検査で「異常なし」と言われたら、1年くらいは大丈夫?
人間ドックは自分の身体の「今の状態」を知り、疾患の早期発見とリスクを把握するためのもの。必ずしも1年間ずっと大丈夫であるとは言えません。
年齢・体質・生活習慣で身体の状態は変化していく
人間ドックは1年に1度受けることが推奨されています。しかしながら、1年前に「異常なし」だったからといって翌年も「異常なし」になるとは限りません。「異常なし」だった項目が「再検査」、「要精密検査」になる可能性もあります。
人間の身体は、さまざまな環境に触れて生活をしているため、いつ異常が起きてもおかしくありません。年齢や生活習慣、遺伝などの影響で、健康だった人が短期間で重大な病にかかってしまったという例も実際にあります。病が深刻化する前に、早期発見・早期治療をしようというのが、定期的な人間ドックや健康診断です。
人間ドックはあくまで、検査を受けたその日までの健康状態をチェックするもの。リスクの把握ができることはありますが、翌年の健康状態を占うものではないことを心に留めておきましょう。
日ごろの生活習慣が翌年の検査結果を左右する
生活習慣病にかかってしまう人の多くには、「偏った食生活」、「運動不足」、「不規則な生活」などの不規則な生活習慣があります。また、過度な飲酒や喫煙を積み重ねていくと、生活習慣病を患う可能性もあります。生活習慣病は“サイレントキラー”とも呼ばれており、心筋梗塞や脳卒中などのリスクを高めると言われています。
また、年齢を重ねれば、身体機能の低下により生活習慣病にかかるリスクも上がるため、注意をする必要があります。日ごろからバランスの取れた食事や程度な運動、規則的な睡眠を心がけることで、健康な身体を維持することができるでしょう。
自覚症状が出にくいがんを見つけることもある
人間ドックは、生活習慣病のチェックを行うだけではなく、がん検診も充実しています。がんの発生要因は、生活習慣の乱れだけではなく、ウイルス感染によるものもあります。代表的なのは肝細胞がんです。ただ、肝臓は“沈黙の臓器”と呼ばれているほど、自覚症状が出にくい部分であるため、症状が出てしまったときは、かなり病状が進行している可能性があります。人間ドックの「がん検診」は、そのような発見しにくい病気を、早めに見つけるためのものとして役立つのです。
体調が悪いと感じたらすぐに受診を
人間ドックの結果で「異常なし」と出ていても、体調がすぐれない場合は必ず医療機関を受診しましょう。体調が悪いと感じるときは、身体のどこかで異常をきたしている場合が多いです。その兆候を放っておいた結果、重大な病気が進行してしまったという事例も少なくありません。自分の身体を守るためにも、体調が悪いと感じたら、なるべく早期に医療機関を受診しましょう。
体調が悪くなる前に対処するために、そして自身の健康リスクを把握するために、定期的な人間ドックの受診をおすすめします。
この記事の監修ドクター

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)