈エコー検査は、基本的には超音波で得た画像の情報から医師が診断を行います。
下肢動脈エコー検査によって得られた超音波の情報をカラードップラー法とパルスドップラー法に切り替えることで血管の様子がリアルタイムで観察できます。
カラードップラー法では、モニター上で、プローブに近づく血流が赤色、遠ざかる血流が青色で表示され、血管壁の肥厚や石灰化、血管の狭窄などを発見できます。
パルスドップラー法では、心臓の動きに合わせPSV(収縮期最高血流速度)とEVD(拡張末期血流速度)、AT(収縮期加速時間)を測定することができます。これらは下肢動脈内にできた狭窄部位で異常値を示します。
下肢動脈エコー検査の長所/短所
下肢動脈エコー検査は、リアルタイムで下肢動脈を流れる血液の動きがわかることから、その場で血管壁の肥厚や狭窄の箇所、動脈硬化の程度、血栓の有無などを医師が診断できます。検査時間は30分くらいです。
下肢動脈エコー検査は超音波を使用する検査で、レントゲン検査やCT検査のように被爆の心配はありません。そのため小児や妊婦でも検査が受けられます。
下肢動脈エコーの流れ
下肢動脈エコー検査の流れは下記のとおりです。
1.短パンに着替えベッドで仰向けになる。
2.エコーゼリーを塗布する。
3.部屋を暗くする。
4.エコーゼリーを塗った箇所にブローブを滑らせ検査する。
5.検査後はエコーゼリーを拭き取ってから着替える。
この記事の監修ドクター

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)