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前橋市は群馬県の県庁所在地です。日本百名山のひとつ赤城山の麓に位置し、2004年に大胡町・宮城村・粕川村と合併、2009年には県内初の中核市(地方自治法に基づき政令によって指定される人口20万人以上の市)へ移行するとともに、富士見村と合併して発展してきました。物価の安さが全国1位、がん検診受診率が全国1位といった面も持ちあわせています。
前橋市の2021年7月現在の人口は約33.4万人(住民基本台帳による)です。国勢調査によれば、前橋市の人口は2000年をピークに減少に転じています。なお、日本全体のピークは2008年、群馬県全体のピークは2003年です(いずれも国勢調査をもとにした推計人口)。国立社会保障・人口問題研究所によれば、前橋市の人口は現状のままでは2040年には約28.9万人に減少すると推計されています。
2021年6月現在における65歳以上の高齢者人口は約9.9万人で、高齢化率は29.6%です。2020年10月の日本全体の高齢化率は28.8%であることから、前橋市の高齢化率は全国よりも高いと言えます。多くの地方自治体同様、人口が減少しているのに対して、高齢者の人口は増加しています。
健康寿命とは、2000年に世界保健機関(WHO)が提唱した指標で、平均寿命から寝たきりや認知症など介護状態の期間を差し引いた期間を指します。日常生活に制限のない、自立した状態で過ごせる期間と言えます。
前橋市では、国が定める健康寿命の指標を参考に、介護保険要介護認定に基づき算出した「まえばし健康年齢」という独自の指標を用いています。
下記は、まえばし健康年齢の推移を示したものです。
2010年 | 2016年 | 2017年 | |
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男性 | 78.91歳 | 79.91歳 | 79.52歳 |
女性 | 83.68歳 | 85.13歳 | 84.78歳 |
2017年の「まえばし健康年齢」は、男性79.52歳、女性84.78歳です。2010年と2016年の健康年齢を比べると、男性が1.00年、女性が1.45年増加しており、健康年齢の延伸がみられます。しかし2016年と2017年の健康年齢の比較では、男性が0.39年、女性が0.35年減少しており、男女ともに悪化しています。前橋市では、これらの結果を評価しながら、「健康まえばし21(第2次計画)後期計画」に基づき、健康寿命の延伸のためのさまざまな取り組みを行っています。
1981年以降、日本人の死因の第1位はがんです。以降、生活習慣病を主因とする疾患が上位を占めています。生活習慣病とは、生活習慣(食、運動、喫煙、飲酒等)が影響する一部のがんや心臓病(心疾患)、脳卒中(脳血管疾患)、糖尿病などを指します。人口動態調査によると、前橋市と日本全体の死因とその割合は下記のようになっています。
1位 | 2位 | 3位 | 4位 | 5位 | |
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前橋市※2019年 | 悪性新生物(がん)25.7% | 心疾患16.0% | 脳血管疾患8.2% | 老衰7.3% | 肺炎6.4% |
日本全体※2019年 | 悪性新生物(がん)27.3% | 心疾患15.0% | 老衰8.8% | 脳血管疾患7.7% | 肺炎6.9% |
前橋市の死因順位は、日本全体と比べて、3位の脳血管疾患と4位の老衰の順位が逆転しています。ポイント数においては、2位の心疾患が1.0ポイント、3位の脳血管疾患が0.5ポイント日本全体を上回っています。一方で、1位のがんは日本全体を1.6ポイント下回っており、これは前橋市のがん検診の受診率の高さが要因のひとつであると考えられます。
日本では、厚生労働省の指針に基づき、自治体主導で実施されている「5大がん検診」と呼ばれるがん検診があり、全国各自治体とも受診率の向上を目指しています。5大がん検診は、胃がん、子宮がん(子宮頸がん)、肺がん、乳がん、大腸がんの5つの検診を指します。
5大がん検診は、加入している健康保険の種類に関係なく住民票のある自治体で受診することができます。検診の種類によって対象年齢や頻度は異なりますが、受診費の一部もしくは全額が公費で負担されます。ただし、企業に勤めている方などは、企業による健康診断にがん検診が含まれていることが多いため、自治体主導のがん検診受診者は国民健康保険加入者や後期高齢者医療保険加入者を含む、「勤務先などでの受診機会のない人」が中心です。
前橋市が実施しているがん検診の種類と費用は下記の通りです。太字は、前橋市独自の取り組みです。
種類 | 検査項目 | 対象者 | 受診間隔 | 費用 |
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胃がん | 問診、胃部X線検査(バリウム)または胃内視鏡検査(胃カメラ) | 40歳以上 | 年1回 | 無料 |
子宮頸がん | 問診、内診、子宮頸部細胞診 | 20歳以上女性 | 年1回 | 無料 |
肺がん | 問診、胸部X線検査※必要な方には喀痰検査も実施 | 40歳以上 | 年1回 | 無料 |
乳がん | 問診、視触診、マンモグラフィ、甲状腺検診 | 40歳以上女性 | 年1回 | 無料 |
大腸がん | 問診、便潜血検査 | 40歳以上 | 年1回 | 無料 |
前立腺がん | 問診、血液検査(PSA価) | 50歳以上男性 | 年1回 | 無料 |
前橋市のがん検診は、基本的には厚生労働省の指針に沿っていますが、以下のような前橋市独自の取り組みもみられます。とりわけ、上記にあるすべてのがん検診の自己負担額が無料という特徴から、前橋市のがん対策への手厚さがうかがえます。
・すべてのがん検診の自己負担額が無料 ・胃がん検診は指針よりも10歳若い40歳から実施 ・胃がん検診、子宮頸がん検診および乳がん検診は、国の指針より多い年1回実施 ・指針にはない甲状腺検診および前立腺がん検診を運用
前橋市の市民は上記のがん検診を自己負担額無料で受診できるため、無料クーポンの配布はありません。
ただし、2022年以降は、各がん検診ごとに500円の費用負担が必要となり、胃がん・子宮頸がん・乳がん検診は2年に1回の実施へと変更されます。無料で受診できるのは下記の対象者に限ります。
・40歳以上の生活保護受給者の方 ・中国残留邦人等支援法による支援給付者の方
下記は、前橋市が実施した2015年度から2019年度の各がん検診の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
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2015年度 | 3.6% | 25.4% | 17.9% | 27.7% | 17.0% |
2016年度 | 18.6% | 26.1% | 17.4% | 28.9% | 16.4% |
2017年度 | 22.7% | 25.6% | 16.3% | 28.4% | 15.6% |
2018年度 | 22.4% | 25.2% | 15.9% | 27.7% | 15.4% |
2019年度 | 22.3% | 25.5% | 15.8% | 28.0% | 15.2% |
下記は、自治体主導のがん検診における2015年度から2019年度の日本全体の受診率の推移です。
胃がん | 子宮頸がん | 肺がん | 乳がん | 大腸がん | |
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2015年度 | 6.3% | 23.3% | 11.2% | 20.0% | 13.8% |
2016年度 | 8.6% | 16.4% | 7.7% | 18.2% | 8.8% |
2017年度 | 8.4% | 16.3% | 7.4% | 17.4% | 8.4% |
2018年度 | 8.1% | 16.0% | 7.1% | 17.2% | 8.1% |
2019年度 | 7.8% | 15.7% | 6.8% | 17.0% | 7.7% |
前橋市のがん検診受診率は、すべての部位において日本全体を大きく上回っています。受診率の高さは、全国の政令指定都市および中核市のなかで3年連続第1位(2016年~2018年度)であったと報告されています。前橋市では2012年からがん検診を無料化しており、このような取り組みが受診率の向上につながったと考えられます。
他方で日本全体の受診率は年々低下傾向にあります。日本全体のデータにおいて、2016年度から一部の受診率が顕著に低下している要因としては、地域保健・健康増進事業報告における受診率の算定法の対象者が変更されたことが考えられます。また、過去に国のがん検診推進事業として、大腸がん検診、乳がん検診では40~60歳の間で5歳おき、子宮頸がん検診では20~40歳の間で5歳おきに無料クーポンが配布されていました。しかし、2016年から大腸がん検診は事業の対象外になり、2017年から子宮頸がん検診と乳がん検診の無料クーポンは検診開始年齢(子宮頸がん検診20歳、乳がん検診40歳)のみになりました。これら無料クーポン対象外の影響が受診率低下につながっていると考えられています。
前橋市では2012年よりがん検診を無料化していたことも奏効してか、高い受診率を推移してきました。しかしながら、2022年には有料化が予定されています。以降、受診率にどのように推移していくか注目していきたいところです。
がん検診の受診率向上やがん予防に向けて、前橋市では下記のような取り組みを行っています。がん検診受診率向上のための受診シールや再勧奨はがきの送付、禁煙支援を行う禁煙チャレンジ塾があります。
・肝炎ウイルス検診の無料実施 肝硬変や肝臓がんの発症リスクとなる肝炎ウイルスの早期発見と早期治療を目的とし、肝炎ウイルス検診を実施。対象は40歳の市民、または41歳以上で過去に前橋市の検診を受けていない市民。費用は無料。
・受診シールと再勧奨はがきの送付 がん検診の対象者全員に受診シールを個別で送付。さらに未受診者には、再勧奨はがきも送付することで、がん検診の受診率向上を図っている。
・禁煙チャレンジ塾 禁煙開始を決意した方を対象とした保健師による禁煙サポートサービス。初回は面接と尿中ニコチン代謝物濃度の測定を行い、今後の禁煙方法の選定や禁煙開始日の設定が行われる。禁煙期間中は、電話での継続した禁煙支援を実施している。
前橋市では、前橋市在住の国民健康保険被保険者および後期高齢者医療被保険者を対象に、人間ドックの各コースにおいて費用の一部が助成されます。助成内容は下記の通りです。
【対象者】 ・当該年度で30歳以上となる前橋市国民健康保険・後期高齢者医療の加入者 ・国民健康保険税の未納がない世帯、後期高齢者医療保険料の未納がない方
【助成額】 各コース一律20,000円
コース名 | 通常費用(円) | 自己負担額(円) |
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一日ドック | 33,000 | 13,000 |
通院二日ドック | 60,500 | 40,500 |
宿泊二日ドック | 68,200 | 48,200 |
特定健診(後期高齢者健診)+脳ドック | 41,800 | 21,800 |
受診できる施設は、市内の契約医療機関のみです。また下記に該当する方は、助成の対象外となるため注意が必要です。
・助成申請が遅れて、人間ドック受診日までに助成決定を受けられなかった方 ・当該年度に受診シールを使って特定健診や後期高齢者健診を受診している方
「機能評価認定施設」とは、日本人間ドック学会が定めている「人間ドック健診施設機能評価」という評価基準をクリアした医療施設です。申請のあった人間ドック施設に対して日本人間ドック学会が受診者目線で審査している取り組みです。
審査項目には、「運営方針、組織の管理体制が確立しているか」や「検査の業務マニュアルは作成されているか」、「感染対策などの危機管理は徹底されているか」といった施設側の安全面に関する基準から、「受診者が快適に受診できるように配慮しているか」や「受診者のプライバシーに配慮しているか」といった受診者側に関する基準まで、多角的な評価基準があります。また、評価基準は5年ごとに改定され、更新審査が行われます。
全国390以上の施設が認定されており、このうち前橋市内の機能評価認定施設は2021年12月現在2施設あります。
マーソでは、機能評価認定施設から人間ドックのプランを探すことができます。くわしくはこちらをご覧ください。
前橋市では、健康寿命の延伸に向けてさまざまな取り組みが行われています。運動教室の開催や、2~3ヶ月間行うセミパーソナル・サポートなど、健康づくりのための運動を支援する事業が充実しています。
・健康チャレンジ教室の開催 気軽に楽しく運動を始めるための月1回の運動教室。近くの公民館に集まって、健康運動指導士と一緒に簡単な体操やストレッチを行う。
・みんなで家トレ!セミパーソナル・サポート 運動の習慣化を目指すためのセミパーソナルトレーニング。体力測定の結果に基づいて、健康運動指導士が運動プログラムを作成してくれる。その後は自宅でプログラムに取り組み、2~3ヶ月後に再度体力測定して成果を確認する。
・ぐんま健康ポイント制度 若い世代や働き盛り世代の健康づくりをサポートすることを目的とした、群馬県のポイント事業「G-WALK+(ジーウォークプラス)」。スマートフォンで計測された歩数や健康記録などの入力に応じて、ポイントが付与される。貯まったポイントは抽選で特典と交換できる。
※本記事は2021年12月時点の情報を元に作成しています。