抗体検査
抗体検査とは?
人間の身体は、病原体(細菌やウイルスなど)が体内に侵入するとそれらを攻撃することに特化した抗体を作ります。免疫反応と呼ばれるもので、抗体は予防接種によっても作られます。抗体検査は、この抗体の有無を調べる検査です。
抗体検査の目的
抗体検査の目的は、体内の抗体を調べることにより、現在どんな病気にかかっているのか、あるいは過去にかかったことがあるのか、を知ることです。
ウイルスや細菌などの病原体が身体の中に入りこむことで起こる病気を感染症といいます。感染症はその名の通り、人から人へ感染するため、現在自分が感染しているのか感染経験があり抗体を保有しているかを知ることが重要となります。また、予防接種を行う病気などは病気に対する抗体を持っているとその病気にはかからないとされています。しかし、すべての感染症において、抗体を持っていれば感染しないわけではありません。さらに、抗体が徐々に減少、消失する可能性もあります。
妊娠希望時に胎児に影響を及ぼす可能性がある感染症や海外渡航前に現地で流行している感染症の抗体の有無を知るために行うこともあります。そのほかにも、自分を守るため、あるいは自身が感染源にならないために抗体検査を行う人もおり、いずれも予防接種を行うかどうかを判断するために行うのが一般的です。
抗体検査で見つけられる病気
抗体検査を行うことは、下記の感染症の抗体を保有しているかどうかの判断につながります。
●新型コロナウイルス(COVID-19)
●麻しん
●風しん
●水疱瘡
●流行性耳下腺炎(おたふくかぜ) など
抗体検査の結果の見方
陽性(+)もしくは陰性(-)で判断されます。陽性であれば抗体を持っている(過去に感染したことがある可能性が高い)、陰性であれば抗体を持っていない(感染した既往がない可能性が高い)ことを示します。
抗体検査の長所/短所
抗体検査は、採血によって行われるため、受診者の身体的負担が小さいと言えます。通常は検査結果が判明するまで数日かかります。なお、新型コロナウイルス(COVID-19)の簡易検査においては、指先からの数滴の採血、結果判明まで10~20分程度など、簡便に行われることがあります。
一方で、検査結果が陽性だったとしても、抗体検査のみで感染が現在であるか過去であるかの特定はできません。陽性の場合は、PCR検査や抗原検査など、ほかの検査と組み合わせることで現在感染中であるかどうかを診断します。また、現在抗体を持っていたとしても今後抗体が減少、消失する可能性があるため、その感染症に100%かからないとは言い切れません。
抗体検査の流れ
抗体検査の流れは、下記の通りです。
【1種類の抗体を調べる場合】
指先に小さな針を刺し、血液を数滴採取します。
1.指先をアルコール綿で消毒する。
2.指先に針を刺す。
3.指先を絞るようにして血液を採取する。
4.アルコール綿で傷口を消毒する。
【複数の抗体を調べる場合】
複数の抗体を調べる場合などは通常の採血を行います。
1.ひじの内側など血管がはっきりと確認できる部分を露出させ、専用の小さな台に腕を乗せる。
2.上腕部を「駆血帯」と呼ばれるひもやベルトで締める。
3.アルコール綿で消毒し、注射針を刺す。
4.シリンジ内の検体が血液でいっぱいになったら、アルコール綿で抑えながら針を抜く(ほかの項目の血液検査を行うために、複数の検体を取ることがある)。
5.注射した部位に絆創膏を貼る。血が止まるまでの数分間、自身で圧迫しておく。
6.完全に止血したら、絆創膏を剥がす。
この記事の監修ドクター

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)