肺がん
肺がんとは?
現在、肺がんは日本人がかかるがんの部位別死亡数1位です。厚生労働省の発表によると、2017年の肺がん(気管支及び肺の悪性新生物)の年間死亡者数は約7万4000人で、がん死亡者数の約5分の1を占めています。
肺がんの種類
肺がんは発生する部位によって名称が異なります。
腺がん
肺の末端にある気管支に発生するがんです。肺がんの約50%は腺がんといわれており、タバコを吸わない人によくみられます。
扁平上皮がん
肺の入り口に発生するがんです。肺がんの25%〜30%程度を占め、喫煙者によくみられるがんです。転移や進行は他のがんに比べると、遅いのが特徴です。
大細胞がん
男性に多くみられ、進行が早く転移しやすいがんです。
小細胞がん
50歳~60歳代の男性に多く発症するがんです。進行や転移が早いため、予後が悪いです。
肺がんの症状
初期の肺がんでは無症状なことが多いです。その後、進行するとともにせきや痰・発熱などの症状が出ます。しかし、これらの症状は肺がん特有の症状というわけではなく、日常生活でもみられます。そのため、喫煙の既往がある、家族に肺がんになった人がいるなどの肺がんリスクが高い人は肺がん検診を受けて、早期発見を心がけてください。
肺がんの原因と予防方法
肺がんは喫煙が大きく影響してきます。タバコに含まれている有害物質が肺の細胞を傷つけ、炎症を起こすことでがん化しやすくなってしまいます。そのため、喫煙者は特に定期検診を受けて早期発見に努めたほうがよいでしょう。
また、大気汚染物質(PM2.5など)も肺がんを引き起こす原因になります。
肺がんになりやすい人
肺がんになりやすい人は以下の人です。
●喫煙している
●アスベストやラドン、アルミニウムやヒ素など有害物質に侵されている職場で勤務している
●家族に肺がんになった人がいる
●周囲の人がタバコを吸っている(受動喫煙)
肺がんの病期(ステージ)別生存率
肺がんの5年相対生存率は下記のとおりです。
※出典:全国がん(成人病)センター協議会の生存率共同調査(2019年1月集計)
ステージが低ければ低いほど、5年生存率が高いことがわかります。早期発見は生存率に大きく影響します。
肺がんの罹患率と死亡数
肺がんは、胃がんや大腸がんと並び、部位別のがん死亡数(2017年)において上位を占めています。国立がん研究センター「がん情報サービス」によると、全部位のなかで肺がんは男性1位、女性2位となっています。
厚生労働省が2018年9月に公表した「平成29年(2017)人口動態統計(確定数)」によると、がん(悪性新生物)による年間の死亡数は37万3334人でした。そのうち、肺がんの死亡数は、7万4120人でした。
肺がんの罹患率は、40歳代から高くなります。近年、肺がんの原因となるタバコを吸う人は減少傾向ですが、肺がんの死亡率は横ばいで推移しています。日本国内の地域性をみると、近畿地方で肺がんによる死亡数が多い傾向があります。
肺がんの検査
肺がんを見つける検査には以下のものがあります。
胸部CT検査
3次元的な画像で肺を観察します。病変の範囲を調べるのに適した検査方法です。
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胸部レントゲン検査
病変の広がりや、部位を確認するのに適した検査です。肺のエックス線写真に影が写っていると、肺がんが疑われます。
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喀痰(かくたん)細胞診
痰を採取して、たんの中にがん細胞が存在するか調べています。一般的には起床後3日分の痰を検査します。
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この記事の監修ドクター

マーソ株式会社 顧問
虎の門病院、国立がんセンターにて造血器悪性腫瘍の臨床および研究に従事。2005年より東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワークシステム(現・先端医療社会コミュニケーションシステム)を主宰し医療ガバナンスを研究。 2016年より特定非営利活動法人・医療ガバナンス研究所理事長。

2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員、東京大学大学院医学系研究科博士課程在学中、ロート製薬健康推進アドバイザー。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)