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姫路市は兵庫県の南西部、瀬戸内海に面する市です。2006年に飾磨郡家島町・夢前町、神崎郡香寺町、宍粟郡安富町を編入合併し、現在の姿となっています。国宝・世界遺産である姫路城が有名なほか、皮革をはじめとする伝統工芸も盛んな街です。
2021年11月現在の人口は約53.1万人(住民基本台帳による)です。国勢調査によれば、姫路市の人口は2010年の約53.6万人をピークに減少に転じ、現在も減少を続けています。なお、日本全体のピークは2008年、兵庫県全体のピークは2007年です(いずれも国勢調査をもとにした推計人口)。国立社会保障・人口問題研究所の2018年時点の推計によれば、姫路市の人口は2045年には約46.2万人まで減少するとされています。
2021年3月現在における姫路市の65歳以上の高齢者人口は約14.4万人で、高齢化率は26.9%です。2020年10月の日本全体の高齢化率は28.8%であることから、姫路市の高齢化率は全国よりも低いと言えます。姫路市は兵庫県の中心に位置しており、神戸や大阪といった関西の大都市へのアクセスがよいこと、姫路市自体もさまざまな産業が盛んであることから、幅広い年代が居住する市でもあります。これらが、姫路市の高齢化のスピードが日本全体よりもゆるやかである要因と考えられます。しかしながら、多くの地方自治体と同様に、総人口に対して高齢者人口の割合は増加しています。
健康寿命とは、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間を指します。日常生活に制限のない、自立した状態で過ごせる期間と言えます。
下記は、兵庫県が算出した、姫路市の平均余命と健康寿命、不健康である期間を示した表です。兵庫県では、介護保険要介護認定に基づいた要介護2〜5を不健康な状態(不健康である期間)、それ以外を健康な状態(健康寿命)として独自に算出しています。不健康である期間が長くなるほど医療費や介護費がふくらみ、公費負担が増大する要因になります。
男性 | 女性 | |||||
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2010年 | 2015年 | 増減 | 2010年 | 2015年 | 増減 | |
平均寿命(歳) | 78.55 | 80.17 | +1.62 | 85.90 | 86.61 | +0.71 |
健康寿命(歳) | 77.08 | 78.76 | +1.68 | 82.51 | 83.46 | +0.95 |
不健康である期間(年) | 1.47 | 1.41 | -0.06 | 3.39 | 3.15 | -0.24 |
姫路市の健康寿命は介護保険要介護認定に基づく方法で算出されているため全国平均と比較することはできませんが、2010年と2015年を比較すると、男女ともに平均寿命・健康寿命のどちらも延伸しています。また、不健康である期間は男女ともやや短くなっていることから、順調に推移していると言えます。
1981年以降、日本人の死因の第1位はがんです。以降、生活習慣病を主因とする疾患が上位を占めています。生活習慣病とは、生活習慣(食、運動、喫煙、飲酒等)が影響する一部のがんや心臓病(心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)、糖尿病などを指します。人口動態調査によると、姫路市と日本全体の死因とその割合は下記のようになっています。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
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姫路市※2019年 | 悪性新生物(がん)29..4% | 心疾患17.0% | 脳血管疾患8.1% | 老衰6.6% | 肺炎5.7% |
日本全体※2019年 | 悪性新生物(がん)27.3% | 心疾患15.0% | 老衰8.8% | 脳血管疾患7.7% | 肺炎6.9% |
姫路市の死因順位は上位3位を生活習慣病の三大疾患(がん・心疾患・脳血管疾患)が占めています。三大疾患の割合の合計をみると、日本全体が50.0%であるのに対し、姫路市は54.5%と大きく上回っています。一方、5位の老衰の割合は日本全国を2.2ポイント下回っています。要因として、姫路市は日本全体よりも高齢化が進んでおらず、比較的若い人口が多いことが生活習慣病の割合を引き上げ、また老衰など高齢者特有の死因割合を引き下げていると考えられます。
日本では、厚生労働省の指針に基づき、自治体主導で実施されている「5大がん検診」と呼ばれるがん検診があり、全国各自治体とも受診率の向上を目指しています。5大がん検診は、胃がん、子宮がん(子宮頸がん)、肺がん、乳がん、大腸がんの5つの検診を指します。
5大がん検診は、加入している健康保険の種類に関係なく住民票のある自治体で受診することができます。検診の種類によって対象年齢や頻度は異なりますが、受診費の一部もしくは全額が公費で負担されます。ただし、企業に勤めている方などは、企業による健康診断にがん検診が含まれていることが多いため、自治体主導のがん検診受診者は国民健康保険加入者や後期高齢者医療保険加入者を含む、「勤務先などでの受診機会のない人」が中心です。
姫路市が実施しているがん検診の種類と費用は下記の通りです。太字は、姫路市独自の取り組みです。
種類 | 検査項目 | 対象者 | 受診間隔 | 費用 |
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胃がん | 胃部X線検査(バリウム)、もしくは内視鏡・ピロリ尿素呼気セット検査 | ・バリウム:40歳以上・内視鏡・呼気セット検査:50歳 | ・バリウム:年1回・内視鏡・呼気セット:1回のみ | ●バリウム・集団:1,500円・個別:3,800円●内視鏡・呼気セット(個別のみ):4,000円 |
子宮がん | 子宮頸部細胞診、子宮体部細胞診※子宮体部細胞診は一定の条件に当てはまる人のみ | 18歳以上偶数年齢女性 | 2年に1回 | ●子宮頸部・集団:1,800円・個別:2,200円●子宮頸部+子宮体部(個別のみ):3,200円 |
肺がん | 胸部X線検査、喀痰検査※喀痰検査は50歳以上で喫煙指数600以上の人のみ | 40歳以上 | 年1回 | ●胸部X線:500円(集団のみ)●胸部X線+喀痰検査:1,800円(集団のみ) |
乳がん | マンモグラフィ | 40歳以上偶数年齢女性 | 2年に1回 | ・集団:2,000円・個別:3,000円 |
大腸がん | 便潜血検査 | 40歳以上 | 年1回 | 500円(集団のみ) |
姫路市のがん検診は、基本的には厚生労働省の指針に沿っています。特徴として、子宮頸がん検診を18歳から受診できる(厚労省の指針では20歳以上)ほか、胃がん検診において、50歳の方はピロリ菌検査(呼気による検査)を同時受診できる点が挙げられます。
姫路市のがん検診の無料クーポンは下記の通りです。無料クーポンの種類が多い点と、とくに子宮頸がん検診・乳がん検診において、対象の年齢が幅広い点が特徴です。
種類 | 検査項目 | 対象年齢 |
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胃がん | 胃部X線検査(バリウム) | 50、60歳 |
子宮頸がん | 子宮頸部細胞診 | 20歳、30~50歳の偶数年齢、60歳の女性 |
肺がん | 胸部X線検査 | 40・50・60歳 |
乳がん | マンモグラフィ | 40~60歳の偶数年齢の女性 |
大腸がん | 便潜血検査 | 40~60歳の5歳刻み年齢 |
また、次の方は無料でがん検診を受診できます。 ・生活保護受給世帯の方 ・市民税非課税世帯の方
詳細は姫路市サイトで確認してください。
下記は、姫路市が実施した2015年度から2019年度の各がん検診の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
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2015年度 | 6.4% | 43.5% | 9.0% | 38.0% | 11.1% |
2016年度 | 5.1% | 19.0% | 3.2% | 21.2% | 3.9% |
2017年度 | 4.7% | 15.7% | 2.9% | 20.7% | 3.6% |
2018年度 | 4.3% | 15.0% | 2.7% | 20.1% | 3.4% |
2019年度 | 4.1% | 15.0% | 2.6% | 20.9% | 3.2% |
下記は、自治体主導のがん検診における2015年度から2019年度の日本全体の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
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2015年度 | 6.3% | 23.3% | 11.2% | 20.0% | 13.8% |
2016年度 | 8.6% | 16.4% | 7.7% | 18.2% | 8.8% |
2017年度 | 8.4% | 16.3% | 7.4% | 17.4% | 8.4% |
2018年度 | 8.1% | 16.0% | 7.1% | 17.2% | 8.1% |
2019年度 | 7.8% | 15.7% | 6.8% | 17.0% | 7.7% |
姫路市のがん検診受診率は、日本全体と比較すると子宮頸がん検診が同程度、乳がん検診は大きく上回っています。子宮頸がん検診と乳がん検診が一定の数値で推移している理由としては、姫路市のこれら2つの検診は無料クーポンの対象者が多いことが考えられます。しかしながら、その他のがん検診は節目の年齢で無料クーポンが配布されているにもかかわらず受診率は低く、受診率の向上が課題と言えます。
2016年度から一部の受診率が顕著に低下している要因としては、地域保健・健康増進事業報告における受診率の算定法の対象者が変更されたことが考えられます。また、過去に国のがん検診推進事業として、大腸がん検診、乳がん検診では40~60歳の間で5歳おき、子宮頸がん検診では20~40歳の間で5歳おきに無料クーポンが配布されていました。しかし、2016年から大腸がん検診は事業の対象外になり、2017年から子宮頸がん検診と乳がん検診の無料クーポンは検診開始年齢(子宮頸がん検診20歳、乳がん検診40歳)のみになりました。これら無料クーポン対象外の影響が受診率低下につながっていると考えられています。このため、自治体によっては独自の無料クーポンを配布したり、キャンペーンを実施したりして、受診率向上に努めています。
がん検診の受診率向上やがん予防に向けて、姫路市では次のような取り組みを行っています。
・肝炎ウイルス検診の実施 姫路市在住の40歳以上で、過去に肝炎ウイルス検査を未受診であれば、肝炎ウイルス検診を受けることができる。肝炎ウイルスは肝臓がんの主因のひとつであり、事前に適切な検査と治療を受けることで肝臓がんのリスクを低減することができる。自己負担額は、集団検診が1,000円、特定健診と同時受診の場合は1,100円、単独受診の場合は1,700円。40~70歳の5歳刻み年齢の市民には無料クーポンが配布され、自己負担額無料で受診可能。
・胃がんリスク検診の実施 日本人の胃がんの主な原因のひとつに、ヘリコバクター・ピロリ菌感染がある。ピロリ菌の感染を検査することで、胃がんの早期治療開始や、除菌による胃がんリスクの低減が期待できる。姫路市では、20・30・40歳の市民を対象に胃がんリスク検診を行っている。受診料は無料。
・レディース検診 女性特有のがん(子宮頸がん・乳がん)の検診において、レディース検診として他のがん検診とは別に女性のみ対象の集団検診を行っている。一部の会場では、レディース検診の際に胃がん・肺がん・大腸がん検診を同時に受診することも可能。また、レディース検診ではがん検診と合わせて骨粗しょう症検診も受診できる。
・がん検診電子申請予約 各種がん検診の予約の際、電話だけでなく電子申請が可能。窓口営業時間外であっても予約を取ることが可能なため、市民の利便性の向上が期待できる。
姫路市では、国民健康保険に加入する希望者に対して人間ドック検診の助成を行っています。希望者は医療機関を選び、自身で予約の上、特定健診受診券を持参して受診します。助成内容は下記の通りです。
【対象者】 40~74歳の姫路市国民健康保険被保険者 ※特定健康診査に相当する健康データの提供を了承する必要あり
【助成額】 6,000円
受診は姫路市の指定医療機関のみで、医療機関によって取り扱う人間ドックのコースが異なります。詳しくは姫路市サイトでご確認ください。
姫路市は生活習慣病予防による健康寿命の延伸、また医療費の伸びの抑制を目標に掲げ、さまざまな取り組みを行っています。
・特定健診などの受診促進キャンペーン 特定健診などの受診促進の取り組みとして、40~74歳の姫路市国民健康保険加入者を対象にキャンペーンを実施。40歳での特定健診の受診や、職場や病院で受診した健診の結果提出により、1,000円分の図書カードをプレゼントしている。
・米粉普及事業 姫路市では、日本人の体質に適しアレルギーも少ない食材として、米食を推進している。推進活動の一環として、米粉を使用したメニューの開発・普及を実施。姫路市サイトなどで、米粉レシピを公開している。
・受動喫煙対策の実施 敷地内禁煙あるいは建物内禁煙を行っている事業者を「ひめじ禁煙プラス参加店」として登録し、受動喫煙防止に取り組む店がわかりやすいようにしている。登録店は登録店であることを示すステッカーを設置できるほか、市公式サイトの参加店一覧にも掲載される。
・糖尿病重症化予防歯科検診 歯周病は全身のさまざまな疾患への関連性が指摘されている。特に糖尿病と歯周病は相互に大きく影響していることが知られている。姫路市では、糖尿病患者の歯周病悪化防止並びに糖尿病の悪化防止を目的として、糖尿病重症化予防歯科検診を行っている。対象となるのは直近1年間のHbA1c数値が8.0以上の市民。1年度中に1回まで、自己負担無料で受診可能。
※本記事は2022年1月時点の情報を元に作成しています。