秋田県秋田市千秋久保田町6-10
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秋田市は秋田県の県庁所在地で、1889年の市政施行により誕生しました。東北三大祭りのひとつである秋田竿燈(かんとう)まつりや、郷土料理きりたんぽ鍋などが有名です。秋田市は1997年に中核市へ移行し、その後2005年に旧河辺町、旧雄和町が合併して発展を続けています。中核市とは、地方自治法に基づき政令によって指定される人口20万人以上の市を指します。2021年現在、62市が指定されています。
2021年8月1日現在の秋田市の人口は約30.2万人(住民基本台帳による)です。国勢調査によれば、秋田市の人口のピークは合併前の旧河辺町、旧雄和町を含んだ場合2002年の33.7万で、以降は減少に転じています。なお、日本全体のピークは2008年(国勢調査をもとにした推計人口)、秋田県全体のピークは1956年です(「秋田県人口ビジョン(平成27年10月)」)。国立社会保障・人口問題研究所によれば、秋田市の人口は現状のままでは2045年には約22.6万人に減少すると推計されています。
2020年10月現在における65歳以上の高齢者人口は約9.6万人で、高齢化率は32.3%です。2020年10月の日本全体の高齢化率は28.8%であることから、秋田市の高齢化は全国よりも進んでいると言えます。多くの地方自治体同様、人口が減少しているのに対して、高齢者の人口は増加しています。
健康寿命とは、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間を指します。日常生活に制限のない、自立した状態で過ごせる期間と言えます。
下記は、2010年と2015年における秋田市の平均寿命と健康寿命、およびその差です(カッコ内は全国平均)。平均寿命と健康寿命との差(不健康である期間)が長くなるほど医療費や介護費がふくらみ、公費負担が増大する要因になります。
男性 | 女性 | |||||
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2010年 | 2015年 | 増減 | 2010年 | 2015年 | 増減 | |
平均寿命 | 79.31歳 | 80.22歳(80.8歳) | +0.91 | 86.63歳 | 86.74歳(87.0歳) | +0.11 |
健康寿命 | 77.73歳 | 78.68歳 | +0.95 | 82.81歳 | 83.12歳 | +0.31 |
不健康である期間 | 1.58年 | 1.54年 | -0.04 | 3.82年 | 3.62年 | -0.20 |
2015年現在の秋田市の健康寿命は、男性78.68歳、女性83.12歳です。2010年から2015年の経年変化を見ると、健康寿命の増加分が平均寿命の増加分をわずかに上回っており、健康寿命は延伸傾向です。秋田市では「第2次健康あきた市21」に基づいて市民の健康づくりに取り組んでいます。
1981年以降、日本人の死因の第1位はがんです。以降、生活習慣病を主因とする疾患が上位を占めています。生活習慣病とは、生活習慣(食、運動、喫煙、飲酒等)が影響する一部のがんや心臓病(心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)、糖尿病などを指します。人口動態統調査によると、秋田市と日本全体の死因とその割合は下記のようになっています。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
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秋田市※2019年 | 悪性新生物(がん)28.6% | 心疾患10.8% | 脳血管疾患9.9% | 老衰7.6% | 肺炎4.3% |
日本全体※2019年 | 悪性新生物(がん)27.3% | 心疾患15.0% | 老衰8.8% | 脳血管疾患7.7% | 肺炎6.9% |
秋田市の死因は三大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)が49.3%で約半数を占めています。ポイント数では、1位のがんや3位の脳血管疾患が日本全体を上回っている一方で、2位の心疾患は4.2ポイント日本全体を下回っています。
日本では、厚生労働省の指針に基づき、自治体主導で実施されている「5大がん検診」と呼ばれるがん検診があり、全国各自治体とも受診率の向上を目指しています。5大がん検診は、胃がん、子宮がん(子宮頸がん)、肺がん、乳がん、大腸がんの5つの検診を指します。
5大がん検診は、加入している健康保険の種類に関係なく住民票のある自治体で受診することができます。検診の種類によって対象年齢や頻度は異なりますが、受診費の一部もしくは全額が公費で負担されます。ただし、企業に勤めている方などは、企業による健康診断にがん検診が含まれていることが多いため、自治体主導のがん検診受診者は国民健康保険加入者や後期高齢者医療保険加入者を含む、「勤務先などでの受診機会のない人」が中心です。
秋田市が実施しているがん検診の種類と費用は下記の通りです。太字は、秋田市独自の取り組みです。
種類 | 検査項目 | 対象者 | 受診間隔 | 費用 |
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胃がん | 問診、胃部X線検査(バリウム)または胃内視鏡検査(胃カメラ)※胃カメラは抽選制(定員1,000名) | バリウム:40歳以上胃カメラ:50~68歳の偶数歳※2021年度に限り50~69歳の奇数歳も対象 | バリウム:年1回胃カメラ:2年に1回 | バリウム:1,400円胃カメラ:4,200円 |
子宮頸がん | 問診、視診、子宮頸部細胞診、内診、超音波検査(希望者のみ) | 20~39歳、40歳以上の偶数歳の女性 | 20~39歳:年1回40歳以上:2年に1回 | 集団:1,500円個別:2,100円 |
肺がん | 問診、胸部X線検査、喀痰細胞診※喀痰細胞診は50歳以上で喫煙指数600以上の方 | 40歳以上 | 年1回 | 40~64歳:400円65歳以上:無料※喀痰検査は別途800円(75歳以上は無料) |
乳がん | 問診、マンモグラフィ、視触診 | 40歳以上の偶数歳の女性 | 2年に1回 | ●40歳代医師面談なし:2,000円医師面談あり:2,500円●50歳以上医師面談なし:1,400円医師面談あり:2,000円 |
大腸がん | 問診、便潜血検査 | 40歳以上 | 年1回 | 集団:800円個別:1,600円 |
前立腺がん | 問診、血液検査(PSA値) | 50歳以上の男性 | 年1回 | 1,600円 |
秋田市のがん検診は、基本的には厚生労働省の指針に沿っています。2021年度の胃がん検診から、抽選制で胃カメラを2年に1度選択できるようになりました。秋田市独自の取り組みとしては、50歳以上の男性を対象に前立腺がん検診の実施、子宮頸がん検診において超音波検査の実施(希望者)が挙げられます。
秋田市のがん検診の無料クーポンは下記の通りです。
部位 | 対象者 | 無料になる検査項目 |
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胃がん | 50歳代 | 問診、胃部X線検査(バリウム) |
また、秋田市では特定年齢でのがん検診割引制度を実施しています。
種類 | 対象者 | 検査項目 | 費用(自己負担額) |
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大腸がん | 50・52・54・56・58歳 | 問診、便潜血検査 | 500円 |
子宮頸がん | 21・30・32・34・36・38歳 | 問診、視診、子宮頸部細胞診、内診、超音波検査(希望者のみ) | 500円 |
乳がん | 40~58歳の偶数年齢の女性 | 問診、視触診、マンモグラフィ | 1,000円 |
秋田市国民健康保険加入者の方は胃がん検診、大腸がん検診、子宮頸がん検診、乳がん検診の費用が無料です。その他、下記の方は秋田市が実施する各種がん検診の費用が無料となります。 ・75歳以上の方(胸部X線検査は65歳以上で無料) ・生活保護受給中の方 ・市民税が、本人を含め世帯全員が非課税(年税額0円)の方 ・市から支援給付を受けている方
それぞれ受診時に必要なもの(例:健康保険証や市民税証明書)が異なるため、詳細は秋田市サイトを確認してください。
下記は、秋田市が実施した2015年度から2019年度の各がん検診の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
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2015年度 | 6.8% | 32.0% | 11.0% | 28.2% | 21.1% |
2016年度 | 4.4% | 11.9% | 3.7% | 12.2% | 6.6% |
2017年度 | 4.6% | 12.3% | 3.5% | 13.0% | 6.2% |
2018年度 | 4.3% | 11.9% | 3.2% | 12.0% | 5.9% |
2019年度 | 4.1% | 12.0% | 3.0% | 11.6% | 5.8% |
下記は、自治体主導のがん検診における2015年度から2019年度の日本全体の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
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2015年度 | 6.3% | 23.3% | 11.2% | 20.0% | 13.8% |
2016年度 | 8.6% | 16.4% | 7.7% | 18.2% | 8.8% |
2017年度 | 8.4% | 16.3% | 7.4% | 17.4% | 8.4% |
2018年度 | 8.1% | 16.0% | 7.1% | 17.2% | 8.1% |
2019年度 | 7.8% | 15.7% | 6.8% | 17.0% | 7.7% |
秋田市のがん検診受診率は、2016年以降全検診において日本全体の受診率を下回っています。また、受診率は年々低下傾向にあり、これは日本全体においても同様の傾向です。
2016年度から一部の受診率が顕著に低下している要因としては、地域保健・健康増進事業報告における受診率の算定法の対象者が変更されたことが考えられます。また、過去に国のがん検診推進事業として、大腸がん検診、乳がん検診では40~60歳の間で5歳おき、子宮頸がん検診では20~40歳の間で5歳おきに無料クーポンが配布されていました。しかし、2016年から大腸がん検診は事業の対象外になり、2017年から子宮頸がん検診と乳がん検診の無料クーポンは検診開始年齢(子宮頸がん検診20歳、乳がん検診40歳)のみになりました。これら無料クーポン対象外の影響が受診率低下につながっていると考えられています。
秋田市は国民健康保険加入者を対象に4つのがん検診を無料で受診できる体制をとっていますが、受診率は伸び悩んでおり、受診率の向上にはさらなる工夫が必要であると言えます。
がん検診の受診率向上やがん予防に向けて、秋田市では次のような取り組みを行っています。検診費用の助成制度が充実していたり、女性のみの集団検診日を設けたりと、受診者にとって実用的な内容が多い点が特徴です。
・がん検診の助成 秋田市が実施しているがん検診について、秋田市国民健康保険被保険者の胃がん検診、大腸がん検診、子宮頸がん検診、前立腺がん検診の一部対象者の検診料金を市が助成。2016年からは乳がん検診でも新たに助成を開始。検診費用の全額を市が助成することでがん検診を受診しやすい環境を整えている。
・レディース健診 40歳以上で秋田市に住民票があり、勤務先などで健診を受ける機会がない女性のみを対象とした集団健診を実施。各種がん検診のほか、特定健康診査、後期高齢者健康診査も同時に受診できる(2021年度は中止)。
・日曜健診 一部の検診会場では胃がん検診(胃部エックス線検査)、胸部(肺がん・結核)検診、大腸がん検診および乳がん検診を日曜日に実施。また、秋田市国保加入者の特定健康診査および後期高齢者医療制度加入者の後期高齢者健康診査を受診する方を対象にした日曜健診も別途実施(がん検診も同時に受診可能)。平日に時間を取るのが難しい方でもがん検診を受けられるように取り組んでいる。
・インターネットでのがん検診予約システムの運用 2021年8月10日から秋田市独自のがん検診予約システム「けんしんネットAKITA」を開始。インターネット上で土日祝日でも24時間がん検診の申し込みが可能(システム機器の保守点検時などを除く)。アカウント登録をすると受診可能な検診や、検診会場、日程を検索し予約できる。
秋田市では、秋田市在住の国民健康保険被保険者で一定の条件を満たす方を対象に、日帰り人間ドック費用の一部を助成しています。助成内容の詳細は下記の通りです。
【対象者】 秋田市国民健康保険加入者で、以下すべてを満たす方 ・年度末時点で35歳以上 ・当該年度の5月末に74歳以下 ・当該年度の4月現在の加入月数が通算で12ヶ月以上 ・国民健康保険税を完納している
【自己負担額】 3割+消費税相当分 ※市が定めた項目以外にオプション検査を行う場合、その検査費用は全額自己負担
助成対象となるには、いくつかの条件があります。 ・受診は市内の契約医療施設のみ ・ドック受診日までに後期高齢者医療制度に加入していないこと ・ドック受診日までに社会保険などに加入していないこと ・事前に窓口申請もしくは電子申請が必要(電話受付はしていない)
各医療施設の定員を超える応募があった場合は、申し込み順ではなく抽選で受診者が決定されます。また、女性は申請時に婦人科検診(子宮頸がん検診+乳がん検診)の要、不要を決定します。不要とした場合は、原則変更できません。各医療施設の費用や検査内容の詳細については秋田市サイトで確認してください。
「機能評価認定施設」とは、日本人間ドック学会が定めている「人間ドック健診施設機能評価」という評価基準をクリアした医療施設です。申請のあった人間ドック施設に対して日本人間ドック学会が受診者目線で審査している取り組みです。
審査項目には、「運営方針、組織の管理体制が確立しているか」や「検査の業務マニュアルは作成されているか」、「感染対策などの危機管理は徹底されているか」といった施設側の安全面に関する基準から、「受診者が快適に受診できるように配慮しているか」や「受診者のプライバシーに配慮しているか」といった受診者側に関する基準まで、多角的な評価基準があります。また、評価基準は5年ごとに改定され、更新審査が行われます。
全国390以上の施設が認定されており、このうち秋田市内の2021年12月現在の機能評価認定施設は2施設あります。
マーソでは、機能評価認定施設から人間ドックのプランを探すことができます。くわしくはこちらをご覧ください。
秋田市が健康寿命の延伸に向けて行っているユニークな取り組みについて紹介します。
・秋田大学と協働で開発した健康体操 生涯にわたって骨や関節の健康を保ち続けることを目的として、秋田大学大学院医学系研究科の若狭正彦教授らを中心に考案された健康体操。肩こりならびに腰痛の予防や、ストレッチ、筋力アップなどの効果が認められている。秋田市公式YouTubeチャンネル、パンフレット、DVDなどを利用して広報しており、市民が自宅で気軽に健康づくりができるように取り組んでいる。
・副賞が贈呈されるチーム制ウォーキングイベントの実施 生活習慣病の予防や体力維持などを図る目的で秋田市保健所が「歩くべあきた」を実施。チーム制のウォーキングイベントで、運動不足を感じている就業者や高齢者を対象に、2〜5名の仲間とチームを編成して日常の歩数をカウントし、チームの平均歩数で順位を競う。月ごとにランキングやチームごとの平均歩幅が公表され、上位チームや継続できたチームには副賞や修了証が贈呈される。
・女性対象のトータルヘルスセミナーの実施 女性を対象にした健康セミナー「ビューティーヘルスセミナー」を開催。フレッシュコース(40〜59歳が対象)、はつらつコース(60〜64歳が対象)、フラワークラス(30〜49歳が対象)に分かれておりそれぞれ楽しく身体を動かすエクササイズや、調理実習、管理栄養士による食事の講話、歯科衛生士による口腔内衛生の講話などが参加費無料で行われている(2021年度の調理実習とグループワークは中止)。
※本記事は2021年12月時点の情報を元に作成しています。