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長崎市は長崎県の県庁所在地で、2005年に香焼町、伊王島町、高島町、野母崎町、外海町、三和町、2006年に琴海町が合併し、今の長崎市になりました。長崎市は1571年に初めてポルトガル船が入港した場所で、ポルトガルの影響を大きく受けてきた歴史があります。
2021年9月現在の人口は約40.7万人(住民基本台帳による)です。国勢調査によれば、長崎市の人口は1975年ごろ、それまでの増加傾向から横ばいへ転じ、1985年を過ぎたころからは減少しています。なお、日本全体のピークは2008年、長崎県全体の直近のピークは1983年です(いずれも国勢調査をもとにした推計人口)。国立社会保障・人口問題研究所によれば、現状のままでは2045年には約31.1万人に減少すると推計されています。2020年12月現在における65歳以上の高齢者人口は約13.5万人で、高齢化率は32.8%です。2020年10月の日本全体の高齢化率は28.8%であることから、長崎市の高齢化は全国よりも進んでいると言えます。多くの地方自治体同様、人口が減少しているのに対して、高齢者の人口は増加しています。
健康寿命とは、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間を指します。日常生活に制限のない、自立した状態で過ごせる期間と言えます。
下記は、長崎市の平均寿命と健康寿命(日常生活が自立している期間)、およびその差(介護を要する期間)を示した表です。平均寿命と健康寿命との差が長くなるほど医療費や介護費がふくらみ、公費負担が増大する要因になります。
男性 | 女性 | |||||
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2010年 | 2015年 | 増減 | 2010年 | 2015年 | 増減 | |
平均寿命 | 78.89歳 | 80.52歳 | +1.63 | 86.42歳 | 86.97歳 | +0.55 |
健康寿命 | 77.47歳 | 78.92歳 | +1.45 | 83.13歳 | 83.50歳 | +0.37 |
介護を要する期間 | 1.42年 | 1.60年 | +0.18 | 3.30年 | 3.47年 | +0.17 |
2015年現在の長崎市の健康寿命は、男性78.92歳、女性83.50歳です。2010年と比較すると男女ともに延伸していますが、介護を要する期間も伸びています。「第2次健康長崎市民21」計画では、健康寿命の延伸が目標であることを明記しています。
1981年以降、日本人の死因の第1位はがんです。以降、生活習慣病を主因とする疾患が上位を占めています。生活習慣病とは、生活習慣(食、運動、喫煙、飲酒等)が影響する一部のがんや心臓病(心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)、糖尿病などを指します。人口動態調査によると、長崎市と日本全体の死因とその割合は下記のようになっています。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
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長崎市※2019年 | 悪性新生物(がん)29.9% | 心疾患16.4% | 肺炎7.9% | 脳血管疾患6.6% | その他の呼吸器系の疾患6.1% |
日本全体※2019年 | 悪性新生物(がん)27.3% | 心疾患15.0% | 老衰8.8% | 脳血管疾患7.7% | 肺炎6.9% |
生活習慣病の三大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)の合計割合は、日本全体が50.0%であるのに対し、長崎市は52.9%と高い数値になっています。5位にランクインしている「その他の呼吸器系の疾患」とは、誤嚥性肺炎や間質性肺炎などを指し、日本全体では6位以下です。また、日本全体では3位(8.8%)である老衰が、長崎市では6位(欄外:4.6%)と非常に低く、健康的に長生きできるようにすることは長崎市にとって大きな課題と言えます。
日本では、厚生労働省の指針に基づき、自治体主導で実施されている「5大がん検診」と呼ばれるがん検診があり、全国各自治体とも受診率の向上を目指しています。5大がん検診は、胃がん、子宮がん(子宮頸がん)、肺がん、乳がん、大腸がんの5つの検診を指します。
5大がん検診は、加入している健康保険の種類に関係なく住民票のある自治体で受診することができます。検診の種類によって対象年齢や頻度は異なりますが、受診費の一部もしくは全額が公費で負担されます。ただし、企業に勤めている方などは、企業による健康診断にがん検診が含まれていることが多いため、自治体主導のがん検診受診者は国民健康保険加入者や後期高齢者医療保険加入者を含む、「勤務先などでの受診機会のない人」が中心です。
長崎市が実施しているがん検診の種類と費用は下記の通りです。太字は、長崎市独自の取り組みです。
種類 | 検査項目 | 対象者 | 受診間隔 | 費用 |
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胃がん | 胃カメラまたはバリウム | 40歳以上 | 年1回 | ●胃カメラ個別:2,000円●バリウム集団:500円個別:2,000円 |
子宮がん | 子宮頸部、子宮体部細胞診※子宮体部細胞診は医師の判断で実施 | 20歳以上女性 | 2年に1回 | ●子宮頸部集団:400円個別:1,000円●子宮頸部+体部個別:1,700円 |
肺がん | 胸部X線検査、喀痰検査※喀痰検査は医師の判断で実施 | 40歳以上 | 年1回 | ●胸部X線集団:無料個別:400円●喀痰集団:300円個別:500円※65歳以上はいずれも無料 |
乳がん | 視触診、乳腺エコーまたはマンモグラフィ※マンモグラフィは40歳代2方向、50歳以上1方向 | 30歳以上女性※30~39歳はエコー、40歳以上はマンモグラフィ | ・エコー年1回・マンモグラフィ2年に1回 | ●エコー集団:900円個別:1,400円●マンモグラフィ集団:1,500円(50歳以上800円)個別:2,000円(50歳以上1,600円) |
大腸がん | 便潜血検査 | 40歳以上 | 年1回 | 集団:300円個別:600円 |
前立腺がん | 血液検査 | 50歳以上男性 | 年1回 | 無料 |
長崎市のがん検診は、基本的には厚生労働省の指針に沿っています。乳がん検診は指針よりも10歳若い30歳から受診でき、さらに指針にはない前立腺がん検診を実施しているのが特長です。
長崎市のがん検診の無料クーポンは下記の通りです。
種類 | 対象者※年齢は当該年度4月1日時点で判定 | 無料になる検査項目 |
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子宮頸がん | 20歳の女性 | 問診、視診、内診、子宮頸部の細胞診 |
乳がん | 40歳の女性 | 問診、視触診、マンモグラフィ |
無料クーポン券配布対象者が、クーポン券が届く前に「長崎市の検診」を受診した場合、医療機関へ支払った自己負担金が返金されます。自己負担金返金の対象は、「長崎市の検診」のみで、勤務先での検診や、健康保険の適用を受けた検診、独自に受診した検診などは対象外です。
また、次の方は無料でがん検診を受診することができます。 ・高齢者の医療の確保に関する法律による後期高齢者医療被保険者 ・医療保険各法による高齢受給者 ・生活保護法による被保護世帯の方 ・中国残留邦人等支援法に基づく特定中国残留邦人の方など ・市民税非課税世帯の方
下記は、長崎市が実施した2015年度から2019年度の各がん検診の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
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2015年度 | 1.0% | 44.1% | 11.3% | 28.4% | 12.3% |
2016年度 | - | 17.4% | 4.2% | 11.4% | 2.9% |
2017年度 | - | - | 4.6% | - | 3.1% |
2018年度 | 5.5% | 16.3% | 4.4% | 9.6% | 3.2% |
2019年度 | 5.4% | 16.4% | 4.4% | 9.7% | 3.1% |
下記は、自治体主導のがん検診における2015年度から2019年度の日本全体の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
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2015年度 | 6.3% | 23.3% | 11.2% | 20.0% | 13.8% |
2016年度 | 8.6% | 16.4% | 7.7% | 18.2% | 8.8% |
2017年度 | 8.4% | 16.3% | 7.4% | 17.4% | 8.4% |
2018年度 | 8.1% | 16.0% | 7.1% | 17.2% | 8.1% |
2019年度 | 7.8% | 15.7% | 6.8% | 17.0% | 7.7% |
長崎市のがん検診受診率は、日本全体を下回っている検診がほとんどです。子宮頸がん検診のみ、2017年度以外のすべての年で日本全体を上回っていますが、他の検診同様に年々低下傾向にあります。がん検診の受診率の低下は日本全体においても同様の傾向です。
2016年度から一部の受診率が顕著に低下している要因としては、地域保健・健康増進事業報告における受診率の算定法の対象者が変更されたことが考えられます。また、過去に国のがん検診推進事業として、大腸がん検診、乳がん検診では40~60歳の間で5歳おき、子宮頸がん検診では20~40歳の間で5歳おきに無料クーポンが配布されていました。しかし、2016年から大腸がん検診は事業の対象外になり、2017年から子宮頸がん検診と乳がん検診の無料クーポンは検診開始年齢(子宮頸がん検診20歳、乳がん検診40歳)のみになりました。これら無料クーポン対象外の影響が受診率低下につながっていると考えられています。このため、自治体によっては独自の無料クーポンを配布したり、キャンペーンを実施したりして、受診率向上に努めています。
・夕方からのがん検診実施 仕事などを理由に、日中にがん検診を受診することが難しい方に向けて、特定日の17~19時にがん検診を実施。事前予約制。
・胃がんリスク検診の実施 40・45・50・55・60歳の市民を対象に、血液検査による胃がんリスク検診を実施。ピロリ菌感染の有無と胃粘膜の萎縮度を調べ、胃がんになりやすいか否かを判定する。自己負担額は1,000円。
・肝炎ウイルス検診の実施 長崎市内に住所を有する20歳以上で、過去に肝炎ウイルス検査を受けたことがない人を対象に、無料で血液検査(B型・C型)を実施。肝炎ウイルスの感染による慢性肝炎や肝硬変は、肝臓がんの主要な原因となっている。ウイルスに感染していても数年は無症状のため、肝炎ウイルス検診は、肝臓がんの予防につながる。
長崎市では、30歳以上75歳未満で長崎市国民健康保険に加入する市民を対象に、人間ドック・脳ドックの費用の一部が助成されます。助成内容は下記の通りです。
【助成対象者】 長崎市在住の長崎市国民健康保険被保険者(30歳以上75歳未満)
【助成額】 30~39歳:17,000円 40歳以上:17,000円+特定健診分 ※医療機関で選択した1つの検診コースのみへの助成 ※コースの費用と助成額の差額が自己負担額となる
助成対象となるには、いくつかの条件があります。 ・事前に長崎市国民健康保険課へ申し込み、助成決定通知書の送付を受けていること ・40歳以上は、同年度4月1日以降に特定健診を受診していないこと(人間ドック受診と同日に特定健診も実施) ・前年度までの国民健康保険税を滞納している世帯に属していないこと
また、年度ごとに助成定員があるため、希望者全員が助成を受けられるとは限りません。募集時期や詳細は長崎市サイトで確認してください。
長崎市は、「第2次健康長崎市民21」後期計画で健康寿命の延伸を目標に掲げています。また「毎日プラス1皿野菜を増やそう」「毎日プラス10分からだを動かそう」「年1回健診、がん検診を受けよう」の3項目を重点目標に掲げ、さまざまな取り組みを行っています。
・お遊び教室・育児学級・幼児食教室での生活習慣病予防ミニ講話 子育て世代を対象にした生活習慣病予防のための取り組み。市内で行われているお遊び教室や育児学級、幼児食教室などで生活習慣病予防をテーマとしたミニ講話を実施し、参加者に野菜を使った料理レシピ集を配布するなどしている。
・全62コースのウォーキングマップ作成 市内で全62のウォーキングコースをマップ化し、長崎市サイトで公開している。マップには所要時間や消費カロリー、コース中の展望ポイント、トイレの場所などが記されている。ロードウォークサポーターとともに同コースを歩く「お手軽ウォーキング」も定期的に実施されており、20歳以上の市民であれば誰でも参加できる。
・慢性腎臓病に対する取り組み 食べ過ぎや食塩のとり過ぎ、運動不足、飲酒、ストレスなどの生活習慣が発症に大きく関係し、脳卒中や心筋梗塞などの発症リスクを高めるとされる慢性腎臓病(CKD)対策として、特定健診で腎機能の低下が指摘された人を対象とした予防講座や、40歳未満等で尿検査の機会のない希望者へ腎機能の状態を簡単に確認できる尿検査キット配布を行っている。また健診や病院受診における血液検査や尿検査の結果に応じて、市内および周辺の協力医療機関が管理栄養士に訪問保健指導を依頼したり、腎臓の専門医と連携して治療にあたることのできる体制を整備したりしている。
※本記事は2021年9月時点の情報を元に作成しています。