腫瘍マーカー CYFRA
腫瘍マーカーCYFRAとは?
腫瘍マーカーCYFRA(シフラ)の血液検査は、血液中に含まれる「サイトケラチン19フラグメント」という物質の量を調べる検査です。
腫瘍マーカーは、がんにかかっているときに増えるタンパク質や酵素の量を調べる検査です。がんになると、がん細胞が特異的な物質を産生するようになり、血液や尿、体液に存在するようになります。
腫瘍マーカーにはいくつかの種類があり、健康時でもみられる物質もあります。
腫瘍マーカーCYFRAを調べる目的
腫瘍マーカーCYFRAの血液検査で調べる「サイトケラチン19フラグメント」は、「サイトケラチン」が分解されてできる物質です。サイトケラチンは、細胞の形を維持するための繊維性タンパク質です。
がん細胞によりタンパク質の分解酵素が活性化して、細胞の破壊が見みられると増えることが分かっています。検査では、非小細胞肺がんの有無の可能性を知ることができます。なかでも、非小細胞肺がんである扁平上皮がんや腺がんに対して、陽性率が高くなります。扁平上皮がんは、呼吸器の通路にある「扁平上皮細胞」から発生するがんで、腺がんは肺の内側から発生するがんです。
腫瘍マーカーCYFRAの血液検査は、がんの治療効果を確認するのにも役立ちます。
腫瘍マーカーCYFRAの血液検査で見つけられる病気
腫瘍マーカーCYFRAの血液検査は、下記の病気の診断に役立ちます。
●肺がん(扁平上皮がん、腺がん)
●胃がん など
腫瘍マーカーCYFRAの結果数値の見方
血液検査における腫瘍マーカーCYFRAの基準値は、2.2以下(ng/ml)(国立がん研究センターより)です。CYFRAが基準値よりも高い場合は、肺がん(扁平上皮がん、腺がん)の可能性があります。
腫瘍マーカーCYFRAの血液検査の長所/短所
腫瘍マーカーCYFRAでは、非小細胞肺がんの有無や治療効果について確認できます。同じく肺の扁平上皮がんの腫瘍マーカーの「SCC」よりも感度が高く、偽陽性が出にくいという特徴があります。これは、CYFRAが、喫煙やそのほかの肺の病気に影響を受けにくいためです。
また、腫瘍マーカーは血液検査でも調べられるため、受診者の身体的負担が小さいことがメリットです。
一方で、CYFRAの検査の数値が高いからといって、肺がんが確定されたわけではありません。診断には、レントゲンなど他の検査を行う必要があります。
腫瘍マーカーCYFRAの血液検査の流れ
多くの場合、腫瘍マーカーCYFRAは血液検査のため、採血によって行われます。具体的な流れは以下のようになります。
1. ひじの内側など血管がはっきりと確認できる部分を露出させ、専用の小さな台に腕を乗せる。
2. 上腕部を「駆血帯」と呼ばれるひもやベルトで締める。
3. アルコール綿で消毒し、注射針を刺す。
4. シリンジ内の検体が血液でいっぱいになったら、アルコール綿で抑えながら針を抜く(ほかの項目の血液検査を行うために、複数の検体を取ることがある)。
5. 注射した部位に絆創膏を貼る。血が止まるまでの数分間、自身で圧迫しておく。
6. 完全に止血したら、絆創膏を剥がす。
<参考>
国立がん研究センター中央病院「臨床検査基準値一覧」2020年9月版
この記事の監修ドクター

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)